ユーザー数260万人以上を誇る学習管理サービス『Studyplus』を提供しているスタディプラス株式会社。
日本最大の学習プラットフォームを保有する同社が実現しようとしている世界と、それを支えるエンジニア像について、CTOの齊藤氏、転職ドラフト経由でスタディプラスに入社した松田氏、満足氏が語った。
インタビュイー(左から)
松田 熱 氏:スタディプラス株式会社 For School事業部 エンジニア
齊藤 秀治 氏:スタディプラス株式会社 CTO/開発部 部長
満足 亮 氏:スタディプラス株式会社 開発部 web・サーバーチーム エンジニア
いまだ共通認識のないEdTech。その現在地とは?
ー実は私も韓国語の勉強に『Studyplus』を使っています(笑)。メインターゲットではないのですが。
齊藤: いえいえ、ありがとうございます(笑)。確かに、『Studyplus』のメインターゲットは大学を受験する高校生ですが、一方で「学ぶ喜びをすべての人へ」というミッションのもと、学習のモチベーションや学習効率をあげるためのサービスなので、受験生以外の方に使ってもらえるのも大歓迎です!
―安心しました!先日EdTechのカオスマップ(こちら)を出されていましたが、EdTechとEラーニングはどう違うんですか?
齊藤: 違いというよりは、Eラーニングという言葉が、X-Techなどのキーワードの流れに乗って、「EdTech」という言葉に変化してきました。
あえて違いを定義するなら、Eラーニングはアナログのコンテンツをデジタル化して提供するなど、提供者が主体となるサービスが多かったのですが、EdTechはインターネットを介して教育を安価に提供したり、学習の管理をしたりするなど、学習者主体のサービスといえるかもしれません。
―EdTechの中でも違いはあるのですか?
齊藤: Edtechは、大きくふたつのタイプのサービスに分けることができます。ひとつは、『Studyplus』や、『Classi』『Edmodo』のような学習状況を管理できるLMS(ラーニングマネジメントシステム)とよばれるサービスです。学習を継続するために、学習状況を管理し、モチベーションをあげる役割を担っています。
もうひとつは、『スタディサプリ』のような、コンテンツ自体を提供するサービスです。アナログのコンテンツをただデジタル化するといった時代は終わり、コンテンツはリッチな動画へと変わってきました。エンタメの世界で一般的だったことが教育分野にも広がってきているんです。
―なるほど、EdTechは今後どのように変化していくのでしょう?
齊藤: EdTechはインフラ面がまだまだ弱いと思います。たとえば、授業にiPadを導入しようとした高校が、インフラ面の整備ができていないために、うまく活用できなかったという事例もあります。
しかし、国もこうした面に目を向けはじめているので、今後インフラの整備は進んでいくと思いますし、そういった流れの中で、EdTechはひとつの教育の現場として確立していくと考えています。
教育の世界における「七五三」。スタディプラスが目指す世界とは?
―スタディプラスが目指している世界はどんな世界ですか?
齊藤: 教育の世界に「七五三」という言葉があるのですが、ご存知ですか?これは学校の授業を理解している学生の割合なんですが、小学生で7割、中学生で5割、高校生では3割と言われているんです。
―高校生だと3割の学生しか授業を理解していないんですね。
齊藤: そうなんです。なにかを学ぶことは本来楽しいことであるはずですが、現代の教育では受験戦争や詰め込み教育があり、勉強を苦痛に感じる学生が少なくありません。
しかし、途中で勉強についていけなくなった学生がいても、その人に合った教育を提供できれば学ぶ楽しさを思い出してもらえると思うんです。
学生が学ぶことを楽しめれば、主体的に学習するようになります。結果として学習効率も上がり、将来の選択肢が広がる、そんな世界を実現していきたいです。
―今後、どうやってその世界を実現させるのですか?
齊藤: 今まで通り、勉強のモチベーション管理をするサービスであることは変わりません。その上で、コンテンツ領域も手がけていきたいですね。
というのも、スタディプラスは学習記録や合格した学校など大量のデータを保有しているので、データをうまく活用することで、効果的な勉強方法の提案ができるからなんです。
さらに、データをサードパーティーに提供することで、勉強に関するプラットフォームになっていけるといいなと思っています。
「勉強してないよ」と言い合う文化は今も昔も変わらない。
―ユーザーデータで興味深いものは、ありましたか?
