「転職ドラフトエージェント」は、ITエンジニアに特化した転職エージェントサービス。職種特化型ならではの専門性と現年収非公開で選考を受けられることが特徴です。
2022年にサービスを開始し、企業から年収付きの指名が届く「転職ドラフトスカウト」で培ったノウハウを活かして、エンジニアのキャリア選択のサポートを行っています。
今回は、「転職ドラフトエージェント」で積極採用中の企業の中から、マンションの口コミサイト「マンションノート」を運営するレンガが登場。「PdMを置かず、エンジニアが企画から行う」というユニークな開発体制を取っている理由、レンガだから味わえる開発の面白さなどについて、CTOの小原さんに伺いました。
株式会社レンガ
執行役員 CTO 小原 和磨
2004年にシステム開発会社へ入社し、20代前半でリードエンジニアとして10名のエンジニアを率いる。2009年にエニグモに転職し、主力事業の担当エンジニアとして活躍。2011年にITベンチャーの取締役CTOに就任。レンガではシステム全領域を担当。
ーーまずは会社紹介からお願いします。
小原:レンガは2012年にCEOの藤井、COOの岡﨑とCTOの私で創業した会社です。「人生を助けるサービスをつくる」というミッションを掲げていて、レンガを一つずつ積み上げていくように世の中に価値を積み上げたいという想いで創業しました。その第一弾として「住まい探しを助ける」をテーマにした「マンションノート」というマンションの口コミサイトを運営しています。
「マンションノート」は、物件情報や内見でのチェックでは分からないような、住まい探しに役立つ口コミ情報を提供しています。「良い点」と「気になる点」の両方の観点での口コミ投稿が必須だったり、すべての口コミを掲載前に審査しているなど、信頼性を重視しているのが特徴です。
おかげさまで今年でローンチから13年目を迎え、今では月間100万人以上が利用するサービスに成長しています。
また、レンガのメンバーは現在20名弱いるのですが、7割近くをエンジニアが占めており、残りはデザイナー、カスタマーサポートとCXO3名になります。開発はプロダクトに深くコミットしてくれるメンバーで進めたい思いがあり、100%内製、正社員のみで担っています。
ーー営業だけでなく、マーケティング担当者やPdMもいないのですね。どんな体制で開発を進めているのでしょうか。
小原:エンジニアとデザイナー、カスタマーサポートのメンバーが3チームに分かれ、3カ月単位でチーム目標の達成を目指しています。各チームのテーマは時期によっても変わりますが、今(2025年8月)は「事業数値の改善」、「サービスとしての付加価値追求」、そして「ユーザーの満足度向上」です。
チーム運営では自律性を重視しています。基本的に私が関わるのは各チームの目標設定までで、その目標を達成するためにどんな施策を行うかは、チームに任せています。各チームには、スクラム開発をリードするプロダクトオーナーを置いているものの、チーム内の意思決定も全員の意見を踏まえて決めていく雰囲気ですので、プロダクトオーナーは取りまとめ役といった位置づけです。
ですから、レンガのエンジニアはエンジニアリングだけでなく、最上流からすべてに携わっていて、自分たちで企画し、要件定義を行い、開発し、検証や分析をして、それをまた次の企画に活かしていくという幅広い仕事をしています。新しい機能をつくろうとするとき、最初から完成度の高い要件定義をしようとすると、それだけで時間がかかってしまいがちですが、レンガのやり方では「実際に作ってみて、しっくりこなければ要件定義を手直し」というようなことも速いサイクルで進めることができます。
今のマンションノート開発では、こういった企画や開発を分断しない一体感を大切にしています。その結果として完成度もスピード感も高められるようになっているかと思いますし、何より皆で仕事を楽しめる環境ができているかと思います。
ーーチームの目標達成に向け、具体的にはどんな取り組みをしているのでしょうか
小原:たとえば、事業数値の改善チームでは、ユーザーのサイト上の行動を分析して、ユーザーの動きが想定より鈍いポイントに注目して、そのページやUI/UXや機能の課題を調べるとかですね。他社サイトなども参考にしながら、課題解消につながるアイディアを出し、試験的に実装して、ABテストで効果を検証したりします。
一方、付加価値追求チームの場合は、今のマンションノートにない価値提供の可能性を探っていくので、一般の家探しをしている方々に協力いただいてインタビューするところから始めたりします。
ーーエンジニアやデザイナーが潜在ユーザーへのインタビューまで行うのですね。
小原:もともと誰もインタビュー経験がなかったので、最初は外部の方にご協力いただきながら試験的に導入してみたのですが、今では必要に応じて社内のメンバーが実施するのが普通になっています。
インタビューで自分たちのヒントになる情報を得ようと思えば、入念な準備が必要ですし、こんな機能が欲しいという意見をそのままつくったとしても、実際によい反響が得られるかは分かりません。エンジニアリングとはかなり異なる専門性が求められる領域ですが、こういった分野でも素早く改善を繰り返しつつ、知見を積み上げていくことで、自分たち自身の成長にもつなげています。
ーー3つのチームへのメンバーの配属はどのように決めていますか?
