3年で4人から40人規模へ。CTO原トリ氏に聞くカミナシのエンジニア採用成功の鍵

2025-09-30 10:00

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工場や宿泊施設、設備保全など、現場業務のDXを実現するプラットフォームを運営するカミナシ。2020年に現在のプロダクトをローンチした後、2024年からマルチプロダクト化を急速に進め、いまでは5つのプロダクトで帳票管理から設備保全、研修、コミュニケーションと幅広い領域のDXをカバーしています。これらのプロダクトの開発・運用を支えるのは、社内に40人近くいるエンジニアの皆さんです。

今回は、採用活動をリードしてきたCTO原さんとEM吉永さんにインタビュー。2022年の原さんジョイン時には社員4人だったエンジニアチームを急成長させてきた歩みとともに、「成果につながる採用活動」の秘訣を伺いました。

株式会社カミナシ
執行役員 CTO 原 トリ(写真左)
ERPパッケージベンダーR&Dチームにてソフトウェアエンジニアとして設計・開発に従事。その後クラウドを前提としたSI+MSP企業での設計・開発・運用業務を経て、2018年Amazon Web Services入社。AWSコンテナサービスプロダクトチームでのサービス改良、および同サービス群を中心とした技術領域における顧客への技術支援や普及活動をリードした。2022年4月 カミナシ入社し、2022年7月 執行役員CTO、2023年4月に取締役CTOに就任。

エンジニアリング本部 CTO室 Engineering HR 吉永 聰志(写真右)
3D CADのデータ変換ソフトウェアの開発チームにてエンジニアとして開発に従事。その後創業フェーズのスタートアップにエンジニアとして参画し、約10年間在籍した。会社の成長とともに、役割をエンジニアリングマネージャーにチェンジ。HR Techの会社における開発組織のマネージャーを経て、2022年12月にカミナシに入社。

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「コードを書く」ではなく「サービスを提供する」エンジニア組織に

――カミナシさんはいまやエンジニアの転職市場でも人気企業の一つです。ここまでエンジニア組織を育ててくるうえで、CTOとして大切にしてきた点を教えてください。

原:スタートアップは常に人手不足ですから、当然人数はどんどん増やさなければいけない一方で、採用は組織のカルチャーを育てる手段でもあります。SaaSの運営企業として、私はエンジニアも単に「コードを書く」のではなく、「サービスを提供する」マインドの強い組織にすることにこだわってきました。ユーザーの声に真摯に向き合い、継続的なプロダクト改善につなげるべく、「開発と運用を同じメンバーが担う」ことを基本としています。

――「カルチャー形成の手段としての採用」を進めるうえで、とくに注力してきた取り組みは?

原:カミナシではもともとエンジニア採用でも技術力だけでなく、当社のバリューに基づいた評価も採り入れてはいましたが、私の入社当初はソフトウェアエンジニア職にとって使いやすいと言える社内評価指標は存在しませんでした。ここを文章に落とし込み、定義したことで、評価の判断基準として議論ができる状態を作れたこと、そういった議論を通して選考担当者が認識を合わせていけるプロセスを持てたことは大きかったですね。

ただ、採用活動に関して、私はそれまで技術課題や面接の評価経験はあっても、スカウトやソーシングにしっかりと携わったことはありませんでした。「候補者側からの自主応募だけに頼る方法だけでは、なかなかスケールしないな……」と課題を感じていたところに、入社してくれたのが吉永です。

――吉永さんは、カミナシ入社前から採用活動のご経験があったのですか?

