受託か自社か?受託エンジニアのモヤモヤを解消するキャリア選択の羅針盤

2026-04-14 11:00

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エンジニアとして数年の経験を積み、現場に慣れてくると「このまま今の環境にいていいのか」という漠然とした不安が湧いてくることも少なくありません。

とくに、受託開発やSIerに身を置いていると、特定の技術スタックに偏ってしまうことへの焦りから、「自社開発に行けば解決するのではないか」という期待を抱くこともあるでしょう。

今回は、受託企業からキャリアを踏み出した二人の先輩をお招きしたイベントの模様から、これからのキャリアに悩むエンジニアが「その先」へ進むための具体的なヒントを探ります。

株式会社レンガ
取締役CTO 兼 マンションノート事業責任者
小原 和磨
2004年にシステム開発会社へ入社し、エンジニアとしてのキャリアをスタート。2009年に事業会社のエニグモへ転職し、2012年に株式会社レンガを共同創業。現在は「マンションノート」の事業責任者も務める。

株式会社サーバーワークス
アプリケーションサービス部 ディベロップメントサービス2課 課長
松尾 優
文系学部を卒業後、2009年に大分県の地元SIerに入社し、約13年間、金融機関などの受託開発やECサイトの運用保守を担当。2022年にサーバーワークスへ転職し、現在はプレイングマネージャーを務める。

受託企業出身者が抱える「モヤモヤ」の正体

現場で3〜5年ほど経験を積むと、「このまま同じ技術スタックを繰り返して、市場価値は維持できるのか」という不安が生じがちです。

受託開発の現場では、クライアントと合意した「正解」を納期厳守で提供することが最優先され、物理サーバーの調達リードタイムといったインフラ制約に歯がゆさを感じることも少なくありません。

こうした「環境的な制約」や「技術的な停滞感」への懸念こそが、自社開発への転向やよりモダンな開発環境を志向する大きな動機となっています。

今回登壇した小原さんや松尾さんも、同じような悩みを抱えていました。

受託開発からCTOまでのキャリア(株式会社レンガ 小原 和磨)

受託開発からキャリアをスタートし、今や自社サービスを運営する企業の取締役CTOを務める小原さん。20年以上にわたるその道のりは、「良いコード」への純粋な探求心から、システム全体、そして「事業価値」へと、少しずつ視座が広がっていったプロセスそのものでした。

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「良いコード」の定義に悩み抜いた受託開発時代

2004年に受託開発会社へ入社した小原さん。その頃の原動力は、「とにかく良いコードを書きたい」という、純粋な技術への探求心でした。しかし、がむしゃらにプログラミングにのめり込む中で、「コード単体の美しさを追求するだけでは、何が本当に『良い状態』なのか判断しきれない」という壁にぶつかります。

キャリア中盤、設計やアーキテクチャの試行錯誤へとフェーズが変わっても、その悩みは「良いシステムを作りたい」という形に姿を変えて続きました。現場で繰り返される「これはもう『決め』の問題だよね」といった、どこか妥協的な意思決定に対し、技術的な正解だけでは導き出せない「納得できる判断の軸」を、日々探し続けることになります。

ウォーターフォールの限界と「ユーザー」への渇望

リーダーとして要件定義に携わるようになると、小原さんの関心は「システムでいかに大きな価値を提供するか」へとシフトします。

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当時主流だったウォーターフォール開発では、要件定義からリリースまでに半年から1年かかるのが当たり前でした。

転機となったのは、自身が手掛けたシステムが、現場で想定とは全く違う使い方で「なんとか」運用されている実態を目にしたことです。この経験から、「もっと早くフィードバックをもらって、本質的な改善をどんどん回したい」という強い思いが生まれ、自社事業を展開する企業への転職を決意します。

事業会社での観察を経て、エンジニアリングを「経営」に転用する

自社プロダクトの運営に身を置いた小原さんは、エンジニア以外の職種(ディレクター、営業、デザイナー)がどんなロジックで判断を下しているのかを徹底的に観察しました。そこで確信したのが、「事業もプロダクトも組織も、要素の特性を理解し、目的のために組み合わせるという点では、エンジニアリングの考え方をそのまま応用できる」ということです。

事業やプロダクトの領域は情報が少ない中で判断が必要になる難しさがありますが、だからこそ「どういう世界を作りたいか」という軸を持つことが重要になります。受託開発で培った「多様な技術を扱い、確実にリリースまで持っていく力」は、不確実性の高い事業開発を論理的に支える、非常に強力なバックボーンとなりました。

文系地方エンジニアのキャリア変遷(株式会社サーバーワークス 松尾 優)

松尾さんが13年間という長い時間を過ごしたSIerから、どうやってモダンな環境へ飛び込んだのか。その道のりを語っていただきました。

文系出身の不安を言語化能力という武器に変えたSIer時代

「エンジニアといえば理系」というイメージが強かった2009年、文系学部出身だった松尾さんは、地元のSIerへ入社しました。

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13年に及ぶ下積み時代、特に金融や検査機関の受託開発で徹底的に鍛えられたのは、「自分の意図を正確に文章にするスキル」でした。

