RubyKaigi 2025の転職ドラフトブースでは、「みんなでつくる Rubyist年表」という参加型コンテンツを実施し、来場者1518名に対し、約350名(参加者の約23%)の方がご回答くださいました。
Rubyist年表では、日本におけるキャリアやソフトウェア開発業界、RubyおよびRubyコミュニティの歴史がまとめてあるパネルに、Rubyistそれぞれの歴史を、緑色のシールでエンジニアになった年、赤色のシールでRubyistになった年として示していただきました。
この記事では、エンジニアおよびRubyistとしてのキャリアを開始した年のデータをもとに、Rubyという言語が普及した時期などを、転職ドラフトが提唱するキャリア論、技術動向データなどを活用して考察していきます。
技術トレンドの考え方について
まずはこちらの図をご覧ください。
これはRubyKaigi 2025でも配布していた『Career Theory for IT ENGINEER』に掲載している技術トレンドの変化を表現した図です。
「エンプロイアビリティ = 人が組織に雇われるための能力」としたとき、より多くの組織に必要とされる技術であればあるほど技術トレンドとしては上昇することを表しています。
この図によると、エッジ・モダンな技術よりもスタンダードや、一部のレガシー技術を扱えるスキルのほうがエンプロイアビリティが高くなる傾向があると考えられます。
Rubyという技術はどう普及していったのか
現在、転職ドラフトを利用する企業のうち約3割が、求める使用技術(転職ドラフト企業ページに記載)としてRubyを登録しています。
このような背景から、私たちはRubyを「スタンダードな技術」と捉えています。ここからは、Rubyがスタンダードになった理由を、Rubyist年表に掲載されている出来事とともに振り返っていきます。
Rubyが誕生したのは1996年で、Railsが登場したのは2004年ですが、年表を見るとRubyの利用者が増え始めたのは2007年から2008年頃で、2011年頃に急増したように見えます。
2007年頃からRubyistが増加したのは、GitHubやTwitterといったIT業界を牽引する企業がRubyを採用したこと、そして国内企業でのRailsの導入が進んだことが背景にありそうです。
さらに2011年頃には、Ruby 1.9系の普及やRails 3.0の登場など、Rubyによる迅速かつ柔軟な開発に大きな影響を与える出来事があり、企業のRuby利用を一層後押ししたと考えられます。
そして2013年には、現在の日本のIT業界を代表するメルカリやSmartHRといった企業が、初期開発にRubyを選択しました。
2015年から2016年頃には、「エンジニアになった年」と「Rubyistになった年」が一致するエンジニアが目立ち始めます。この時期になると、一部企業だけでなく多くの企業が開発技術としてRubyを選択するようになるなど、一時的な流行ではなく技術として定着したことを示唆しています。
Rubyのエンプロイアビリティ
年表からRubyがスタンダードな技術として定着し始めたことが読み取れる2016年は、転職ドラフトがサービスを開始した年でもあります。ここからはRubyist年表から離れて技術動向の流れについて触れながら、Rubyのエンプロイアビリティについて考察していきます。
以下は、RubyKaigi 2025でも展示した技術トレンドの変化を表したグラフです。
ご覧の通り、全体の年収も上がっていますが、Rubyを利用するエンジニアの年収もしっかり上がっています。
もう少しわかりやすくするために、Rubyのデータのみを抜き出したものがこちらです。
Rubyの年収上昇の要因は、先にも記載したように企業でRailsの導入が進んだことのほか、2018年頃に平均提示年収を伸ばしたRSpecの存在が挙げられます。
2018年はSaaSビジネスがトレンドとなった時期であり、テストツールであるRSpecと開発生産性の高いRubyの特性とが相まって、エンタープライズ向けサービスを展開するスタートアップにおいてRubyの利用が拡大しました。これは、ビジネスの需要がRubyの利用に影響を与えた一例とも考えられます。
特定技術のトレンドステージが変化・定着するまでの傾向と考察
今回の年表でRubyistのみなさんに記入いただいたデータをあらためて見ると、Rubyがエッジからスタンダードとエンプロイアビリティのステージを変化させるまでに、技術公開から10年ほどの年月がかかっていることがわかります。
これは、1つの技術が一般的になるのに10年かかるということを言いたいわけではありません。
Rubyにおいては、「Ruby on Rails」の登場、IT業界におけるスタートアップやSaaSブームといった社会全体の動向と、Rubyの言語特性の一致が、エッジ、モダンであった技術のエンプロイアビリティを大きく変化させたということだと推察されます。
Rubyist年表からの考察に対する感想
今回はRubyKaigi 2025の転職ドラフトブースにて実施した「みんなでつくる Rubyist年表」をもとに、技術トレンドの変化とRubyの結びつきについて考察しました。
このような分析ができたのは、ブースに足を運んでくださったみなさんのおかげです。
また、今回の年表に記載したRubyに関する出来事は、「Ruby Magazine」を含む複数のメディアに掲載されている情報をもとに整理しました。
Rubyコミュニティに属するRubyistのみなさんが、多くの歴史を刻んでくださったからこそ年表というかたちでまとめ、共有することができました。
現在までRubyやコミュニティに貢献しているRubyistのみなさんに、あらためて感謝いたします。
RubyKaigi 2025のアフターイベントを開催!
2025年5月9日(金)に「深掘り!RubyKaigiアフターセッション」というイベントを実施します!
RubyKaigi 2025に参加されたRubyistに、RubyKaigiを通して学んだことなど発表いただく予定なので、ぜひご参加ください。