「転職ドラフト」は、エンジニアを採用したい企業と、転職したいエンジニアが集まるダイレクトスカウティングプラットフォームです。1カ月に一度開催される「転職ドラフト」では、企業の採用担当者がエンジニアを競争入札。一人ひとりのレジュメを読み込み、任せたいポジションや業務内容、年収を提示して指名(年収確約スカウト)を送ります。
今回は、「転職ドラフト」を利用して転職に成功したエンジニアを直撃!
採用担当者が読みたくなるレジュメの書き方や、エンジニアリングマネージャー(以下、EM)というポジションならではの企業選び、指名の承諾・辞退の線引きなどについて、率直なお話を聞きました。
株式会社Showcase Gig(ショーケースギグ)
Engineering Manager 佐藤大典
音楽系アーティストのファンサイトを手掛けるスタートアップで、Webサイトや電子チケットアプリなどの制作に勤しむ。2015年にオフィス用品のアスクル株式会社へ転職。個人向け通販サイト『LOHACO』のプロダクト開発および、EMとしてエンジニアリング組織の構築・拡大に貢献。入社時10人ほどのエンジニアチームを約50人までスケールさせる。2020年7月、転職ドラフトを通じて株式会社Showcase Gigへ入社。現職。
レジュメを記入しながらキャリアを棚卸し
ーそもそも佐藤さんは、今回どうして転職しようと思ったんですか?
佐藤: 前職では個人向けECサイトのバックエンド開発を担当していて、2019年末ごろに、それまで進めていた決済システムの全面リニューアルが終わったんです。
一段落ついたので入社してからの4年間を振り返ったところ、その会社でやりたかったことは達成できたような気がしました。
もともと、ある程度規模感のある会社で、マネジメントや組織づくりを学び、EMとしての力量を高めたいという思いがあって。その会社ではエンジニアリング組織を数倍の規模にスケールさせられたし、新しく新卒採用にもチャレンジできたんです。
ならば次は、プロダクトを高速でスケールさせているスタートアップの組織をマネジメントしてみたいと感じるようになりました。
ー今回の転職で「転職ドラフト」を使おうと思った理由は?
佐藤: もともと、EMとしてエンジニア採用にも関わっていたので、企業側として「転職ドラフト」を利用しようと思っていたんです(笑)。
様々な採用パスを検討し、優秀なエンジニアと出会う新しい方法を探していたところでした。そこで、導入する前にまずは自分が登録してみよう、と個人で利用してみることにしたんです。
ー「転職ドラフト」以外の人材サービスに登録したり、利用したりされましたか?
佐藤: 人材サービスには登録していません。ただ、ヘッドハンターや知人経由でお誘いいただいたリファラル採用の面談には行きました。でも、一番多く面談したのは「転職ドラフト」で指名をくださった企業だったんですよ。
ーそれはなぜでしょう?
佐藤: 指名ポジションがマッチしていたからです。企業側が私のレジュメを読み込んで、やりたいことを理解した上で、任せたいポジションを明示してくれたので、心が動きました。他の人材サービスの場合、どちらかというと、企業側の募集枠や募集ポジションがすでに決まっていて、そこに合う人を探します。すると必ずしも候補者の希望にマッチしないことがあるように感じていました。
その点「転職ドラフト」は大規模なダイレクトスカウティングのプラットフォームというイメージ。TwitterやGitHubなどを見て、企業からDMが来ることってありますよね。その拡大版という印象を受けました。「転職ドラフト」には優秀なエンジニアがたくさん集まり、それを求める多くの企業が集まっています。企業とエンジニアが直接、接点を持ち、求めているポジションや、やりたい仕事を伝え合うことができる魅力的な場ですよ。
定量評価を見やすく箇条書き。EM目線のレジュメ攻略法
ー「転職ドラフト」のレジュメを書くとき、どのようなことに気をつけましたか。
佐藤: 毎日何十通ものレジュメに目を通す採用担当者にとって、読みやすく、スキルレベルを判断しやすい書き方をするよう気をつけました。経歴欄を長文で書かずに箇条書きにしたり、プロジェクトの結果をできるだけ定量的に書くようにしたりと工夫を凝らしたんです。
例えばECサイトリニューアルの場合、プロジェクトの背景と実施方法、プロダクトにもたらした価値・結果について端的に記載しました。中には定量的な成果を測れないプロジェクトもありましたが、定性的な感想にならないように、できるだけ定量的な数値に変換して書くことを心がけました。会社で運営していたテックブログや、個人のブログ、GitHubといったポートフォリオもすべて記入しましたね。
私は毎年1回、キャリアの棚卸しをしているのですが、その一環として「転職ドラフト」のレジュメを書きました。毎年レジュメをブラッシュアップしていたので、「転職ドラフト」のレジュメ入力が特に大変だとは思いませんでした。審査も書いた後すぐに通過したと記憶しています。
いざ転職しようと思ったときにゼロからレジュメをつくろうとしても、なかなかキャリアの棚卸しをする時間を取れないので、年に一度はレジュメをつくっておいた方がいいのではないかと思います。
ー転職ドラフトに参加した結果はどうでしたか?
