エンジニアの需要は年々伸び続けており、転職ドラフトでの平均提示年収も、2017年から2021年の間に110万円ほどアップしています。
一言でエンジニアと言っても、Webエンジニア、ゲームプログラマー、組み込み系エンジニアなどその種類は多岐にわたります。
それぞれに使う技術も違えば、役割も違うので、転職ドラフトでの提示年収も異なります。
そこで今回は、IT・Webの分野に活躍するエンジニアにフォーカスを当て、職種が違うと年収にどのような違いがあるのか、またどの職種の需要が伸びているのかなどを、転職ドラフトのデータから読み解いていきます。
※転職ドラフトにおける「職種」は、Webエンジニアの中での役割というイメージに近い意味で使われています。
職種別の平均提示年収(2021年)
まずは2021年のデータから、エンジニア職種別の平均提示年収を見ていきましょう。
転職ドラフトにおけるエンジニアの平均提示年収は、 どの職種においても650万円以上 です。もっとも高いプロダクトマネージャーからもっとも低いフロントエンドの間では、平均提示年収に100万円以上の幅があります。(中央値はどの職種でも平均値より20~30万円ほど低いものの、順位に変動はありませんでした。)
平均提示年収が高かったプロダクトマネージャーやエンジニアリングマネージャー、コーポレートIT/情シス、ゲームプログラマなどは、 その職種に必要な専門知識や経験をもった方を求める企業が多い ことも、給与が高くなった要因の一つでしょう。
一方、転職ドラフト参加ユーザーの42%を占めるフロントエンドやバックエンドは、幅広い年齢や経験の方が参加しています。
企業の教育体制や組織の構造上、キャリアの初期フェーズとしてフロントエンドやバックエンドを担う方が多い傾向にあるのも、平均値が低めの要因と言えるでしょう。
しかし、転職ドラフトでは企業がレジュメを見ながら実力に見合った金額を提示するので、実際には1000万円以上で指名される方もいます。
転職ドラフトの参加ユーザー数と1人あたりの指名数から見る需要と供給の差
変化の激しいエンジニア界隈ですが、職種にもそうした影響はあるのでしょうか?
転職ドラフトにおける1人あたりの指名数について、2017年から2020年までの平均と2021年を比較した増加率を見てみましょう。
※2021年は2020年と比べて参加ユーザー数が3倍以上に伸びたため、サンプルサイズをそろえるために2017年〜2020年の平均を出しております。
2017年~2020年 | 2021年 | 増加率(%) | |
---|---|---|---|
エンジニアリングマネージャー | 5.1 | 10.9 | 213.7 |
QA | 4.5 | 9.3 | 207.6 |
SRE | 5.6 | 10.7 | 192.0 |
プロジェクトマネージャー | 5.6 | 10.6 | 189.6 |
コーポレートIT/情シス | 4.7 | 8.9 | 188.0 |
プロダクトマネージャー | 5.7 | 10.7 | 187.5 |
フロントエンド | 5.7 | 10.6 | 186.3 |
インフラ | 6.1 | 11.3 | 185.2 |
ネットワーク | 5.1 | 8.9 | 174.1 |
バックエンド | 6.1 | 10.4 | 171.5 |
アプリ開発(Android) | 5.7 | 9.7 | 170.4 |
ゲームプログラマ | 4.8 | 7.6 | 158.1 |
機械学習エンジニア | 5.7 | 9.0 | 156.7 |
アプリ開発(iOS) | 7.0 | 9.7 | 138.3 |
2021年の転職ドラフトは登録、指名、年収ともに右肩上がりの年だったため、1人あたりの指名数もすべての職種において約1.4倍から2.1倍となりました。
なかでも、エンジニアリングマネージャーとQAは約2.1倍と、かなり目立っています。
その他、SREやプロジェクトマネージャー、コーポレートIT/情シス、プロダクトマネージャーなどの増加率が高くなる結果となりました。
エンジニアリングマネージャーの指名率が高くなった理由としては、 エンジニアの育成や技術的な課題解決をリードする役割を希望するエンジニアの割合が少ないため、外部から経験者を採用したい といった企業側の狙いもあるようです。
その他の増加率が高い職種は、そもそもの参加ユーザー数が少ないという共通点があります。
グラフでは、バックエンドやフロントエンドなどの母数が多い職種の増加傾向が目立ちますが、プロダクトマネージャーやエンジニアリングマネージャー、プロジェクトマネージャーを見てみると、登録割合は年々減少傾向です。
