ブロックチェーン技術を用いた個人の資金調達プラットフォームとして、パイオニア的存在のVALU。2017年5月のβ版ローンチ以降、様々な機能を実装し、着実にユーザーを増やしてきました。
2019年1月には5億円の資金調達を実施、次のサービスとして『Fundish』を発表するなど、転換期を迎えている同社。エンジニア採用で重視しているのは、「技術に固執しすぎないこと。拡大期にある組織において、自主的に動いて自走できること」でした。
今回は、現在のサービスの状況や、開発体制、用いている技術から、転職ドラフトを利用してみた感想までお伺いしました。
開発部 VPoE 菊池 琢弥さん
人事部 アシスタントディレクター 笛木 三紗子さん
UX・UIの改善でより魅力的なサービスに
ー今年に入ってから、様々な新規機能を実装しているそうですね。サービスがどのように変化してきているか教えていただけますか。
菊池: まず、3月に『VALU Stories』という、静止画または15秒以内の動画や画像をシェアできる機能をモバイルアプリ限定で実装しました。これはいわゆるインスタのストーリーと同様で、24時間で他のユーザーから閲覧できなくなります。
それから、5月末には『イベント・チケット機能』をリリースしました。これはVALUユーザーであれば簡単にイベントを起案し、チケットを販売できる機能です。この機能を利用して、例えば堀江貴文さんは『ホリエモン祭 in Paris』のチケットを発売していますし、7月にはVALUのオフィスにユーザーを招いて、私たち社員がもてなす『ごはん会』を企画したり、それからCEOの小川晃平はCEOレンタル企画『事業の相談にのります』というイベントを行っています。
2つの機能とも、VALU上でのトークンである「VA」の実利価値を提供しよう、というコンセプトで実装しました。いわば自身のファンクラブであるVALUERの皆さんに対して、メリットを提供しやすくしようということです。
大きな機能実装は一段落しましたので、現在は、新機能実装ではなく、ユーザビリティやUXの改善をコツコツ行い、サービス自体をもっとブラッシュアップしよう、ということで開発が進行中です。その目的は、新規ユーザーが入ってきてくれた時に、ワクワクしてサービスにとどまりたくなる魅力的なサービスにしたいと感じているからです。
ーVALUでは、どのような技術で開発しているのですか。
菊池: VALUといえば、ブロックチェーンの技術をごりごり使っているのだろうと思われがちですが、実はブロックチェーンの技術を用いているのはBTCの送金といった、本当に必要なところだけです。
もちろんエンジニアとしては、新しい技術を使えれば使えるほど楽しいのですが、大切にすべきはユーザーが使っていて楽しいとか、価値あるプロダクトにするということです。だから個人的には技術に偏りすぎるのは危ないなと思っています。
あくまでも、ユーザーのためになるか、より良いユーザー体験を提供できるかというところにフォーカスして技術選定しています。
VALUサービス自体はごく一般的なWebアプリケーションで、実際に使っているのはWebサイトのフロントエンドがJavaScript、フレームワークはReact・Reduxです。サーバーサイドに関してはPHPを使い、フレームワークはLaravelで開発しています。iOSはSwift、AndroidはKotlinですね。
ビットコインの鍵管理については、しっかり管理をしないと大変なことになりますので、BTCはコールドウォレットに大量に置いておき、必要な一部分だけホットウォレットに置いておくという安全性を重視したつくりにしています。
マネージャーのいらないエンジニア主体の組織づくりを
ー現在は、どのような開発体制を取っていますか。
菊池: エンジニアは現在8人です。サーバーサイド担当がCTO含めて2人、iOSは2人、Androidが2人、それからWebフロントエンドは転職ドラフトでご縁があった業務委託の方を含めて2人という体制になっています。
それに加えて、プロダクトマネージャーが1人、デザイナーが2人とWebフロントエンドやバックエンドを修行中の若手メンバーが2人、合計10人超のメンバーで開発しています。
開発体制としてはスクラム開発を採用しています。チームで毎週「今週はこれをやりましょう」とプランニングし、メンバーみんなで合意して、週の終わりに振り返りをするというシンプルなやり方です。とはいえ、もっと良くしていけるという実感があるので、これから入社するメンバーと一緒に試行錯誤していけたら良いですね。
ーVPoEという立場で、組織づくりをするうえでどのような工夫をしていますか。
菊池: マネジメントがいらないチームを目指しています。タスクも改善案も、それぞれのエンジニアが自分で起案してくれるようなチームが理想ですね。
