2016/09/12

増井雄一郎対談 - 35歳定年説を覆す、40代現役Webエンジニアの死活監視

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(写真左からリブセンス野本氏、トレタ増井氏、リブセンス松坂氏)

まことしやかに囁かれる、エンジニアの35歳定年説。今回は、実際に35歳を過ぎても最前線で活躍し続ける、40代前半の現役のwebエンジニア開発者に、その実情を聞いてみました。

株式会社トレタ
増井 雄一郎(ますい ゆういちろう)
株式会社トレタCTO。大学時代に起業しWebサイト制作などを行う傍ら、PukiWikiなどのオープンソース開発にも積極的に参加。2008年に渡米しiPhone向け写真共有アプリPhotoShareをリリース。2010年に帰国し、アプリSDK『Titanium Mobile』の伝道師として活動。2012年9月に退職、FrogApps, Inc(現 miil Inc)を設立しiOS/Android向けにミイルをリリース。オープンソース活動としてMobiRubyを発表した。現在は2013年に起業したToreta, Inc.にてCTO。個人活動としてwri.pe, Kitayonを作成中。趣味はお風呂でコーディング。

株式会社リブセンス
@neko
某事業会社で内部システム、Webサービス、インフラなどに携わった後、受託開発の会社へ転職。ゲーム開発、ネイティブアプリ開発など幅広く携わる。2015年10月にリブセンスに入社し、転職サイト『ジョブセンスリンク』のネイティブアプリ開発のエンジニアリーダーとして活躍中。
※顔出しNGのためお写真ありません。

株式会社リブセンス
野本 直輝(のもと なおき)
組み込み開発を手がけた後、受託開発会社にてJava等を使った業務システム開発を経験。その後Web ASPを自社開発している企業にてLPO、EFO等に携わる。2015年6月にリブセンスに入社し、不動産サイト『door賃貸』のエンジニアリーダーとして活躍中。

株式会社リブセンス
松坂 高嗣(まつさか たかし):ファシリテーター
リブセンス創造開発部部長。2011年11月リブセンス入社。インフラ部門を立ち上げ、インフラリーダーを担当後、現職。

今日の自分より賢くないと自覚する日が来るはず

松坂: 今日は「歳をとってもWebエンジニアとして活躍し続けるためにはどうすればいいか」を話そう、ということで、リブセンスの現場の第一線で活躍している40代前半のエンジニア2人を連れてきました。

@neko・野本: どうぞよろしくお願いします。

松坂: ではさっそくですが、SIerでは35歳定年説が囁かれたりしていますが、Webエンジニアにも35歳定年説はあると思いますか?

増井: ないですね。でも35歳と45歳辺りにターニングポイントがあると思いますね。

松坂: ほう。いきなり企画をひっくり返してきましたね。詳しくお聞かせいただけますか。

増井: まず35歳について。この業界の一つの技術はだいたい10年くらい持ちます。逆に言えば、10年で賞味期限が切れるんですよ。みんな25歳くらいまでは、新卒だったり、置かれた環境により勉強する人が多いです。でも、その時に学んだ知識に甘えて、惰性で食べていっていると、10年後の35歳くらいで息切れする。正直、勝負できなくなります。

松坂: なるほど。怠惰だとそうなると。

増井: そうです。次に45歳について。学習能力はこういう線形(図1)になっていると僕は思うんです。この頂点が35歳くらい。そこからは下がる一方です。でも、下がっていることが自覚的になるのは多分40歳半ばくらいで、そこまで気づかずに何の対策もしてこなかった人は、脱落してしまうんじゃないかと思います。

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僕はこの線形をすごく意識しているんですよ。今は、明日の自分は今日の自分より賢いと思えるけれど、いつか、明日の自分は今日の自分より賢くないと自覚する日が来るはずなんですよ。それはすごく衝撃的なこと。どう乗り越えるか考えておかないと怖いなと思っていますね。

松坂: なるほど。みなさん40代になって実際、衰えって感じますか。

@neko: 僕は今もバリバリコーディングしていますし、40代でもコードは書けると思いますよ。ただ、自分が昔ほど吸収できなくなってきているのはわかります。もどかしさはありますね。

野本: 僕も今でもコードを書いて仕事ができているし、まだ学んでいけるなと感じるので、それほど意識はしていないですね。ただ、コードを書く速さは若手の方が速いと感じます。それと体力的なものは出てくる。徹夜ができなくなったりしますしね。増井さんはどうですか?