小原:これは毎回悩むところで……。いくつものプランをつくり、メリット・デメリットを比べながら最終決定しています。
ビジネスですから成果が見込める戦力をそろえることはもちろん必要ですし、メンバー同士の相性も重要です。さらには同じチームに長期間居続ける人が出るのもよくないし、得意不得意のバランスも取りたい。メンバー個人の成長を促す観点では、「ちょっと大変だけど頑張ればできそう」みたいなチャレンジができる環境が理想です。
もちろん、場合によっては、本人の思いとは必ずしも一致しない配置にせざるを得ないこともあります。そんなときはオフィシャルな発表の前に、本人と話す機会をつくり、私の考えをできるだけ丁寧に説明しています。
ーーメンバーの育成に対する小原さんのお考えをお聞かせください。
小原:私のスタンスは、育成というより、各自の成長をサポートするという方が近いですね。どんな方向性でキャリアを築きたいのか、どんなレベルを目指したいのかは、本人が自分の意志で決めることで、人から押し付けられても身にならないと考えています。
私は毎月メンバー全員と1on1をして、各自が抱えている課題感、興味を持っていること、挑戦したいことなどを聞かせてもらっています。「挑戦したいこと」の中には、すぐに取り組めそうなものもあれば、少しずつステップアップしなくてはならないものもありますし、事業成長にリンクさせないと業務の中でも実践しづらいので、キャリアと事業成長のすり合わせのための「作戦会議」という感覚です。
ーーCTOがそこまで寄り添ってくれるとは、皆さん心強いでしょうね。
小原:そう思ってくれているといいのですが……。現在の3チームの一つである顧客満足度向上チームが生まれたのも、実はCSメンバーの希望に沿いたいと考えたことが1つのきっかけでした。
「もっとプロダクトの機能改善にも関わりたい」というような意向を前々から聞いていたので、どんな対応ができるか私も悩んだのですが、もともとそういった方向の取り組みはどこかで進めていかなければいけないという考えもありましたし、メンバーが増えていくのに応じたフォーメーションを考えるなかで、「ユーザーを一番深く知っているのはカスタマーサポートなのだから、CS担当者がリードするチームがあってもいいんじゃないか」と思ったのです。顧客満足度向上チームを作り、最初は一人のメンバーとして参加していただき、慣れてきたタイミングでプロダクトオーナーを担当していただくようになりました。
このチームは実際、「確かにそこは使いづらいね」とみんながうなずくような、かゆいところに手が届く課題を取り上げて改善してくれています。目の前の収益にフォーカスしていると、取りこぼしてしまいがちな細かな点も多いので、そうした改善が実は中長期で効いてくると考えています。
エンジニアも、人によっては通常のチーム活動と兼任する形で、生産性改善の活動に携わってもらっており、これも本人の意向を重視してアサインしています。たとえば、通常のチームでは主に機能追加に取り組むことになりますが、長年運用していると変更するのが難しい部分がどうしても出てきてしまったり、組織の変化に合わせて開発プロセス自体の変更も必要になってくるので、そういった部分の改善を進めていただいています。
ーー技術的負債の解消ということでしょうか。
小原:その通りです。技術的負債は解消すればその後の開発スピードが上がりますし、技術志向の強い人にとってはクリエイティビティを発揮できる面白い仕事でもあります。メインの業務の片手間で行うのではなく、工数確保や効果測定もしっかり行うことで、継続的に技術的負債を解消する体制を整えています。
ーー社員の皆さんは、どんなバックグラウンドの人が多いですか?