プロダクトや組織の問題解決や、チームマネジメントができる人材はどの企業でも常に一定の需要があるため、このグラフからも1人あたりの指名数の増加率が高くなるのもうなずけます。
また、1人あたりの指名数が増加しているQAやSRE、コーポレートIT/情シスは、そもそもの参加ユーザー数も少なく割合も横ばい状態です。
需要は増えているのにそのスキルや経験を持つ人が少ない。
次の章では上記のように「市場価値の高まっている」職種について、詳しく見ていきましょう。
直近5年の傾向から見る注目の職種
全体的に需要が高まっているエンジニアですが、需要と供給のバランスを見ていくと、その中でも特に市場価値の高まっている職種が見えてきます。
今回はその中から、SRE、QA、コーポレートIT/情シスの3つを詳しくご紹介します。
SRE(Site Reliability Engineering)
登録人数は多くないものの、平均提示年収の上がり幅も大きく1人あたりの指名数も多いSRE。
平均提示年収も以下のように右肩上がりで、さらなる需要拡大が予想されます。
年収モデルケース
事例Aさん
インフラ -> SRE
530万 -> 650万
今まで人力で行っていたシステム運用を効率化・自動化し、システムが大きくなった際の人的な負担を減らしたり、DevとOpsの対立を解消したりすることもできるSREですが、広がり始めて日が浅いため本格的に取り入れるのはこれからという企業も多いのです。
まだまだ経験者が少ないことから、AさんのようにSREそのものの経験がなくても、ソフトウェアエンジニアやリーダーとしての経験や野望欄でのSREを目指す姿勢が素質として評価される場合もあります。
QA(quality assurance)
QAもSREと同じく、1人あたりの指名数が多く、登録人数が少ない職種の一つです。
平均提示年収はここ5年で約90万円アップしていますが、全体の増加額に比べると少なめです。
年収モデルケース
事例Bさん
バックエンド・インフラ・QA -> QA
430万 -> 570万
サービスやソフトウェアの品質を担保する上では重要なポジションですが、ソフトウェアエンジニアなどの人がQAエンジニアの役割を兼ねていることもあります。
しかしここ3〜4年では、QA専任のポジションを新設する企業が徐々に増加しています。
実際、転職ドラフトの参加企業からも「1人目のQAエンジニアとして指名したい」「QAチームを増員したい」といった声が聞かれるなど、これからの需要拡大が見込まれます。
BさんのようにバックエンドやインフラメインでQAも行っていたという方が、QAエンジニアとしての活躍を期待されて採用されることもあります。
詳しくは以下の記事をご覧ください。
https://job-draft.jp/articles/558
コーポレートIT/情シス
コーポレートIT/情シスは、プロダクトマネージャーやエンジニアリングマネージャーに次いで平均提示年収が高い職種です。
特に転職ドラフトに参加する企業は、コーポレートIT/情シスを重要視する傾向があります。
年収モデルケース
事例Cさん
コーポレートIT/情シス -> コーポレートIT/情シス
720万 -> 900万
転職ドラフト参加企業が求めるコーポレートIT/情シスのレベルは高く、一般的な企業で求められるネットーワークやアカウント管理、システム導入やIT系の資産管理だけでなく、セキュリティの知識や自分が普段使っている以外のOSやソフトウェアの知識、効率化による業務改善のスキルなども求められます。
またCさんの場合、コーポレートIT/情シスの経験・知識だけでなく、エンジニアとしての実務経験や積極的な情報発信・共有を行う姿勢などが評価され年収アップにつながっています。
提示年収の高さには、そうした企業側の期待値が反映されているのかもしれません。
まとめ
業務改善やサービスの品質向上を果たすロールのなかでも、 経験者が少なく、プラスアルファで高度な専門性が求められる職種に企業が注目している 傾向がみえてきました。
この背景には、従来は保守や品質保証を担っていたような方に、より広い領域での業務改善や、組織として重要な課題であるレガシーシステムの大幅な刷新のリードを期待するようなニーズの高まりが影響しています。
キャリアの初期には、業種や時代背景に左右されにくい汎用性の高いスキルを磨くことで活躍の場を広げることが重要とされますが、今回ご紹介した職種のように「希少性が高い」ことで市場価値が高められることもあります。
いまの自分のスキルや経験に、これから何を掛け合わせることで、今後のキャリアの選択肢を増やすことができるのか。
今回の記事を、あなたのキャリアの方向性を考える際に役立てていただけると嬉しいです。