増井: アメリカで会社をやっていたときに一緒に働いていた元Microsoftの中島聡さんが、当時50歳くらいで新しい言語を覚えてプロダクトを作っているのをみて、ちゃんとやっていれば50歳でもコードを書けるんだなとは思っていますね。まぁ特別な例なので参考にならないところはあるかもしれないですが。

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この先生きのこるためにやっておかなければならないこととは

松坂: そういった衰えの中でも、第一線で戦っていくにはどうしたらいいんですかね。

増井: まず、35歳を迎える前に、その先自分が何で勝負していきたいかを決めておくべきだと思います。35歳くらいが一種のピークというか、脂が乗る時期です。そこに入るまでには方向性を決めて、脂が乗っている間に投資しておくべきです。

@neko: その点で言えば、僕も30歳くらいで自分の方向性を見定めましたね。僕は純粋に言語が好きなんです。でも自分のスキル、やりたいこと、時間制約など働き方を改めて考えたとき、僕はプログラミング言語のアーキテクトの方に行くのは合ってないなと感じたんです。それより、言語を駆使していく方が合っているし、現場が好きだから。その時から、現場でいかにアウトプットを出すか、成果を出すためにどんなスキルを身につけて行くべきか考えるようになりましたね。

野本: 僕が方向転換したのも30歳くらいの時でしたね。当時、受託開発をしていたんですが、ずっとサーバーサイドのコードだけを書いている状態でした。正直そこだと仕事をしながら学べる技術の幅が狭かったんです。それ以外の部分は個人的には勉強していましたが、経歴として書けるかはやっぱり別じゃないですか。あと、当時からこれからクラウドが来るだろうと思ってたんですよね。だから僕は、Webサービスを1人ですべて作れて、クラウドを扱えそうな小さい会社に転職しましたね。

松坂: 面白いですね。だいたいみなさん35歳になる前にターニングポイントが来て、5〜6年後を見据えた戦略を考えて進んできた、という感じなんですね。

増井: どのタイミングで自分の方向性を決めるかは大事です。35歳を超えて、下り坂に入ってから衰えに気づくようではもう間に合わない。正直、積み上げがモノを言う分野は歳を重ねても有利というか、戦えます。ただ、積み上げる時間も必要なので、自分はどこに投資するかを早めに考えないといけないと思うんですよ。早く気づいて、早く動き出した人が勝つ。そんなイメージですね。

松坂: なるほど。歳をとっても生き残るために、具体的には何をしたらいいんですかね。

@neko: 僕は普段から、周りの誰もやってない技術を学ぶようにしていますね。今、「ジョブセンスリンク」のネイティブアプリを作っていますが、iOSに関してもそうです。iOSが出始めた時、いち早く個人的に勉強しました。その後、たまたま当時の会社でiOSのプロジェクトが生まれて、手をあげたらアサインしてもらえたんです。今はそれで食っていけるようになっています。そういう材料を作っておくことは大事だと思いますね。

野本: それはありますね。AWSは日本に来る前の5年くらい前から触っていて、今に活きていますね。まぁ当たらなかったものもありますけどね。

@neko: Flashとかね(笑)当たらなくてもめげずに学び続ける姿勢が大事ですよね。

野本: あと僕は、技術だけにとどまらず広く学ぶようにしていますね。フルスタックというか。今は、チームビルディングをもっと上手くなろうと、いろいろ学んだり挑戦したりしているところです。コンピューティング技術以外のところを積極的に伸ばそうとしていますね。

増井: 僕は「年に1回英語で発表する、年に1回個人でプロダクトを出す」というのを毎年の目標にしています。これを実現させるためにはつまり、毎年発表できるネタを作らないといけない。ハードですがその分意識も高くなります。こういう風に毎年何か決めてやると良いと思いますね。

野本: それは良いですね。目標が決まっていれば、それが達成できたかどうかで自分の状態も把握できますし。

松坂: ちなみに今、若手に勝てないなと思う分野って出てきていますか?