小原:SIや受託開発などで経験を積んできたエンジニアが一番多いです。作って終わりの開発ではなく、オーナーシップを持ってプロダクト開発をしたいという想いで、レンガを選んでくれた人たちですね。
入社してくれたメンバーの定着率が高いのも特徴です。古い人だとマンションノートの立ち上げを手伝ってくれた当時学生だったエンジニアが社員として戻ってきてくれたり、デザイナーでも創業当初から苦労を共にしてきたメンバーがいます。
今の3チーム制になってからも一体感は強く、最近入社したメンバーもすんなり馴染めている印象です。それがチーム制の一つの狙いでもあるのですが、どうしたらプロダクトをよくしていけるか、みんな本当に自分事としてとらえてくれていて。仕事終わりにご飯を食べに行っても、「あの施策よかったよね」「あそこの数値見込みが外れたのはなんでだろう?」みたいな話をしていることも多いです。
ーー企画の経験がない人にとっては、御社の仕事はかなり難易度が高そうにも思えますが……。
小原:入社後半年から1年くらいは、レンガの仕事の進め方に慣れてもらう期間と考えているため焦らなくて大丈夫です。戸惑うことも多いかもしれませんが、既存メンバーもみんな通ってきた道です。
あと、レンガのエンジニアは、すごく面倒見のいい人が多いのも安心材料ではないかと思います。誰かが困っていそうなときは、「一緒にやりましょうか」と自然に声を掛け合う雰囲気があります。必要に応じてペアプログラミングをしたり、ときには要件定義の草案を起こすところから共同作業をしたり。オンボーディングに関しては、私も1on1などでフォローしていますが、最近はほぼチーム内で完結しているので、私の出番はあまりないです(笑)。みんな頼もしいなと思っています。
企画力は既存メンバーでもまだまだ磨きたいという人が多く、勉強会もよく開かれています。プロダクト開発の書籍をみんなで読み進めながら、1章ごとに「この考え方をマンションノートに当てはめるとどうなる?」とディスカッションしたりしていますので、今はかなりキャッチアップしやすい環境ではないかと思います。
ーー御社は現在、マンションノートとは別に、新規事業の立ち上げも進められているそうですね。
小原:当社は「人生を助けるサービスをつくる」というミッションのもと、まずはマンションノートで「住まい」の領域に取り組んできました。次に私たちが取り上げるテーマは「健康」です。今、一般の人も企業も健康維持には高い関心を持っている一方で、「運動した方がいいのは分かっているけれど続かない」と悩む人も多いですよね。そこで、フィットネスのトレーナーや大学教授とも連携しながら、運動習慣づくりを支えるサービスの年内立ち上げを目指しています。
フィットネス事業はCOOがリードしており、エンジニアも一人、プロダクトの構想を練る段階から入っています。当初と今ではその構想にもかなり紆余曲折があり、そうしたプロセスを彼も一緒に経験してきました。エンジニアがプロジェクトに入っているとすぐにプロトタイプをつくれるので、検討も進みやすいようですね。
事業の立ち上げ時はスピードが重要ですから、私も共有は受けているものの、基本的には見守るスタンスです。大事なところで違和感がなければ、あとは当事者の進めやすいように進めてもらうのがベストと考えています。
ーー新しく入る人が新規事業に関わる可能性も?
小原:まずはマンションノートの仕事からスタートしていただきますが、将来的には新規事業を担当いただく可能性もあります。そのあたりは、マンションノートのチーム編成を検討するときと同じように、事業推進上のニーズと本人の希望を考え合わせて判断していきます。
ちなみに、これはフィットネスの事業がある程度形になった後の話ですが、会社としては次の新事業の立ち上げにも遠からず取り組みたいと考えています。その際は、おそらくまたエンジニアのメンバーにも初期から入ってもらうことになるかと思います。
ーー立ち上げ間もない事業、さらには事業立ち上げそのものに関わる機会もあるかもしれないのですね。本日は「考えながらつくる」御社ならではの仕事の面白さが伝わるエピソードをいろいろ紹介いただき、ありがとうございました。
(取材・文/中名生 明子)