何をやるかをみんなで雑多に話し合って、「じゃあ、これをやろう」「あれをやろう」と自然に、民主的にやることが決まっていき、それを足並みそろえて進めていくという感じです。「マネジメント3.0」じゃないですけど、マネージャーのいらないチームにしたいですね。
ーそうすると、エンジニアへの裁量も大きく、働きやすい環境が必要ですね。
菊池: そうですね。今でも、技術選定や使いたいツールの選定は基本的にエンジニアの裁量にお任せしています。無料のツールならすぐトライアルしますし、有料のツールでも必要であればサクッと決裁することができます。
機材もちゃんとスペックの高いものをそろえてくれます。入社時にMacBookProのスペックをリクエストしたらカスタマイズしてくれたのがきっかけで、いまは入社時にこちらから要望を聞いたり相談した上で決めています。
椅子とモニタは、オフィス移転のタイミングで開発チームのリクエストを聞いてもらって全てエルゴヒューマンチェアと4Kモニタになりました。それまでは関連会社に間借りをしていたので、このタイミングでVALUの開発環境を整えることになりました。
笛木: やっぱりエンジニアにとって、開発環境は何より大切なものですから。内定承諾書をいただくタイミングで、まずはご希望のPCのカラーやキーボード、スペックを伺い、開発チームと相談しながらカスタマイズをして満足いただける環境作りに努めています。
働き方は、フレックスタイム制度を導入しまして、12時〜16時がコアタイムとなります。ただサービスの特性上、セキュリティが重要なので、リモートワークは原則禁止としています。
菊池: 今のところ組織として土壌が整っていないことと、暗号通貨を扱っていると、やはりどうしても社外で作業するということはリスク要因となるので。
エンジニアと総力戦で“アクションを仕掛けに”いく
ー2018年11月から転職ドラフトを使っていらっしゃいますが、実際利用してみてどんな感想をお持ちになりましたか。
笛木: それまでは他媒体や紹介会社などを利用していたのですが、ありがたいことに「待ち」の状態でもコンスタントに紹介や応募はありました。しかし、確実に欲しいと思った方をピンポイントで狙えるように、「アクションを仕掛けて」積極的に取りに行かなきゃいけない段階に来ているなと思っていたところだったんです。転職ドラフトを利用させていただいた結果、「攻めの採用」が実現できたのは良かったなと思っています。
スキル面ではピンポイントな人がいらっしゃることがわかったので、さらにその方のカルチャーが当社に合うかどうかを重視しています。
菊池: スキルはちょっとずれていたとしても、この人だったらきっとキャッチアップできるなという人には声をかけるようにしています。
笛木: レジュメの内容が充実しているので、お人柄を想像しながらきちんと読み取ることができるのが魅力的ですね。
ー利用するきっかけは何だったのですか。
菊池: 僕がもともとエンジニアとして登録してたんです。それで、利用していると「この会社が、誰にオファーしました」という表示が出るんです。それを見てみると、結構、年収の高いオファーが出ている。これはきっと、スキルの高いエンジニアがたくさんいるんだなぁと思ったんです。それで笛木に「うちが欲しいエンジニアがたくさんいそうな気がするから、使ってみない?」って言いました。
笛木: それを聞いて、すぐ使ってみようと。
ご担当の方に来ていただいて、その日中に「やります!」ってお返事して、翌週にはもう参加してました(笑)。ちょうど転職ドラフトの開催期間中で、まずはとにかく参加したかった。
菊池: もう、僕としては気軽に言っただけなんですけど、あまりにはやかったので逆にびっくりしました(笑)。
ー採用の成果はいかがですか?
笛木: 今は、業務委託として1名、それから正社員でもう1名の入社が決まりました!
最初に参加した転職ドラフトでは、30人近くにものすごい勢いで声をかけさせていただいて、9%の面談承諾率だったと思います。でも直近で参加した第19回は、13人にお送りして45%の面談承諾率。6~7人に会うことができました。
これだけの人に会えるし本当に採用できるんだと実感できたのは大きな手応えでした。
菊池: 面接する側としては、転職ドラフトでスカウトした方にお会いするのがとにかく楽しくて(笑)。皆さんとても技術力が高く、尊敬できる方たちばかりで、採用に結びつかなかったとしても、ただただエンジニアとして仲間ができたとか、仲良くなりたい人に会えて楽しいとか、そういう感覚です。
実際に、転職ドラフトでスカウトした方と一緒にシニアエンジニアのイベントに遊びに行ったり、そこから何回か飲みに行って意気投合したりと……自分の友だちも増えました(笑)。
ー転職ドラフトを利用する上で、どんなことに気をつけ、工夫されていますか?
