ホワイトプラスは宅配ネットクリーニングの「リネット」などを開発・運営するベンチャー企業。IT×リアルビジネスの領域に黎明期から参入し、現在8年目。様々な試行錯誤を重ねた結果、近年では会員数20万人を突破。2017年1月には広々としたオフィスに増床したばかりだ。
今飛ぶ鳥を落とす勢いの彼らに、IT✕リアルビジネスの現在を聞いた。
森谷: そうなんです。おかげさまで、のびのびとコーディングできるようになりました(笑)この芝生のスペースの他に、ハンモックや、カフェスペースなど、色々寛げる場所ばかりなんですよ。普段エンジニアはこのあたりの好きな場所を選んで、各自コーディングをしています。
森谷: クリーニングの「リネット」はおかげさまで会員数が20万人を突破。有料会員数も順調に増えています。ただその一方で2年ほど前から、クリーニングを営んでいる企業のWeb化が進み、競合は増えている状況です。
競合は増えていますが過度に意識せず、私たちはちゃんとお客様に価値を提供できるよう、まだまだサービスを磨いていかないといけないと思っています。
森谷: 会員数10万人を超えた頃までは自分を含むエンジニア2、3人で開発していたのですが、この3年でようやく8人まで増えました。とはいえまだ8人なので、人数が増えたことで開発の仕方を変えざるを得ないという状況にはなっていません。いい意味でベストなカタチに変えていくことができたなと思っています。
森谷: 少人数でやっていた時は、どうしても事業の必要性に迫られて開発している感じだったんです。創業メンバーである私自身も、エンジニア未経験から勉強し、ゼロからシステムを開発した経緯があるし、メンバーは皆、領域に関係なくなんでもやっていました。
いまは人数が増えたことで、工場・生産サイドとお客様側サイドといったように、ある程度領域に線引きができるようになりました。基盤整備にも注力できる体制になり、システムとしての安定性や品質を高められるようにもなりましたね。
森谷: 工場・生産サイドは八巻が、ユーザーサイドは仲見川が担当しています。どちらも昨年4月に入社した新戦力です。
八巻: 私は工場の生産管理、課金・財務周りなど、主にバックオフィスが使う基盤の開発を担当しています。先ほど森谷も言っていたように、自分が入る前は、人数に対して成長角度が勝っていたので、トレードオフの結果、必要なモノだけを作るフェーズでした。業務を支える部分なので変更は派手ではありませんが、安定性を高められたと思います。
八巻: 売上と入金のシステムを半年くらいかけて整備したことですかね。私自身、もともと財務の知識があったわけではないので、実際に業務で使っている人にヒアリングしながら、設計から実装までひと通りのことをやりました。実際に使う人の近くでものづくりに携われることに、いますごく喜びを感じていますね。
八巻: ホワイトプラスは3社目なのですが、私はもともとはSEとして、化学メーカーの工場で生産管理のシステムなどを作っていました。そこでPMまで経験していたのが大きかったですね。とはいえ、この規模のものをこのスピード感で、しかも1人で作るというのは初めての経験で。想像していた以上に裁量が大きいことが、ホワイトプラスに入社して驚いたところです。
仲見川: エンジニア3人のチームで、昨年申し込み入力フォームの大改修を行いました。改修にあたっては技術選定もエンジニア主導で行い、React+Reduxという最近注目されている技術に野心的に取り組めたのはよかったと思っています。現実に、すごく変更のしやすい、将来性を見据えたフロントエンドアーキテクチャに出来たかなと。
仲見川: 当社のサービスはまず注文があり、集荷があり、お届けがあるという流れなのですが、注文時にオプションをつけたりすると、複雑な納期計算が発生します。従来は、Golang+PHPで構成されたAPIとjQueryがメインのフロントエンドが密結合したモノリシックな構成になっており、複雑な納期計算の結果をまとめてフロントエンドに渡し・・・。という形で実装されていました。
その影響で、サービス規模が大きくなっていくにつれ複雑化し、納期計算ロジックのメンテナビリティ悪化やレスポンス悪化が徐々に起こっており、大規模な改修が必要になりました。
それをReact+Reduxというフロント寄りの仕組みを導入し、基本はフロントエンドで処理を行い、必要が発生するたびにGolangで一本化したAPIに問い合わせてデータを取得する形に変えました。これにより、計算量が減りレスポンスが向上したのと、今後も改修のしやすい将来性のあるフォームになりました。
仲見川: Reactに関して知見のある人間がいないところから始めたことですかね。そういう意味ではリスクを抱えたプロジェクトだったとも言えるかもしれません。学びながら、手探りの状態で進めたのですが、3人で頭を突き合わせて開発していくプロセスは、ハッカソンのようで苦しくも楽しいものでした。
森谷: ミドルウエアより上、フロントエンドやサーバサイドに関しては、全てボトムアップです。そういうものはトップダウンでやると大体失敗しますよね。技術選定を議論して決められるメンバーが集っているので、自分が口を出すことはないですね。
一方でインフラや、現時点でそもそもないキーテクノロジーについては、ボトムアップで提案することを求めるのは酷だし、リスクを負いきれないでしょうから、そこは自分の役割であると考えています。
