提示年収つきで企業から指名を受けられる転職ドラフト。過去には年収1500万円で採用が決まったエンジニアがいるなど、時に高額入札が話題にのぼるが、実際にはどれくらいのエンジニアが年収アップに成功しているのだろうか。
今回は転職ドラフトを使って転職を決めたエンジニアによる覆面座談会を開催。顔出しでは語れない、本音ベースの話をたっぷり聞かせてくれた。
Nさん:人工知能サービスの開発に携わる29歳。転職は今回で2回目。
Iさん:アドテクノロジー系企業でサーバサイドからフロントまで携わる29歳。転職は今回で3回目。
Fさん:ベンチャー企業で新規サービスの開発に携わる32歳。転職は今回が初。
Sさん:ゲーム開発会社でサーバサイドエンジニアとして働く33歳。転職は今回で2回目。
平凡なアピールではやりたい事も高年収も得られない。
ー率直に伺います。ズバリ、年収は上がりましたか?
N: 上がりました!前職が相場より低かったというのもありますが、200万円くらいアップしました。
ー200万円!!
I: 僕も50万円くらい上がりました。金額はもちろんですが、何より「本当に来てほしいから、これくらい出します」と言ってもらえたことが嬉しかったですね。
F: 私はプラス100万円くらいでしょうか。
S: 僕は150万円くらい上がりましたね。
ー全員年収アップを実現!?さすが転職ドラフト(笑)…とはいえ、それが可能だったのも皆さんの実力あってのことだと思います。評価されるエンジニアになるために、普段からどんなことに取り組んでこられたのでしょうか?
N: 自分が伸ばしたい技術を何とかして仕事で使うようにしてきました。技術って「かけた時間がモノを言う世界」だと思っています。だから、伸ばしたい技術があるなら趣味でやるより仕事として取り組んだほうがいいんじゃないでしょうか。個人でできることって、たかが知れていますからね。
I: 僕もそう思います。1日24時間の内、その半分近くを仕事に使いますよね。そこでやりたいことができるかって、本当に大事だと思います。趣味でいくらアプリをつくってみたところで、仕事として取り組むことに比べたら、得られる経験値が全然違います。やりたい技術があるなら、自分から導入に向けて積極的に働きかけていくくらいの姿勢は必要だと思いますね。
ー自分から仕事を取りに行くということですね。
I: あとは基礎が重要だということも、絶対条件として付け加えておきたいポイントです。この世界って、表面的なフレームワークなんかは日進月歩で変化していきますが、根本の普遍的な技術をちゃんと押さえておくと、何かと応用が効くんです。あらためて足元を見つめ直してみると、現在やっていることとリンクする部分を発見したり、新たな理解を得られる部分もあると思います。
F: 私は、技術に対して興味を持ち続けることが大事なのかなと思っています。おもしろそうな技術が出てきたら、たとえプライベートの時間を使ってでも、まずは実際に自分の手を動かしてみる。そういう地道な積み重ねが、自分の力になってくる部分は大いにあると思います。
S: あとは常に情報収集をして、自分のやりたいことを探すことも忘れずにいたいですね。僕の場合だと有名なエンジニアのTwitterアカウントをフォローして、そこで面白そうなコードを見つけたら、自分もさわってみたりしつつ、情報感度を上げるようにしています。
ーなるほど。そういった姿勢が大事なのは、何もエンジニアに限った話ではなさそうですね。ところで、職務経歴書の書き方で気をつけていたポイントはあるのでしょうか?