笛木: 私は技術のことが完全に読み取れるわけではないので、レジュメを見て誰にオファーするかも、どんな内容でスカウト文を送るかも、エンジニアの手を借りることになってしまいます。
最初にお話を聞いた時は、エンジニアの通常業務に支障をきたしてしまうのでは、という心配がありました。
確かに最初のうちは右往左往しましたが、2回目の参加となる今回は、開発と同じようにきっちりスケジュールを引いて、できるだけエンジニアの手間をかけないようにスカウト文を作成する時も工夫しました。
菊池: 転職ドラフトは特に、いつからいつまで開催されるという期間が決まっているので、現場でレジュメをスクリーニングしたりスカウト文を考えたりする側も、「この期間だけは、転職ドラフトをがんばろう」という風に、プランが立てられるのがいいですね。
笛木: 今は人事の私がレジュメの第一段階のスクリーニングと、スケジュール管理を担当して、転職ドラフト前には6名のエンジニアの予定を押さえて一緒に取り組んでいます。中でもCTOとVPoEの菊池にはコアメンバーとしてレジュメを読み込んでもらって、スカウト文を作成してもらうところまでやってもらっています。他のメンバーにはレジュメを見た感想をかいてもらったり、一緒に働きたいか考えてもらったりもしていて、とにかく総力戦で臨んでいます。
チームで足りないものを見つけ、自分で拾える人に出会いたい
ーこれからの採用計画についてお聞きしたいのですが、どんなエンジニアを、いつまでに・何人位採用したいとお考えですか。
笛木: 現在、正社員が19名でして、1年以内に30名、1年半後には50名へと拡大したいと考えています。
菊池: もう、プロダクトマネージャーからフロントエンド、バックエンド、モバイルとあらゆるポジションのエンジニア、それからデザイナーまで求めているのですが、中でもなかなか出会えないのが、React・Reduxに精通したフロントエンドエンジニアですね。
ただReactで開発できます、というだけではなくて、リードエンジニアのようなポジションで、チームを引っ張っていってくれる立場の人が本当に欲しくて。求めるレベルが高すぎるのかも知れませんが、そうはいってもミスマッチな人を採用しても、互いのために良くないですので。
組織としてまだ拡大途上ですし、自律的な組織にしていきたいとも考えているので、チームに足りないものを自分で見つけて、気付いて「もうしょうがないなぁ、自分がやるわ」って、自主的に拾ってくれる人に来て欲しいと思っています。
開発スキルももちろんですが、そういう風に気付いて、自走できるちょっと世話焼きみたいな人に来てほしいですね。
ミスマッチになってしまうのが「ブロックチェーンを絶対にやりたいんです!」という方。そもそもVALUは、意外とブロックチェーンをヘビーユースしていないという実情もあって、ブロックチェーンのような技術に関心が高いことは大事なのですが、固執しすぎない人がいいですね。
もちろんブロックチェーンも、技術も開発も大好きであって欲しいのですが、今我々が求めている方は、先ほども言ったようにユーザーのことを考えられる人、このコード一行がどう会社の収益に貢献できるのか考えられる人がいいですね。
自分の「技術が好きだ」という気持ちと、「サービスとしてこうすべき」という部分にきちんと線引きができて、割り切れる人を採用したいと考えています。
Webアプリケーションの方はファーストリリースからずっとつくってきたものなので、必ずしも綺麗なコードで書かれているわけではありません。コード自体に負債はあるのですが、その負債を前向きに受け入れつつ改善してくれるエンジニア、建設的にアイデアを出しながらスピード感を持って解決してくれるエンジニアに来てほしいですね。
評価の基準を変え、お金の流れを変え、フェアな世界をつくる
ー最後に、御社の今後の展望について教えてください。
菊池: まずは間もなく、『Fundish』という新サービスがローンチされます。以前から「VALU for X」と位置づけているVALUの兄弟分のようなサービスです。そのXのうちの一つが、「EATS」です。今度は、個人を応援するのではなく、開業時の資金調達に難題を抱える飲食店を応援しようという考えのもと企画しています。日本円で会員権を購入するという立て付けにしてあるので応援しやすいですし、仮想通貨に詳しくないユーザーも購入しやすいはずです。また、プラットフォーム上で継続的に会員権の売買が可能となるため、既存のクラウドファンディングとも差別化され、新しいユーザー体験を提供できるのではないかと思います。
小川がご飯を食べるのが好きで、VALUを始める前から温めていた構想でもあります。
それから、VALUそのものもBTCからJPYへ切り替えるかどうかという検討も続けていきます。
いずれにしても、僕たちはミッションとして掲げている通り、「評価の基準を変え、お金の流れを変え、フェアな世界をつくる」ことを目指します。今の資本主義では、株式会社という形式にするしか資金調達の手段がありませんでした。それは、社会的なハードルが大きい。そこに思い悩んでいる個人や店舗などに、資金調達をする新しい手段をこれからも提供し続けていきたいと考えています。
(取材・文/石川 香苗子)