吉永:私は実はエンジニア採用とは縁が深く、すでに5年ほどの経験がありました。かつ、前職ではダイレクトリクルーティングのサービスを開発していたので、採用活動をいろいろな角度から見てきたところもあります。

原:彼がスカウトやソーシングのボールを持ってくれたおかげで、活動がだいぶ加速しました。その後すぐ社内でマルチプロダクト化を図る方針が決まり、さらに採用をブーストしなければならなくなったので、本当にいいタイミングでした。

――スカウトに関しては、転職ドラフトスカウトも継続的に活用いただいています。カミナシさんはとくに人気の集中する求職者にスカウトされることが多いにも関わらず、高確率で面談承諾を獲得されています。秘訣を教えてください。

吉永:スカウトメッセージの書き方では、「なぜあなたに来てほしいのか」を必ず盛り込むようにしています。「あなたのここに注目しています。うちのチームはこういう課題を抱えていて、あなたならこんな形で解決してくれると期待しています」という部分ですね。ベースとなるテンプレート文も、チームごと、ポジションごとに更新しながら使っています。

ただ、そもそもメッセージが届いた時点で、「開いてみようかな」と思ってもらえるだけの認知度やブランド力がないと、成果にはつながらないのが採用活動の難しいところです。結局、一番レバレッジが効くのはブランディングで、そのためには地道な発信を続けていく以外にないのかなと。

原:吉永さん、僕にも容赦なくメディア取材入れてきますよね(笑)。

吉永:発信は積み重ねですから(笑)。メディアへの露出だけでなく、ブログ更新やイベント登壇も含めて、エンジニア全員で発信の量と質を上げるべく頑張っています。

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採用広報は全員で!コンスタントな発信を促す仕組み

――エンジニアの皆さんからは「発信の大切さは分かっているものの、本業の開発に忙しいなかで継続するのは難しくて……」という声もよく聞きます。カミナシさんがコンスタントに発信できている理由は何でしょう?

原:エンジニアに限らず、社員全員の評価指標に「採用貢献」が入っている点が重要なファクターの一つとなっていると思います。「採用貢献」には面談や面接に関わることだけではなく、会社やプロダクト、技術、カルチャーなどを社外に向けて発信することも含まれます。採用に全社一丸で取り組まなければ、スタートアップはスケールできないという認識は、早くから浸透していました。

僕が入社したころは、1カ月間、全社でブログを書くお祭りみたいなこともやってましたね。期間中は毎日誰かの記事が出るようカレンダーで予定を共有し、書いた本数に応じてカミナシのマスコットキャラクターが描かれた限定グッズがもらえたり。HRやPRが旗振り役になり、全社イベントとしての「ブログ祭り」と称して盛り上がっていました(笑)。

ちなみに、反響の大きい記事を書いた人へのインセンティブはいまでもあります。記事作成に協力した人も含めて、会社の経費でちょっといいご飯を食べに行けるというような仕組みです。

――カミナシさんの場合、エンジニアとして知名度の高い原さんがCTOに就任されたことに注目する人も多そうですが、それだけでなく、全社を挙げて発信活動に取り組んできたことがいまにつながっているのですね。

原:確かに、僕がカミナシにジョインした直後から、メディアやイベントへの僕の露出機会を意図的に作りまくったことで、特に初期の認知度形成を多少ショートカットできた面はあるかもしれません。ただ、そこだけに頼ってしまうと人材が偏るんですよ。僕はAWSを中心としたクラウド界隈で名前を知っていただいていることが多いので、エンジニア全体の人数は順調に増えたとしても、技術領域によっては「まだまだ強化が必要だね」といったことになりかねません。エンジニアリング全体を強くしていくためには、やっぱり全員で地道な発信を続けて、少しずつ認知度を上げていくしかないのかなと。

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社内に、エンジニアの記事発信数やはてなブログのブックマーク数を2022年から自主的に記録して、グラフ化してくれている人がいるのですが、発信数もはてブ数もずっと右肩上がりなんですよ。他部署からも「エンジニアの発信活動すごいね」と言われています。

――何かエンジニアリング部門独自の仕組みがあるのでしょうか?