松尾さんはプログラミングを「論理的な文章(言葉)」と捉え直し、仕様書やコードで自分の考えを表現する力を磨き上げます。この経験こそが、今のキャリアを支える揺るぎない土台となっています。

物理サーバーのリードタイムへの歯がゆさとAWSとの出会い

長年、オンプレミスの保守を担当していた松尾さんを突き動かしたのは、物理インフラ特有の制約でした。サーバーの調達を待つ時間や物理的な制限に対し、「クラウドなら、もっと早く、すぐ価値を出せるのに」というモヤモヤが募っていったのです。

そんな中、2019年にユーザー企業とのハッカソン運営を通じてAWSに出会ったことが、松尾さんの人生を大きく変えます。「インフラ調達を待たずに、マネージドサービスですぐに価値を出せるモダンな環境へ行きたい」という強い思いが、転職を決意する決定打となりました。

想定外の沼にハマる楽しさ——Amazon Connectが教えてくれたハックする喜び

入社当初は「Lambdaを使ってゴリゴリとコードを書くのだろう」と思っていた松尾さんですが、実際に出会ったのは、クラウド型コンタクトセンター「Amazon Connect」という予想外の領域でした。

日本の電話番号の仕組みや、独特な挙動を解き明かしていくプロセスは、Web開発の常識が通用しないからこそ「どう組み合わせるか、どう工夫するか」という、まさに「ハックする」楽しさに満ちていたそうです。

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特定の技術に固執せず、未知のドメイン知識もすぐにキャッチアップする。このプロフェッショナルとしての知的好奇心こそが、松尾さんの人柄を表しています。

「年次だから」ではなく、自分で選んだマネージャーというキャリア

入社翌年、松尾さんはあえてマネージャーの道を選びました。それは、よくある「年次が上がったから仕方なく」という消極的な理由ではなく、「自分の影響範囲を広げたい」という、純粋に前向きな意思によるものでした。

現在は、大分からフルリモートでチームを牽引し、技術とマネジメントの両方をこなすプレイングマネージャーとして、自分らしいキャリアを自らの手で切り拓いています。

二人の話から見える、受託開発で身につく「一生モノの武器」
お二人の話を聞くと、受託開発時代に経験したことが、今の活躍に確実につながっていることが分かります。

現場の現実を知っているからこその「価値へのこだわり」

小原さんが「運用でカバー」という現場の厳しい状況を見て感じた「フィードバックがほしい」という気持ちは、自社開発で最も大切にすべきマインドセットです。

受託開発で「作ったものがどう使われるか」に頭を悩ませた経験があるからこそ、自社開発に移ったときに、単に機能を実装するだけでなく「本当にユーザーの困りごとを解決できているか」という本質的な問いに立ち返ることができます。

AI時代に残る「言語化能力」と「背景と実装を繋ぎ合わせる力」

手を動かす作業がAIに代替されていく時代において、エンジニアにはどのような役割が残るのでしょうか。
小原さんは、「このプロジェクトは何のためにやっているのか、この開発には何の価値があるのかといった『背景』と、実際の『実装』がきちんと繋がっているかを確認すること」こそが、人間のエンジニアに残される本質的な役割だと語ります。

松尾さんの「意図を言語化する力」と併せて、単なる実装力だけでなく、背景にある目的を正しく理解し、AIの力も借りながら価値あるシステムへと結びつける力が、今後のエンジニアにはより一層求められるでしょう。

どんな環境でも生き抜ける「実装力」と「キャッチアップ力」

受託現場での「大きめの開発で鍛えられた筋肉」や、松尾さんがAmazon Connectで見せた「未知のドメインをハックする力」は、エンジニアとしての基礎体力です。
受託開発は技術的な横の広がりが得やすく、多様な技術スタックを経験できるため、そこで培った「確実にシステムを作り上げる力」は、正解のない自社開発という海を航海するための強力な支えとなります。

よりよいキャリア選択の一歩へ

お二人のストーリーから見えてきたのは、受託開発での「良いコードへのこだわり」や「顧客の要望を整理する地道な作業」が、決して無駄ではないということです 。手法としてのエンジニアリングから、価値を提供するためのエンジニアリングへ。視点を少し変えるだけで、今のあなたの経験は「最強の武器」に変わります。

受託開発での経験が、実はどんな環境でも通用する「武器」に変わる瞬間について、お二人のストーリーから、ヒントが見えてきたのではないでしょうか。

小原さん・松尾さんが発表された内容は、以下のリンクから視聴できます。
受託開発キャリアのその先【オンライン・ランチ開催】

後半の記事では、AI時代の生存戦略やマネジメント、そして「受託か自社か」という選択について、イベント参加者のみなさんの悩みに二人の先輩が本音で答えます。

【AI時代に受託開発の需要は減る?自社開発への転職ギャップは?先輩が語るキャリア構築のリアル】

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