増井: 機械学習はツライですね。今イチから数学をやり直してますけど、結構ツライです。

野本: わかります。

松坂: 何がツライんですかね?

@neko: 論文を読んでいても、自然言語解析の論文は頭に入ってくるんですが、機械学習のアルゴリズムの論文はなかなか理解できない。アルゴリズムを解釈するとき、あるいは設計するときに、そのベースに数学的な知識を必要とするところが難しいですね。サラサラっと書けないところにもどかしさを感じますし。

増井: ディープラーニングがもてはやされていますが、ディープラーニングを使わない機械学習の分野の方がはるかに大きいんですよ。ディープラーニングを使わずに回帰分析などでできることもありますが、そこの見分けをちゃんとできなかったりしますね。回帰分析って概念はわかるけれど、自分で使いこなせてるのというとそうでもない。本当にもどかしいです。

松坂: そういうのはどうカバーしていけばいいと思いますか?

野本: 弱った部分や勝てない部分があるなら、他でカバーすればいいと思いますね。加えて、積み上げの部分はやはり強い。アーキテクトやマネジメントのような、積み重ねの経験が効いてくるようなところを特に強みにしていきたいと考えていますね。

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実際の40代エンジニアはどうやって生きているのか

松坂: 実際今、仕事でご自身のバリューが出ているのは、どういうところですか?

@neko: どんなメンバーが来ても、開発の速さや品質を一定以上に保つことができているところかなと思いますね。今ネイティブアプリを作っていますが、以前はアプリに強い方がいたんですね。ですがその後メンバーが変わり、今は僕以外のメンバーは未経験者と新卒だけなんです。それでも、スピードは落ちていないし、開発終了予定はむしろ見積もりより早くなっている。リアクティブプログラミングを取り入れたり、googleのFirebaseを導入したりと、積極的に新しいものも取り入れつつ進められていますね。

野本: 僕が担当している「door賃貸」というサイトは、5年以上前のレガシーなPHPとオンプレ構成で動いていたんですね。数百万単位のレコードを日次のバッチでどうにかしないといけないような要求仕様の高いシステムでした。それを、インフラのアーキテクトからサーバーサイドのアーキテクトも含めて刷新していってるんですが、まず行ったAWS移行はほぼ無停止でできたのは成果としてよかったなと感じています。

松坂: うまく出来たポイントは何ですか。

野本: ヒューマンエラーが出そうなところを中心に、多くのことを自動化しました。加えて、動作確認は同時にやり続けるなど、慎重にやるべきところは慎重に進めましたね。

松坂: なるほど。少し話は変わりますが、@neko・野本さんはお二人ともエンジニアリーダーをされていらっしゃいますよね。やっぱりそれしか道はなくなりますか。

@neko: そんなことはないと思いますよ。実際に僕は今も、コーディングしていますし。ただ歳とともに、育成も悪くないかなって思うようになりましたね。

松坂: ぜひ詳しく。

@neko: 老婆心が出てくるんですよ(笑)僕はもともとマネジメントがしたいと思っていたわけじゃないんです。でも、実際に優秀な若手を目の前にすると、自分が苦労した道をそのまま歩ませるのはちょっとな、と思うんです。

例えば、本質的じゃないところにこだわっている若手を見た時とかですかね。社会人経験が浅い人は、それまでの上司が言っていたことが正しいと思いがちじゃないですか。でも、その上司が言っていたことが、個人的なこだわりで、実際は大事じゃないこともある。本質的なことはこっちだから、もっと本質的なものに目を向ける方がいいよと教えるとかですね。あと、自分も昔はトリッキーなものを使っていたこともありますが、今は、シンプルなのが一番いい、と思うようになりました。そういう経験も伝えた方がいいかなとか。