N: これまで自分が取り組んできた仕事の中で、もっとも尖ったエピソードに絞って書くことを徹底していました。というのも、僕自身が尖った会社で働きたかったからなんです。尖った会社って、新しく採る人にも「尖ったところ」があるかを求めると思うんです。転職関連の書類って、とにかくたくさん書いておいた方がいいとばかりに広範なスキルセットを並べてしまいがちですが、自分の強みに焦点を当てて、そのスキルで自分がいかにおもしろいことをやってきたのかをアピールした方がいいと思います。
I: ホント、おっしゃる通りですね。僕は逆に「なんでもできます!」と書いて失敗したタイプです(笑)。全部できると書いたところで、大抵の企業が求めているのはその中の一部にすぎないんですよね。自分が本当にその方向に尖っていきたいのかを見えるようにしておかないと、希望にマッチしない指名を受けることになっちゃうんです。幸いなことに、僕は希望どおりの会社に行くことができましたが、全方位的なアピールはかえってデメリットになると考えた方がいいかもしれません。
F: 私の場合は、自分の経歴を英語で書き、成果物を貼り付けてURLは別で渡すというやり方で転職活動に取り組んでいました。転職って、どこの会社でもいいわけじゃないですよね。自分が望んでいる条件を叶えてくれる会社に見つけてもらうには、「私はこういう人間です」ってしっかりアピールしないといけない。
S: 僕の場合は、転職前に勤めていた会社でGo言語を広めた成果を、高く評価してもらえたのが要因かなと思っています。
I: あ。それ、わかります!「周りに影響を与えたこと」について面接でよく聞かれました。「これができます」というアピールより説得力があったのではないかと考えています。
―自分の強みは何なのか、今後何をしていきたいのか。守りに入らず具体的に書いていくことが、職務経歴書作成の秘訣と言えそうですね。
転職のきっかけや決め手は?エンジニア転職のリアル
―それぞれ転職を本格的に検討しはじめたきっかけは?
N: 僕は前職の会社では、わりと古くからあるイベント系SNSのフルリプレイスをやっていたんです。僕は主にバックエンドを担当してたんですが、ちょうど基盤的なところはある程度固まったという時期でした。こういうプロジェクトって、終盤はしこしこAPIを生やすような些末な業務が多くなりがちで、自分としては面白みのある部分は片付いた印象でした。あとは、リアルな話で言うと、給与面での不満もあって。そこから本格的に他にもっといい仕事はないか探しはじめました。
I: 僕がはっきり転職したいと思うようになったのは、当時の会社が途中で買収されてしまって、風土がガラッと変わったのがきっかけです。今まで自社で開発していたのに、買収によってもっと人を入れて開発スピードを上げろという方針に変わったんです。その結果、最終的には20人くらい業務委託を入れて、僕はその面倒を見るレビューおじさんみたいな状態になっちゃったんですよ(笑)。それは本意ではないな、と。だから転職ドラフトに登録したときは、転職に対する意欲はかなり高かったです。
F: 私は前の会社で仕事を選べる状況ではあったんですけど、あまりやりたいと思えるものがなくて。転職するか、フリーランスになるかをまず一度考えました。でも、いろいろ考えて、フリーランスより会社員の方が楽だろう、と。そこで、どこかいい会社がないか探しはじめました。
S: 僕は自分の市場価値を知りたいというのが発端だったので、実際に指名をいただいてから心が動きはじめたという感じですね。登録をしたときは、指名ゼロも覚悟していたんですけど、ありがたいことに高く評価してくださる会社が何社かあって、実際に面談でお話を聞きながら、徐々に気持ちが高まっていきました。
―今の会社を選んだ決め手は?
N: 今の会社ではAI開発をやっているんですけど、その中にあるデータサイエンスチームでは現在、データ処理のための基盤システムの開発を行っていまして、その一員になりませんかという口説き文句で、指名をいただきました。そこに魅力を感じたというのが一番の理由ですね。
I: 僕もAIや機械学習に興味があったので、それを実サービスで使っている会社に行きたいなという志向はあったんですよ。そんな中で声をかけられたのが今の会社。いわゆるアドテクノロジー系の会社で、僕はレコメンドウィジェットのプロジェクトマネージャーというポジションでオファーをいただきました。レコメンドウィジェットって、膨大なアクセスログをくわせて、そこから関係性を見出して推薦するという意味では、まさにAIや機械学習を実サービスで最もわかりやすく活用している分野。あとはマネジメントもやってみたかったので、そういう僕の希望と企業側の求めるものが上手くマッチングしたことが一番の決め手になりました。
F: 私は今、新規サービスの立ち上げに関わらせてもらっているんですけど、そういったチャレンジングな領域である程度裁量を持って自由に仕事ができるという点に魅力を感じました。あと、プライベートなことで言えば、私は結婚して子どももいるので、家族との時間を持ちたかったし、昔からRubyのコミュニティ活動もやっていたので、そうした自分のやりたいことに注げる時間もとりたかった。それらをトータルに考えた上で、最も理想にかなっているのが、今の会社だったという感じです。
S: 今の会社は、周りのエンジニアのレベルが高くて、人を大事にする姿勢が話の節々から感じられました。前の会社にずっと留まるより、確実にプラスになると思えたことが、何より大きかったですね。
ー印象に残っているオファーや面談はありましたか?