佐藤: 最初は「本当に指名が来るのかな」って、半信半疑だったんです(笑)。どんな会社が入札してくれて、どんなメッセージが来るんだろうって、楽しみでもあり、実験みたいな気持ちもありました。
そうしたら、10件も指名をいただいて。
ーそれは多いですね!
佐藤: 素直に嬉しかったです。どの会社もレジュメに書いてある内容を見て、「当社はこれぐらいの年収をご用意しています」と明示してくれたので、自分の市場価値を知ることもできました。最終的に、5社の指名を承諾し、残る5社の指名は辞退させていただきました。
ー指名を承諾したケースと、辞退したケースではどこに差がありましたか?
佐藤: 一番の基準は、プロダクトや企業の思想に共感できるかどうか、です。「自分が魅力的に感じるプロダクトをつくっている会社」を企業選びの基準に置いていました。
今回の転職では、私が入社することで、エンジニアリング組織のスケールに貢献できることも、判断基準の一つでした。
いままで知らなかった企業との「新しい出会い」
ー「転職ドラフト」の魅力はどういうところにあると思いますか?
佐藤: 入札という採用方法はゲーム性があり、楽しく転職活動を進めることができました。何社から指名されるのだろうかというワクワク感もありましたし、どのようなエンジニアが指名されているのかを見ることもできて、エンジニアとして自分の市場価値を知ることもできました。
それから、いままで出会ったことのない企業との新たな出会いもあると感じています。実は「転職ドラフト」で指名をもらうまで、私はShowcase Gigのことをまったく知らなかったんです。
個々人が自分の視点で調べるだけでは、出会える企業に限りがあります。しかし「転職ドラフト」なら、それまで出会えなかった魅力的な企業が、多くのエンジニアの中から自分のことを探し出して名指しで指名をくれるわけです。「転職ドラフト」は企業側にとっても、エンジニアにとっても、まだ見たことのない出会いを生む場なのではないかと思っています。
ー最終的に、Showcase Gigに転職を決めたのはなぜですか?
佐藤: プロダクトにオリジナリティと将来性を感じたからです。飲食店の非接触テクノロジーは、これから急速に伸びていく分野です。オンラインとオフラインをデータが行き来するとき、どのような技術が必要かについても、とても興味が湧きました。
しかも、既にエンジニアが30人ほどいるのに、まだEMはいませんでした。CTOと話をしてみると、その人柄の温かさや組織の抱える課題もよく伝わってきましたし、CTOが信頼できる人であることもわかりました。それなら、これまで培ってきた経験を生かし、経営に近いところでこのプロダクトや事業の成長に貢献したいと思ったんです。
「読み手」目線のレジュメ作成が転職を成功させる鍵
ー入社後に、想定とのギャップはありましたか?
佐藤: 大きなギャップはなかったです。優秀なエンジニアもたくさんいて、プロダクト開発を楽しんでいました。スタートアップはエンジニア採用に本当に苦労しますが、それだけプロダクトや会社に魅力があるんだということを、再確認できました。
それから、EMとしても広く活動させてもらってます。一見、EMというと一事業の一組織についてしか関われないイメージがあります。しかし私は会社全体の組織づくりや制度設計に関わらせてもらっており、いち早くやりたい仕事を実現できたので、とても嬉しいですね。
ー実際、入社して感じたShowcase Gigの魅力を教えてください。
佐藤: Showcase Gigは「モバイルオーダー」という飲食店向けのプロダクトを開発しています。お客様がテーブルでQRコードを読み取り、スタッフを呼ばなくても自分のスマホからメニューを注文し会計できる仕組みです。それ以外にも、店頭に置いた端末をタッチするだけで注文と決済ができるプロダクトも提供しています。
これから先、リモートや非接触が不可逆な世の中になっていきます。モバイルオーダーという分野で5~6年前から実証実験や企業への導入が進んでいる当社は、先駆的な存在だと思います。
ー最後に、いま転職活動中のエンジニアにメッセージをいただけますか?
佐藤: 転職ドラフトに関わらず、レジュメをつくるときは読み手の目線で書くことをオススメします。私自身も採用に関わる立場として実感しているのですが、あまりに長文のレジュメは選考以前に読みにくい。自分がそのレジュメを「読む」立場になったらどう思うのかを考えて書くことを意識した方がいいのではないでしょうか。そうすれば、自分の価値を企業へ存分に伝えることができると思います。
佐藤さんの所属するShowcase Gigについてはこちらの記事もご覧ください。
デジタル化が加速する飲食店を支えるShowcase Gigのモバイルオーダーサービスの開発がチャレンジングである理由
(取材・文/石川 香苗子)