満足: 高校生のユーザーが多いので、夏休みはちゃんと勉強するんだなぁと改めて思いました。
齊藤: 夏休みの後半になると、すごく勉強し始める傾向がありますね。逆に春休みは勉強しないんだということもわかりました。あと、急にユーザーが全然アプリを使ってくれない日があって、「サービスが落ちているんじゃないか」と心配して調べてみると、実は大手予備校の模擬試験の日だったこともありました。
ユーザーによって使い方にも違いがありますね。実際の友人同士でフォローし合っている場合もある一方で、テスト前によくある「全然勉強していないよ」と言い合う心理が働いて、身元を明かさずに使いたいというユーザーも多いです。「面がわれたので、退会したいです」という方もいたりしました。複雑な心理のようで、リアルな友達には「勉強してないよ」と言いたいけど、勉強を頑張っていることを誰かに知って褒めてほしいという気持ちもあるんですよね。
―テスト前に「全然勉強していないよ」と言い合う文化は今も変わらないんですね!そういったユーザー心理はどのようにリサーチしているんですか?
齊藤: ユーザーインタビューやアンケートを実施しています。ユーザー層が若いので、僕たちだけの考えでサービスをつくっていくと、どうしてもユーザーの心理とズレが出てきてしまうんですよね。
入社前に現状の課題をありのまま伝える。スタディプラス流の誠意
―ここからは転職ドラフト経由で入社されたお二人にお話を聞きたいと思います。満足さんが、ジョインした理由を教えてください。
満足: 齊藤さんからのメッセージを読んだ時に、「僕を一番必要としているのはこの会社だ」と感じたからです。
―どんなメッセージだったんですか?
齊藤: 満足にメッセージを出したとき、弊社にはインフラまわりを専任で任せられるエンジニアがいない状態で、5年前に構築したインフラをそのまま使い続けている状況でした。その現状をありのままメッセージに書きました。
―社外の人に技術的課題を伝えることに抵抗感はありませんでしたか?
齊藤: 入社してから現状を知るより、先にありのままを伝えておくことが誠意ある対応だと思っています。入社してから「イメージと違った」となってしまうと、お互いに不幸だと思いますし。
松田: たしかに、僕の時にも「技術的負債はあるけど、遺跡の発掘ができるよ」と言ってましたね。
齊藤: そうだったね。
満足: 面接も一風変わっていると思いました。ほかの企業は「このチームに配属するから仕事をしてください」というスタンスなのに対して、スタディプラスは「とにかく全部任せるから、この課題をどうにかしてください」という感じでした。でも、そのほうが、裁量があって面白そうだなと思ったんです。
―「すべて任せるからどうにかしてください」と言われていた技術課題はどうでしたか?
満足: 入社してAWSを見た時は、「なんだ、こんなAWS見たことないぞ!?」と思いました。サービスをリリースした5年前から構成がほとんど変えずに、ひたすらお金をかけ続けていたので、サービス規模から想像する費用の倍近くを支払っている状況でした。その後、ゼロから構成の見直しをかけて、今ではあるべき姿に落ち着いてコストダウンできました。
スタディプラスのエンジニアにとって技術は手段。目的はサービスの先にある新しい教育の仕組みづくり
―松田さんがスタディプラスにジョインした決め手はなんでしたか?
松田: 技術に対する考え方と、技術を使って実現したい世界に共感したからです。
―どういうことでしょうか?
松田: 個人的には、技術は手段であって目的ではないと思っているんです。目的はそのさらに先にあると思っています。達成したいことがあって、その実現のために技術があって、エンジニアがいると思うんです。面談を通じて、スタディプラスのエンジニアは僕と同じスタンスであるということがわかりました。
また、技術を使って実現したい世界についても、強く共感して入社を決めました。実現したい世界については、スタディプラスが多様な人の学習をサポートできるプラットフォームになることができれば、より多くの人が自分の目標に対してポジティブに向き合えるというものでして、そこに共感しました。
齊藤: スタディプラスには自分で課題を発見できて、サービスをよくするために自分は何をすべきかを考えられるエンジニアが多くいます。先ほど松田の話にもありましたが、技術は目的を達成するための手段だという考えは根付いていますね。
満足: スタディプラスはエンジニアもサービスを良くしていく視点を持っていますし、もっと言えば教育を良くするにはどうしたらいいかまで考えながら働いています。
齊藤: 技術はもちろんですが、二人のようにスタディプラスの考え方やミッション・ビジョンに共感いただける方と一緒に働きたいですね。
最初の面談は、基本的に僕がお会いしています。スタディプラスのことを知りたい、ただただ僕と話してみたい…理由は問いませんので、まずはお気軽にお越しください!
(文:池田 小花)