みなさま、大変長らくお待たせいたしました!
2020年3月以来、久しぶりの 影響を受けた本ランキング の発表です。
転職ドラフトの参加人数が毎月開催後の過去最多を記録した2021年上半期。レジュメ審査を突破したエンジニアの方々は、どんな本を読み、参考にしているのか。
さっそくチェックしていきましょう。
【2021年上半期】ITエンジニアが影響を受けた本ランキング
調査対象
対象者:2021年1月回〜2021年6月回の転職ドラフト参加者のうち、「エンジニアとして影響を受けた本」の項目に記載があった840名のITエンジニア
ランキング内容:得票数10票以上の本を抜粋
順位 | 名称 | 得票数 |
---|---|---|
1 | リーダブルコード - より良いコードを書くためのシンプルで実践的なテクニック(オライリー・ジャパン) | 277 |
2 | エリック・エヴァンスのドメイン駆動設計(翔泳社) | 70 |
3 | Clean Architecture - 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計(アスキードワンゴ) | 63 |
4 | エンジニアリング組織論への招待 - 不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング(技術評論社) | 51 |
5 | Team Geek - Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのか(オライリー・ジャパン) | 45 |
6 | アジャイルサムライ - 達人開発者への道(オーム社) | 43 |
7 | SOFT SKILLS - ソフトウェア開発者の人生マニュアル(日経BP) | 43 |
8 | ハッカーと画家 - コンピュータ時代の創造者たち(オーム社) | 42 |
9 | UNIXという考え方 その設計思想と哲学(オーム社) | 36 |
10 | 達人プログラマー 職人から名匠への道(オーム社) | 35 |
11 | Webを支える技術 HTTP、URI、HTML、そしてREST(技術評論社) | 30 |
12 | リファクタリング - 既存のコードを安全に改善する(オーム社) | 29 |
13 | テスト駆動開発(オーム社) | 25 |
13 | イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」(英治出版) | 25 |
15 | カイゼンジャーニー - たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで(翔泳社) | 24 |
15 | 情熱プログラマ - ソフトウェア開発者の幸せな生き方(オーム社) | 24 |
17 | プリンシプル オブ プログラミング - 3年目までに身につけたい一生役立つ101の原理原則(秀和システム) | 22 |
18 | オブジェクト指向設計実践ガイド~Rubyでわかる 進化しつづける柔軟なアプリケーションの育て方(技術評論社) | 19 |
19 | プログラマが知るべき97のこと(オライリー・ジャパン) | 16 |
20 | コーディングを支える技術 ――成り立ちから学ぶプログラミング作法(技術評論社) | 12 |
20 | Clean Coder プロフェッショナルプログラマへの道(アスキードワンゴ) | 12 |
20 | レガシーコードからの脱却 ――ソフトウェアの寿命を延ばし価値を高める9つのプラクティス(オライリー・ジャパン) | 12 |
23 | ピープルウエア(日経BP) | 10 |
ランキングからこれまで未紹介の注目本を紹介
ご覧のとおり、今回も上位には定番の本が並びます。
リーダブルコードはそろそろ殿堂入りでもいい気がしますね。
ここからは、2020年までに公開した転職ドラフトのランキング記事で触れていない本や初ラインクインの本を中心に、いくつかピックアップしていきます!
『UNIXという考え方 その設計思想と哲学』(オーム社)
『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』(英治出版)
『オブジェクト指向設計実践ガイド~Rubyでわかる 進化しつづける柔軟なアプリケーションの育て方』(技術評論社)
『プログラマが知るべき97のこと』(オライリー・ジャパン)
UNIXという考え方 その設計思想と哲学
現存する最古のOSの一つでありながら、安定性の高さや動作の軽さから、いまなお第一線で利用されているUNIX。
この本ではUNIXの技術面ではなく、背景にある思想や哲学が9つの定理として紹介されています。
選んだエンジニアからの
「どの思想も背景を知ると非常に大切なことで、今もなお色褪せない思想なため、今後のエンジニア人生においても役立つであろう思想だと思った。」
といった意見もあるように、UNIXの背景を知ることで、UNIXらしさを大切にしながら、プログラムを作りたい。
そんな方にオススメの一冊といえます。
Mike Gancarz(芳尾 桂 監訳)『UNIXという考え方 その設計思想と哲学』オーム社、2001年
イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」
ロジカルシンキング・問題解決の決定版と称され、出版から10年以上たった現在も多くの方に読まれている『イシューからはじめよ』。
この本でいうところのイシューとは「今この瞬間に解決すべき問題」であり、「100個の問題のうちイシューは2〜3個しかない」と著者の安宅 和人氏は語っています。
大切なのは目の前の問題がイシューであるかを見極め、イシューの解決の質を高めてくこと。
この本ではその方法が語られています。
本を読んだエンジニアの方からは、 「何を解決したら大きな成果が出せるかということをエンジニアとしても考えさせられました。」 という感想も。
エンジニア向けの専門書ではないものの、AI×データ時代の必携書と言われるなど、エンジニアの方々も手に取る機会が増えているようです。
安宅和人『イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」』英治出版、2010年
オブジェクト指向設計実践ガイド~Rubyでわかる 進化しつづける柔軟なアプリケーションの育て方
2016年に発売されたこの本は、オブジェクト指向を用いたクラス設計からその基本概念、実行のための手法まで幅広く紹介しています。
この本の題材は,オブジェクト指向ソフトウェアの設計です。アカデミックな重い本ではなく,1人のプログラマーが書いた,コードをいかに書くかという話です。_Sandi Metz(サンディ・メッツ)
著者の言葉通り、文量はそれほど重くないものの的確に知るべきポイントをおさえていることから、オブジェクト指向を理解しようと考える初心者や中堅層にオススメの一冊と言われています。
実際に読んだ方からも、 「Rubyでオブジェクト指向を学ぶのにはベストな一冊だと思っています。」 といった感想が寄せられるなど、その内容は多くのエンジニアから支持されています。
日本語版は訳の関係で少々読みにくい部分はあるようなのでご留意ください。
Sandi Metz(髙山 泰基 訳)『オブジェクト指向設計実践ガイド~Rubyでわかる 進化しつづける柔軟なアプリケーションの育て方』技術評論社、2016年
プログラマが知るべき97のこと
世界中で活躍するプログラマのエッセイを97本まとめた、こちらの本。
驚くような内容は少ないものの、プログラマとして活躍する上で忘れたくない考え方や、テクニック・勉強法などが紹介されています。
経験豊富なプログラマたちが自身の体験を踏まえて書いたエッセイは、ジュニア層には新たな気付きを、ミドル・シニア層には自分を振り返るきっかけを与えてくれるという意見も見られました。
実は、以下のサイトですべて無料で読むことができるんです!