N: どの会社さんもレベルは高いし、話はおもしろかったんですが、裏返すと平均的で突出したものがなかったのも事実。その中で突き抜けていたのが、現在働いている会社でした。CTOがわりと変わり者で、初対面の僕に対して開口一番言ったのが、「いちばん大事なのは愛」だという言葉。人を大事にすると言う会社は多いけど、「愛」とまで断言するところはそうないので、非常にインパクトがありました(笑)。
F: 私も今の会社がいちばん印象的でした。わりと組織のリアルな状況や課題をオープンに話してくれたんですね。本音で話してくれているかどうかは求職者もわかるし、そういう相手には心が動かされます。
S: 僕は最終面接でコアな技術の話をいっぱいされて、ボコボコにされたのが印象に残っています(笑)。知らない話がたくさん出てきて、これは落ちたなと思ったら、まさかの内定。それが今の会社です。こんなこともあるんだなと思いました。
I: 悪い意味で印象に残ってしまうケースもありますよね。指名のときはすごく詳しく職歴を見て評価してくれているように感じたのに、実際に面接に行ってみたら「じゃあ今までの経歴を紹介してください」っていうところからスタートしたり。こちらとしては自分のことを知ってくれている上で指名をいただいたという認識なので、その入り方には違和感を持ちました。採用において、指名を書く人と面談をする人が別というケースはあると思うんですけど、そのすり合わせができていないと、求職者とのすれ違いが生まれる危険性がある。そこは改善した方がいいなと思いました。
実力のあるエンジニアを採用したいならもっと転職ドラフトにリソースをかけたほうがいいのでは?
ー転職ドラフトを使ってみての、率直な感想を教えてください。
I: 参加企業はもちろん、求職者側も審査があるというのはノイズが少なくなってとても良いと思います。気になったのは、開催期間が決まっているから最後の方になって駆け込み指名が相次いでしまうところです。恐らく企業側は他の動向を見ながら値踏みをしているところがあるのかもしれないけど、それが透けて見えてあまり印象は良くないなと。その人が何社から指名されているかはオープンでもいいけど、いくらで指名されているかは見えなくてもいいんじゃないかなと思いました。
F: 私は他の人がいくらで指名されているのか見えるのはいいんじゃないかなと思います。各企業がいくらで指名しているのかわかるのも、その企業の相場観を知る上で参考になりました。ただ、年収額に応じて、参加しているエンジニアが「ゴッド級」とか「スター級」とかのランクに分けられると思うんですけど、逆にエンジニアの年収幅が狭められるんじゃないかなという懸念もあります。「優秀なエンジニアの年収上限はこのあたりなんだ」という枠は植えつけない方がいい、というのが現場で働く人間としての要望ですね。
S: 待っているだけで提示年収つきで指名が入るというサービスの骨格がいいなと思いました。転職エージェントに相談すると、あまり興味がない企業でも「ひとまず受けてみませんか」と言われてしまう。不要なパワーをかけずに、いい職場との出会いを得られるのは、他にはないメリットです。
N: 指名を受けてから面談の日程調整まで、すべて転職ドラフト内で完結できるのは便利でしたね。
S: 良かった点で忘れてはいけないのが操作性。他の転職サイトの場合、入力項目が多いんですよね。たとえば言語だったら一覧の中から経験のあるものを探して、チェックを入れて、年数を入れて、という感じで、ものすごく手間がかかる。その点、転職ドラフトはフリーで書けるのでとても楽でしたね。
I: スキル欄で言えば、当たり前すぎるものに関してはいっそ削った方がいいと思う。100人いたら99人くらいMySQLって書いてて。さすがにそれじゃ何のアピールにもならないな、と(笑)。
N: スキルで思い出したんだけど、クックパッドの1位指名もらった人のスキルセットを見たら、リンカ・ローダって書いてあって、これは1位指名もらいそうだなと妙に納得したのを覚えています(笑)。企業の顔ぶれもいいけれど、参加者の質も高いのが転職ドラフトの特徴だと思います。
F: それこそ今の会社では、転職ドラフトにもっと人事リソースを割くべきだって話になっています。それくらい効果が高い。
I: エンジニア仲間の間でもけっこう浸透しつつありますし。まだ転職を本格的に考えていない人でも、まず自分の市場価値を探るという意味でも、登録してみるのはアリだと思いますよ!