キーテクノロジーに関しては、スケーラブルであることもそうですが、事業の大きな課題がまずあって、それを解決するにはどんな技術があれば可能か、という視点でいつも探すようにしています。それができると、技術観点で事業を伸ばすことができますから。
森谷: おっしゃる通りで、そうした時間が圧倒的に増えましたね。今は開発チームは全く見ておらず、新たに創造開発室という部署を立ち上げました。先ほど言ったような経営課題への答えとなるような技術の調査に加え、開発チームが働きやすい環境づくりなども自分の役割です。
森谷: そうです。RFIDタグを導入するという構想自体は以前からあったのですが、販売されているものは耐性・耐熱の点で物足りなかった。クリーニングに使えるものを共同開発してくれるパートナーを探しているとき、たまたま紹介してもらったのが、今回ご協力いただいている富士フィルムイメージングシステムズ株式会社さんでした。
医療用のニーズがあるらしく、富士フィルムイメージングシステムズ株式会社さんは超軽量耐水耐熱、かつ柔軟性を持ったRFIDタグを市場投入しようとしており、製品開発の実地調査やフィードバック部分を行いました。。クリーニングの現場で使うには、本当に壊れない、外れないことを確認する必要があるので、現在はふとんに限定して、その実証実験を行っているところです。
森谷: いろいろと可能性は膨らむんですが、今と何が変わるかという視点で説明すると、バーコードだと1対1の照合しかできないところが、RFIDだと1対nの照合ができるようになるんです。
例えば工場に10工程あり、1万件の衣類を扱っているとした場合、1対1の照合だと10万回の処理が発生する。1処理に1秒かかるとすると、全体では10万秒です。これでは現実的ではないため、現状では2、3工程でのみ照合を行っています。RFIDで1対nの照合が可能になれば、10万秒を1万秒に短縮できるから、全工程で衣類の状態をトラッキングすることが実現することになります。
その結果、どんな変化を起こせるかというと、今までトラッキングコストが高くてトレース出来なかった工程がトレース出来るようになる。誰がいつどの工程でどの商品に対して何秒かけて処理をした。とか。そうすると、作業が可視化され改善に活かせるようになります。また、オンラインクリーニングでの悩みが生産工程を途中で変えることが難しく、お客様に対してクリーニングの提案をしづらいというところがありまして、こういった課題も解消が出来るようになってくると思います。
その上機械学習を活用することができれば、更なる業務革新が可能です。
森谷: はい。工場に衣類が届くと、最初に検品というデータ入力の工程があるのですが、現状は人が手入力しています。人間が目で見て商品を判定し、データ入力をしているという、要するに教師データが既に存在しているので、後は作業負荷をかけないように画像撮影をし、商品データを紐付け機械学習にかけることで、人が介在せずに検品作業が成り立つのではないかと思っています。
また、現状はクリーニング後の商品状態のチェック(破損や破れ・汚れ落ちの具合など)を人力で行っているのですが、人がやると、どうしても一定程度見落としが出てきてしまいます。エスコートタグの技術と組み合わせれば、いずれはクリーニング前後の画像を比較するだけで精度高くエラー判定ができるようになり、品質向上にも寄与できるのではないかと考えています。
八巻: オフィシャルな制度ではないのですが、入社したらクリーニング師の国家資格を取るのが通例です。自分たちも受けましたよ。
八巻: きっかけは単純に、周りがみんな受けていたからです。ないと業務ができないかと言われればそんなことはないですね。ただ、私は前職で受託開発をしていた時から、「エンジニアは業務を知らなければいい仕事はできない」と思っています。生地素材一つとってもプログラミングしているだけでは分からないことですから、非常に勉強になります。
仲見川: 自分たちは言われたものをただ作っているわけではありません。そして、知識を持っているからこそ、他の職種の人とも対等に話せる。そういう意味では必要な知識だと私は思いますね。
仲見川: そうですね。私はマーケティングチームと仕事をする機会も多く、そこに技術的視点から提案できるのが楽しいと感じています。施策を出す側の視点だけだと抜けるようなところを、「それだけだとシステム的にはうまく回らないよ」とか、「お客さんは不便になるよ」とか、施策を補完する動きを意識して行っています。
八巻: 私もバックグラウンドとしてはエンジニアリッチな組織でずっと働いてきたので、エンジニア以外の人がたくさんいるところで働けることは、この会社で働くことの魅力の一つですね。マーケティング、経理、工場の生産管理、カスタマーサポートといったスペシャリティを持った人と働いていると、エンジニア同士でだけ話していたら分からないことがある。そこが楽しいんです。
八巻: 今後チームが大きくなっていくことを考えると、今まで以上にコードの品質が重要になると考えています。スピードはもちろん大事ですが、コードの品質担保とバランスよく実現して、トータルでスケールできるスピードを出す、という視点でシステムを組める人が必要だと思っています。
仲見川: そうですね。加えて、今は各メンバーが1人で担当領域を持っているような状態なので、今後はそこを補完しあえるような仲間が増えて、チームとして働けるようになったら、より楽しいだろうと感じています。