原:採用に全社で取り組む必要性やその価値を各メンバーが理解してくれているというのはもちろんのこと、記事を出す前の社内レビューがすごく盛り上がるので、たぶんそれも理由の一つかなと思いますね。仲間たちからフィードバックがたくさん付いて、記事のクオリティも高まりますし、シンプルに「勉強になりました」みたいなコメントがもらえるのも、本人にとってはうれしいですよね。

エンジニアは普段から、コードをレビューし合ってブラッシュアップする習慣が身に付いています。ただ、ブログのレビューは、もしかするとコードのレビューより面白いかもしれない(笑)。「あの仕事のとき、〇〇さん、こんなこと調べてたのか」といった驚きがあるから、みんな熱心に読むし、フィードバックにも熱が入るんです。「記事を書けば社内外から反響が得られる、だからまた書きたくなる」という、いいループができていると感じます。

「チームのメンバーはチームで採用」を推進中

――カミナシさんは昨年二つめのプロダクトをローンチされたのに続き、1年ほどのうちに5つまでプロダクトを増やしてこられました。現在のエンジニアのチーム構成は?

原:「開発から運営まで同じチームが担う」方針は変えず、プロダクトごとにチームを分けています。各メンバー、担当のプロダクトや顧客へのサービス提供に強いオーナーシップを発揮してくれています。

SaaSを運営していると、すべてのユーザーのリクエストに応えるのは難しいものですが、それでも一つひとつの声をしっかり受け止め、「いずれは何とかしたい」という思いを持ち続けることが、プロダクト改善の原動力になります。一人ひとりの強いオーナーシップを維持すべく、メンバーもEMも複数プロダクトの兼務は原則として避けてきました。もちろん、これだけ一気にプロダクトが増えると、採用活動は大変なのですが……。

エンジニアリングの人数が一桁だったときから変わらず、今も自律的なチーム運営を重視しており、例えば出社して集まる頻度もチームによってそれぞれ異なります。

――では、採用活動もチームごとに?

吉永:スカウトからカジュアル面談、技術課題、一次面接までは各チームで回しています。以前はスカウトは僕から送ることも多かったですが、よりチーム主導の体制に最近変えました。人気の候補者様は、「うちからスカウトを送りたい!」と取り合いになったりもしています(笑)。

原:自チームで活躍できるのはどんな人材か、一番分かっているのはチームのメンバーですから。自分たちで選んだ人を迎えた方がチームとしても納得感があるでしょうし、受け入れられる側の内定者にとってもチームへの参加のハードルが下がると考えています。

吉永:僕も自分なりのスカウトのやり方は各チームに伝えますが、それぞれが自分たちなりの正解を見つける形がベストだと思っています。

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僕がいま、力を入れているのは、活動の効果分析やベストプラクティスの共有です。毎月のスカウト送信本数、返信率などの数値を可視化したうえで、改善できそうな点を洗い出しています。

原:実は先ほども活動分析の報告を受けていました。「この採用媒体で成果を出すには、いまの数倍の工数をかける必要がありそう。それなら、その工数を他の活動に振り向けた方が効果的では」と、いい議論につながったところです。

――ドキッとするお話です(笑)。転職ドラフトスカウトは2018年からお使いいただいています。活用を継続されている理由をお聞かせください。

吉永:優秀な人材と出会える確率が高いことが一番の理由です。幸い返信率もキープできていますし、内定・入社に至る方もコンスタントに出ています。

転職ドラフトスカウトは、レジュメが充実していますね。私は候補者様の詳細なプロフィールやブログ、登壇実績などを見ながら、「この方はどんな方だろう」とイメージをふくらませるのが好きなんです。面談で聞いてみたいことが自然に湧いてきますし、ときには先方から意外な質問を受けることも面白く、採用活動全般に楽しい気持ちで関われています。レジュメの情報量が多いと、スカウトや後のプロセスに対しても十分な準備ができて助かります。

原: 競争入札型の転職ドラフトスカウトは、転職媒体としての価値の打ち出し方も他媒体とは明確に性質が異なっていると考えています。そして、特性に違いがあるからこそ、他媒体は一切使わないような人でも、転職ドラフトスカウトだけは使うようなケースもあるという期待も持っています。これも転職ドラフトスカウトを継続的に活用させていただいている重要な理由の一つです。