wikisource:プログラマが知るべき97のこと
一つ一つのエッセイは短いため、一気に読むというよりはスキマ時間に1日1本ずつ読んでみてはいかがでしょうか。
Kevlin Henney 編、和田 卓人 監修(夏目 大 訳)『プログラマが知るべき97のこと』オライリー・ジャパン、2010年
優秀なITエンジニアが、いま欲しい本とは?
ここまでは、審査を通過したエンジニアの方々が影響を受けた本について紹介してきましたが、転職ドラフトでは「欲しい」という視点でも本のデータを蓄積しています。
紹介していただいたお友達が無事に審査を通過した際に、お友達紹介キャンペーンでお好きなO’REILLY JAPANの本(税込5500円以内)を1冊プレゼントしているのです。
ここからは、プレゼント希望が多かった本から転職ドラフトの運営にてピックアップした本をご紹介いたします。
調査対象
対象:2021年1月〜6月にお友達紹介キャンペーンでプレゼントした本を集計
選定方法:リクエストが複数あった本
『SQLアンチパターン』(オライリー・ジャパン)
『Real World HTTP 第2版 ―歴史とコードに学ぶインターネットとウェブ技術』(オライリー・ジャパン)
『Design It! ――プログラマーのためのアーキテクティング入門』(オライリー・ジャパン)
SQLアンチパターン
タイトルの通り、データベース関連のアンチパターンを紹介しているこちらの本。
データベースなどをある程度は触ったことがある状態で読むと、より理解が深まり、 やってはいけないこと を避けやすくなるでしょう。
あるエンジニアの方からは 「アンチパターンが言語化(名称化)されているので、チーム内で共通認識を進めやすく重宝している。」 という意見もあり、なるほどそういった使い方もできるのかと思いました。
後々利用する人が気持ちよく使える綺麗なデータベースを設計するために、一度は手に取りたい良書です。
Bill Karwin(和田 卓人、和田 省二 監訳、児島 修 訳)『SQLアンチパターン』オライリー・ジャパン、2013年
Real World HTTP 第2版 ―歴史とコードに学ぶインターネットとウェブ技術
2020年に出版されたばかりの『Real World HTTP 第2版』。
初版の発行後に起きたHTTP/3の規格化などに加え、DNSやCDNなど知っておきたい周辺技術などの情報も追加されました。
常に進化を続けるHTTPやWEB技術について、その軌跡を辿ったり、技術に関する知識を整理したり、新しい技術を知る良い機会となるのではないでしょうか。
渋川 よしき『Real World HTTP 第2版 ―歴史とコードに学ぶインターネットとウェブ技術』オライリー・ジャパン、2020年
Design It! ――プログラマーのためのアーキテクティング入門
設計スキルの成長を目指す方に向けた入門書です。
2019年発売と比較的新しいため、まだ目にしたことがない方もいらっしゃるかもしれません。
本書は大きく分けて3部に分かれており、概観的な部分から段階を踏んでアーキテクトとしての実践的な手法やチームとしてのアーキテクト力の高め方といった部分へ深堀りしていくので、入門書としてはかなり読みやすいようです。
読んだ方の評価としてよく見られたのが、 アクティビティ(ワークショップ)の部分が非常に充実している という点でした。
アーキテクティングでの課題を解決するためのアクティビティが豊富に紹介されているので、あなたの周りでも活用できるものが見つかるかもしれません。
Michael Keeling(島田 浩二 訳)『Design It! ――プログラマーのためのアーキテクティング入門』オライリー・ジャパン、2019年
まとめ
今回の影響を受けた本ランキングでは、2位に『Clean Architecture』がランクインしており、それに紐づいたドメイン駆動開発の本も順位をあげていました。
転職ドラフトのレジュメでも、アプリケーション設計時にDDDを採用したプロジェクトでの経験が書かれているケースが増えています。
そういったプロジェクトを進める際の学習で『Clean Architecture』が持ち出されているのかもしれません。
定番が並ぶ中にも、トレンドを感じられるランキングでした。
エンジニアとしてのより一層の成長につながる一冊と出会うきっかけになれば幸いです。