松坂: ただ、トリッキーなものを経験させてあげることも大事だったりするから、後悔する経験を取り除くのはそれはそれで悩みますよね。

@neko: そうですね。その辺のバランスは僕も悩みます。

野本: リーダーをやらなくちゃいけないかに関しては、環境が許容してくれるかという問題もあると思いますね。バリバリコーディングしたいならそういう場所を見つける努力は必要かもしれないですね。

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成果として通用するのはせいぜい直近5年

松坂: 確かにそうですよね。ちなみに、歳とともに年収は上がりますか。

増井: 環境次第じゃないですかね。会社の中で年収が上がるかどうかは制度の問題なので、本人の年齢や能力の問題とリンクするとは限らない。昇給制度の有無や、会社の中の相対評価でしかないですから。

そして重要なのは、年収を上げたいかどうかだと思います。年収を上げたいのか、上げるならどこまで上げたいのか、それとも年収にこだわらず好きなことがやりたいのか。

年収を上げたい場合は、リサーチが必要です。そして、覚えたいことより、年収の高いことを覚えるべき。例えば、今ならPythonやScalaは年収が高くなりやすい言語ですよね。そういうのを自分で調べて、それで勝負できるくらいまで磨くべきです。

@neko: 僕は、需要がありそうなところを狙って勉強するというのはありますが、自分の年収にはあまりこだわっていません。とはいえ、働き方は人それぞれだとは思いますし、年収アップだけを考えて技術にこだわりがなさすぎるのも、エンジニアとしては生きづらいのかなとも思いますね。

増井: エンジニアって、年収へのこだわりより技術や自分の持っているものへのこだわりが強い人が多いので、年収とのバランスは難しいところですよね。

そして、年収が上がるタイミングって転職の時なので、そのときアピールできるものがあるかがポイントですね。例えばコーチングの能力ってレジュメじゃわからないんですよ。正直、レジュメを見ながら、マネジメントした人数が50人でも1000人でもどっちでもいいよ、と思ってしまう。大事なのはそこじゃないんです。コーチング・マネジメントをするにあたって何をしたか、ストーリーを語れるかどうか、です。「部下が何人いました。マネジメントをしていました。」としか書いていないレジュメではダメです。

松坂: だからと言って、「こう書いたらいいよ」というのがあるわけでもないんですよね。自分の考えや実績を、自分の言葉で表せないと難しいですね。

@neko: 僕は、転職ドラフトで自分の年齢書いた上で、自分のレジュメがどう評価されるのかちょっと試してみたいなと思っています。それと、10年後今と同じスキルでは評価されないと思うので、外から見てすごいとわかるものを増やさないとな、と思っています。

増井: 僕は普段、5年以上前のことは話さないようにしているんです。その理由は、成果として通用するのはせいぜい直近5年の話だからです。それを認識しながら、常にアピールできるものを作っていかないとダメだと思いますね。

松坂: そこが、先ほどおっしゃっていた毎年の目標につながるんですね。

増井: そうですね。

松坂: では最後に、若手からよく「将来が不安です」という話を聞くんですが、彼らはどうすればいいと思いますか。

増井: 自分で変えられないことを不安に思っても仕方ないですよ。変えられるものを見定めて、変えられることを必死に頑張るしかないと思いますね。

@neko: 不安に思うならとにかくやることですね。何が当たるかなんてわからないから、とにかくいろいろやってみるといい。

野本: あとは、若い人はどうなりたいか考えるといいと思いますね。ああなりたいと思える人を見つけて、その人の近くで働いてみると学びが多いと思います。

松坂: みなさんそうして頑張ってきて今があると。これからも応援しています。そして現在の問題ってあります?

増井: 頑張ります。まぁ今切実なのは、腰が痛いことですね。

@neko・野本 :同意です(笑)

松坂: 次回はエンジニアにおすすめの接骨院ですかね。


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