ハイクラス採用の鍵は「既存のポジションにとらわれない」

――激戦が続くエンジニア採用市場のなかでも、とくにハイクラス人材の採用には苦労されている会社が多いと思います。直近、EMやVPのポジションでも入社が決まられているカミナシさんの取り組みについて教えてください。

原:ハイクラス人材の場合、大事なのは、いまあるジョブディスクリプションに当てはまるかどうかではなく、中長期のゴールを共有できるかどうかです。3年後、5年後に会社として目指したい姿や、そのためにこのポジションの候補者に期待していることについて話をして、「そのゴールに向かってどう進むかは、あなたにお任せしたいんです」と。ですから、基本的にカジュアル面談から私が出るようにしています。

吉永:VPクラスはもちろん、EMや一般にスタッフやプリンシパルと言われる技術専門職の場合も、カジュアル面談からトリさん(原さん)に出てもらっています。スケジュール調整は難しくなりますが、出会えるチャンス自体が少ない人材ですから。一つひとつの機会を大切に、お互いの期待値調整がしっかり進むよう、セッティングしています。

原:VPクラスの場合、CROやCEO、COOとの面接も設け、「数年後のカミナシのゲームを変えてくれると思える人材か」を判断してもらうこともありました。入社後に求められるインパクトの範囲が全社レベルになる分、選考時の観点も多角的になります。

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ハイクラス人材の採用は、毎回激戦です。競争率の高い候補者に対して、オファーの受諾期限をあえて短く設定して判断を迫るような会社もあるようですが、僕はあくまでも我々と候補者の双方にとってフェアになるよう、候補者様にじっくり考えて決断していただくことを大切にしています。

それでもとくに「ノンデスクワーカーの才能を解き放つ」という当社のミッションに共感してくださる方には、高確率で選んでいただけている手応えはありますね。現状の空きポジションや現場の課題にとらわれすぎず、より大きなスコープで、双方向の議論を交わしていくことが鍵になると感じています。

――最後に、採用活動で成果を出し続けるために必要なマインドとは、ズバリ何でしょう?

吉永:当たり前のことを愚直にやり切ること、そして自分たちの考える「当たり前」のレベルを高めていくこと。ありきたりな答えですが、これに尽きると思います。採用活動に飛び道具はないというのが私の実感です。

たとえば、候補者様へのレスのスピードを1分1秒でも早くする、スカウトメッセージの内容をしっかり練り上げる、各候補者様に合わせて面談時のトークの段取りを考えておく。そんな小さな積み重ねが、最終的に候補者様の心を動かすのではないでしょうか。

原:いまの話にも通じますが、いかに候補者視点で考えられるかという点はいつも意識しています。

オファー面談でお渡しするオファーレターを書くときも、カミナシ側の思いだけ書き連ねたのでは、心に届くメッセージにはなりづらい気がします。とくに現職で高いバリューを発揮しているハイクラスの候補者様の場合、「この会社で、自分のケイパビリティで、どれだけのバリューを出せるのか?」、そして「これまでのキャリアになかった新たなチャレンジはできるか?」という2点を、内心気にされているケースも多いと感じます。こうした心の声に応え、かつワクワク感を持ってもらうにはどんなメッセージがベストなのか。このオファーレターの準備にしっかりと時間を割き、考えうる中での最良のオファー面談とするために、毎回頑張っています。

もう一つ、とくにハイクラス人材の採用では、転職市場に閉じずにアンテナを立てておくことを大事だと考えています。注目度の高い方には企業やかつての同僚から直接声がかかるケースが多く、転職市場に出てくるのを待っているだけでは出遅れてしまう感覚があります。僕個人としてはまだまだこういった活動が得意と自負できるようなレベルにはないのですが、いつか一緒に働いてみたいと思う方に話しかけてみる、ご飯に行ってざっくばらんに話してみる、といったような活動も目下頑張っています。

――お二人の経験に基づいたお話、採用に関わる多くの方の参考になることと思います。本日はありがとうございました。

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(取材・文/中名生 明子)

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