ソーシャル経済メディア「NewsPicks」や経済情報プラットフォーム「Speeda」の運営会社として知られるユーザベース。「Speeda」をはじめとする情報プラットフォームの開発を行うプロダクトチームは、2016年から転職ドラフトを活用しており、現在、転職ドラフト経由で入社した多くのエンジニアが活躍しています。
今回は、2024年5月に転職ドラフトスカウト経由で入社した吉田さんにインタビュー。前職での経験を経て新たなキャリアに挑んだ背景や転職活動の経緯、ユーザベースでの仕事のやりがいなどを伺いました。
株式会社ユーザベース
Speeda Business Product Development Domain 吉田 涼一朗
DX支援会社で主にWebアプリ開発に従事。医療関連、エネルギー関連などさまざまな開発プロジェクトに携わる。2024年5月、ユーザベースに入社。
ーー前職ではどんなお仕事をしていたのでしょうか。
吉田:DX支援を幅広く手がける会社で、主にWebアプリ開発などに取り組んでいました。クライアント先の開発チームの一員として動く形が多かったのですが、場合によっては成果物ベースで「こういうプログラムをつくってほしい」とリクエストを受け、短期集中で実装することもありました。業界もさまざまなクライアント先の仕事を経験でき、教育制度も充実していたなかで、今後エンジニアとしてどんな学びを究めていきたいのか、じっくり考えることができたと思っています。
ーー転職を考えるようになった背景を教えてください。
吉田:僕は学生時代からプログラミングを専攻してこの道に入ったのですが、実際に働き始めてからは開発の進め方に対する関心が強くなりました。アジャイル開発のフレームワークについて自分なりに調べ、実務の場でもスクラム開発を採り入れたやり方を試させてもらいました。
ただ、本で紹介されている手法を現場に当てはめれば理想通り行くかというと、当然そんなことはなく……。「スクラムと言いつつ、実態はウォーターフォールチックになってきちゃったな」と悩むこともありました。スクラム開発に関しては周りに経験者も少なかったなか、「いまの自分にとっては、社外に出て実際にワークしている現場を経験した方がよいのかも」と思うようになったんです。
ーー転職活動はどんなふうに進めたのでしょうか。転職ドラフトとの出会いについてもぜひお話しください。
吉田:まず、いままでの実績と自分なりに考えてきたことを文章にまとめるところから始めました。転職活動ではもちろん、技術イベントのスピーカーに応募する際もレジュメは必ず提出を求められるので、つくっておけば何かと役立ちます。スカウトサービスに登録し、何度か面談もしてみました。
転職ドラフトは学生時代の同級生から教えてもらいました。本人が実際に転職ドラフトスカウト経由で転職していて、「企業から年収オファー付きの指名がもらえる面白いサービスだから、試してみたら」と。言われた通りお試し感覚で参加してみたところ、最初に指名文を送ってくれたのがユーザベースだったんです。
ーー強いご縁を感じますね。指名を受け取って、どんな印象を持ちましたか。
吉田:開発チームの紹介部分を読んでいくうちに、「こんな会社が本当にあるんだ」とびっくりしました。アジャイル開発を実践している企業のうち、たぶん9割方はスクラム開発を採り入れていると思うのですが、エクストリームプログラミングという手法もあることは知っていて、興味を持っていました。スクラムマスター的な存在がいるわけでもなく、各自が自律的に動く形は理想的に思えた一方で、「本当にワークするのかな?」という気持ちもありました。
ユーザベースは、そんなエクストリームプログラミングを本格的に実践している数少ない会社だったんです。指名文では、僕のレジュメのなかでもとくにスクラム開発を率先して導入した積極性を評価してくださっていて、その点もうれしかったです。
僕は実はNewsPicksは知っていたものの、ユーザベースという会社は認識していませんでした。指名をいただいてから、会社のサイトやメディアの記事を読みまくり、話を聞きたい気持ちが高まりました。
ーー次の活躍の場を模索するなかで、吉田さんが大切にしていた軸とは。
吉田:自分が追求していきたいテーマに対して、会社がどれだけ関心を持っているか、ほぼそこだけだった気がします。業界にもこだわりはなく、幅広く話を聞きたいと思っていました。
働き方に関しては、フルリモートは避けたい気持ちがありました。転職前の半年ほど関わっていた案件がほぼフルリモートで、少しリアルなコミュニケーションがあった方が、僕のメンタル的にはいいなと感じていたからです。とはいえ、週2出社だった時期は満員電車がきつく、「フル出社もちょっとな……」と(笑)。ユーザベースではチームで最高のパフォーマンスを上げることを第一義として、チームごとに最適な働き方を選択することとしています。僕の属するチームでは、プロジェクトごとに必要に応じて出社するスタイルで、僕にとってはちょうどいい感じです。
ーー入社の決め手は何だったのでしょう。
吉田:指名をもらった当初から入社を決めるまで、僕のなかではずっとユーザベース一択だったので、大きなドラマはないのですが……。よく覚えているのは、面接中にドメイン駆動設計の活用に関して質問したときのことです。
当時の僕の頭の中には、「世の中で注目されている手法を全部マスターしていけば、最強の開発チームになれるのでは」という足し算の発想があったのだと思います。でも、そのとき面接担当者から聞いた話では、実際にそれぞれのプロダクトを運用するうえで優先順位の高い領域とそうではない領域を切り分け、どんな原則をどこまで適用するか、合理的に判断している様子が伝わってきました。その姿勢にプロフェッショナリズムを感じたんですよね。「こういう判断を積み重ねてきたチームなら、きっと密度の濃い学びができるだろう」とリアルにイメージできました。
ーー入社前に持っていたイメージと比べて、入社後にギャップを感じた点はありませんでしたか。
吉田:正直、ギャップというギャップはありませんでした。選考プロセスで聞きたいことは聞けていましたし、僕自身がユーザベースのカルチャーに馴染みやすいタイプだったのかもしれません。
たとえば、ユーザベースで特徴的なフルタイムのペアプログラミングも、僕は気に入っています。コミュニケーションの楽しさをずっと感じていられるので、あまり「作業をこなしている」感覚がないんです。
僕がユーザベースに興味を持ったキーワード、エクストリームプログラミングに関しても、実際に経験してみて、納得感が増しています。プロダクトをどんな方向で育てていくのか、いつまでにどんな状態に持っていきたいのか、開発者自身で考えられる分、一段高い視点が身に付く仕組みだなと。成果にコミットする意識が高まると、日々のモチベーションも上がる気がします。
ーーユーザベースでこれまでに携わったプロジェクトのなかで、印象的なものを教えてください。
吉田:プロダクトチームでは、Speedaの他にもFORCAS(現Speeda顧客分析/データハブ)やINITIAL(現Speedaスタートアップ情報リサーチ)など複数のサービスを担当しています。僕が入社後最初に携わったのは、社内でこれらのサービスのユーザーサポートを手がける部門がよりスムーズに業務を進められるようなシステムの開発です。
前職では、僕が関わるのは基本的にサービスのリリースまでだったので、直接ユーザーの声を聞く機会はなかったんです。その点、このプロジェクトではユーザーも同じ社員なので、毎週ベースで開発中の機能を試してもらい、使い勝手や改善点を相談できました。自分の開発するサービスがどんなふうに使われるのか、直接聞けて学びになった点がたくさんありますし、ユーザーが目の前で喜んでくれるのは、やっぱりやりがいがありますね。
「チームシャッフル」(変化に強いチームづくりのため、定期的にメンバーの一部を入れ替えるユーザベースの仕組み)で僕自身は別のチームに移ったものの、プロジェクトはいまも続いており、発足時に目指した姿へと着実に近づいています。ユーザー部門と開発者が一緒に理想のシステムを追求する関係性をつくれたことは、今後につながる経験になりました。
ーー職場としてのユーザベースについて、吉田さんがとくに「らしさ」を感じるのはどんな点ですか。
吉田:ユーザベースの開発部門はとてもフラットで、CTO以外には固定のリーダーやマネージャーが存在しません。その分、一人ひとりが「どうしたら組織がよりよくなるか」を考え、自分なりの貢献を追求する姿勢が根づいています。社内で「自己組織化」と呼ばれているこの考え方が僕はとても好きで、いつも成長意欲を刺激されています。
開発業務以外の面でも、メンバー採用、導入ツール検討など、たくさんのチーム活動が有志のメンバーで進められていて、全体の半数以上が何らかの活動に参加しています。僕自身は、メンタルヘルスの観点から組織を支える活動に携わってきました。新入社員にユーザベースのメンタルヘルスに対する考え方を伝えたり、各チーム内の関係構築に役立ちそうなアクティビティを提案したり。また、会社として従業員のモチベーションを調査するためのサーベイも定期的に行われているので、その結果を確認し、気になる人に声をかけて話を聞くこともあります。
業務の合間の限られた時間で取り組むには難しいテーマですが、実際に動いてみて見えてくるものがたくさんあります。普段の業務とは違った活動に集中する時間を持つことも、僕にとっていいバランスをもたらしてくれています。
ーーエンジニアとして、いまの吉田さんが一番関心を持っているテーマとは。
吉田:ユーザベースではいま、当社が保有する広範な経済情報の中から、ユーザーが求める情報をよりスピーディに収集できるよう、AIエージェントの開発を進めています。僕もプロジェクトメンバーとしてAI開発に携わるようになり、これまでのソフトウェア開発ではあり得なかった世界を体験しています。AIの挙動には開発者にも予測がつかない部分があって、ときには一気に新しい可能性が開けてきたり。変化の大きい状況が好きな僕としては、ワクワクします。
AIは開発中のサービスの核になっているだけでなく、コーディングのプロセスでも活用しており、いままでにないスピード感で開発が進んでいます。AIのポテンシャルをどう引き出し、ユーザーに届けられるのか、追求しがいのあるテーマに出会えました。
ーー最後に、ご自身の経験を振り返って、エンジニアが転職で成功するために大事なポイントは何だと思われますか。
吉田:僕は転職活動の早い段階で希望通りの会社に出会えたので、活動の進め方をブラッシュアップする機会はあまりなかったのですが……。レジュメの書き方に関して言えば、単に携わったプロジェクトを並べるだけでなく、どんな課題に直面し、どう乗り越えてきたのかをしっかり書くことは意識しました。そのあたりの具体性がないと、レジュメを見る側も僕という人間をイメージしづらいと思ったからです。実際、ユーザベースの採用担当者はバリューとの親和性を見極めるため、レジュメを熟読して指名を送る相手を選んでいるようで、僕の力の入れどころは間違っていなかったと思います。
転職ドラフトに登録したのは好奇心からでしたが、自分が一番関心を持っていた開発推進体制のあり方に関して、ユニークな取り組みを実践している会社とのご縁につながりました。僕のように、追求したいテーマ軸で転職先を探したい人にとって、期待を上回るご縁が得られる可能性を秘めた媒体だと思います。
ーーユーザベースでご経験の幅をどんどん広げられている吉田さん、今後のご活躍も楽しみです。本日はありがとうございました。
(取材・文/中名生 明子)