エンジニア出身で、現在は人事を担当する“ジンジニア”の佐藤氏は、転職ドラフトを使ってみて、そのサービスの特異性に驚いたのだという。そんな同社は、転職ドラフトで無事採用を成功させている。
ということで今回は、使ったからわかる転職ドラフトの特色を、転職ドラフトのエンジニアであるマコトと佐藤氏がディスカッション。サービスにこめられた思想から、エンジニア採用の本質の話まで、エンジニア同士だから言える、「いい採用」論が繰り広げられた。
Fringe81株式会社
佐藤拓人(さとう・たくと)
1986年生まれ。秋田県出身。北海道大学卒。ウェブ広告代理店の営業を経て、14年、Fringe81にエンジニアとして参画。17年から、エンジニア採用にフルコミットし、エンジニア目線を持った“ジンジニア”として活躍中。
株式会社リブセンス
マコト
サーバーサイドエンジニア。2010年リブセンス入社。企画から開発まで幅広く手がける。
転職ドラフトは「スーパーエモーショナルスカウトツール」
—ではまず佐藤さんから転職ドラフトを使ってみての感想を聞かせていただけますか?
佐藤: 一言で言うと、「スーパーエモーショナルスカウトツール」っていう感想ですね。
マコト: 「スーパーエモーショナル」とはどういう意味ですか?笑
佐藤: 弊社の採用でも技術力はもちろん見ています。でも技術力よりも、全く妥協していないと言い切れる程に、人柄重視の採用を行っているんです。ただ、残念ながら他社の採用サービスでは、人柄を見極められる項目は自己PRくらいかなと思っています。実際にはそれだけじゃ人柄なんてわからない。
その点、転職ドラフトのレジュメはエモさ判定ができるような質問がたくさん盛り込まれているので、文面だけでも十分人柄が伝わってくるし、そのエモさに引っかけてこっちもエモいスカウトができる。これは、めちゃくちゃいいサービスだなと思いました。
マコト: ありがとうございます。たぶんそのエモさというのは、つくっている僕がエモいからというのが一番の理由ですね(笑)。
佐藤: どうしてそうしているんですか?
マコト: 会社によって思想は違うし、人によって大切にしたいこともバラバラですよね。転職で大事なのはマッチングだから、その人が今後やりたいことがわからない状態で、「うちに来ない?」って誘うのは本来おかしいと思うんです。だから、「野望」とか何が好きかとか、そういうエモーショナルな質問を意識的に多くつくっています。
佐藤: 性格がわかる項目がすごく多いですよね。弊社の場合、特に重視したのは「野望」ですね。転職の際、入社後何ができるかを重視される方が多いと思うんですけど、弊社の場合「新しい発見をもとに、地球の未来を創る集団」という会社のビジョンに共感できる方を探しています。だから、「野望」を慎重に見ていました。
マコト: 「野望」が書いてあると、他の項目の説得力も上がると思っています。「オープンソースに貢献したい」と書いてあるのに、アウトプットが何もない方よりは、GitHubがすごい方のほうが有言実行であることがよくわかりますから。
また、採用する側にも気持ちのこもったメッセージを多くってほしいから、指名するボタンを押すときに「この方に会いたい理由を伝えきれましたか?」というダイアログも出しています。
佐藤: あ、それ見て、何回か戻りました。「やっぱりダメだ!まだ足りない」って。
マコト: これを入れたのは、あるネットのニュースがきっかけなんです。SNSいじめを防ぐために、アメリカの14歳の女の子がある機能を開発したというニュースです。
ネガティブな書き込みをしようとすると、「本当に投稿しますか?」という確認のメッセージを表示されるというもので。この一言だけで、93%の若者が投稿をとりやめたという結果が出たそうなんです。
それを読んで、これはいいな、と。もともとは、バリデーション等でテンプレメッセージを制限しようとしたのですが、イタチごっこになるだけだったので、ニュースのように素直にお願いしたんです。
プロダクトをつくるときは、常識的に考えるのではなく、本質的に考える
佐藤: 逆にちょっと引っかかったのが、他人の入札結果が見えるところ。僕はあまり人の給料を見たくない派なんです。と言うのも、金額云々より自分が満足していることの方が大事だから。でも、否応なしに人の年収が見えることで、どうしても自分と比べて雑念が芽生える。そこは気になりました。
マコト: あそこにも僕たちなりの思想があるんです。転職ドラフトを立ち上げた理由のひとつが、もっとエンジニアが正当な評価をされる世界をつくりたかったからなんです。
エンジニアに限らず、プロがプロとして正当に評価されていないのが日本の労働市場の現状だと感じています。最高の技術を持ったエンジニアに、もっとお金が支払われるようにするためには、「ほしい人材には相応の評価をして口説く必要があるよ」という文化を定着させなくちゃいけない。それには、どういうスキルの人がどれくらいもらっているのか、企業側求職者側双方に見えることが大事だと考えています。
佐藤: その思想は使っていても感じました。
マコト: 求職者の現年収を入れる項目がないことも、この理由からなんです。現年収が見えると、どうしてもそこをベースに入札金額を決めてしまうので。
佐藤: 確かに現年収欄の記載欄を一度探しましたね。でも、結果的になくて良かったと思います。ちゃんとゼロベースでエンジニアを評価できたと思うので。
自分たちの仲間は、自分たちで見つける
―では、このあたりで話題を変えて、Fringe81さんの採用について話を聞いていきましょうか。“ジンジニア”の佐藤さんが採用で大事にしていることはなんですか?
佐藤: 大事にしているのは、一緒に働く目線で見ることですね。弊社は採用に関してはものすごく現場主義。内定の条件は、現場のエンジニアみんなが一緒に働きたいと思うかどうかです。全会一致でなければ内定は出しません。昔から「自分たちの仲間は自分たちで見つけにいこう」という風土があって、それくらいエンジニアが採用活動に対して積極的なんです。
マコト: すごいですね。
佐藤: その中で僕の役割は、人事とエンジニアの中間にいること。僕はいわゆる人事畑の人間ではないし、だからと言って100%エンジニアというわけでは今はない。人事の事情に引っ張られすぎず、現場の要請に傾きすぎず、バランスのとれた立ち位置を意識しています。
マコト: でも全会一致だとハードル高くないですか?
佐藤: 超高いです。だから妥協するなら技術かな、と。
マコト: やっぱり一緒に働くなら人柄ですよね。
佐藤: そうですね。技術は後で伸ばせますから。
―採用の仕事の意義って何だと思いますか?
佐藤: 僕はあまりこの仕事が特別だという感覚はなくて。と言うのも、うちは人事が主導しなくても、マネージャー・スペシャリスト・メンバーなど立場は関係なく、全員が組織目線で採用に関わっているんです。先日も、エンジニアのスペシャリストたちが「もっといい人を採用するために、もっと俺たちがいい面接をしないといけないんじゃないか」という課題感のもと、自分たちで面接のLT大会を開いていたりもしました。
マコト: それはどんなものですか?
佐藤: 自分がどんなふうに面接をやっているかを、みんなと共有し合うんです。
マコト: 面白いですね。
佐藤: 弊社ではそれが普通なんです。なので、採用に関して僕だけが特別なことをしているという意識はないですね。あるとすれば、どうやってみんなと運命の出会いをつくるか、いかにそのドラマを仕立てるかについてはよく考えています。
―気になるのは、なぜ本業があるにもかかわらず、現場がそれだけ採用に積極的になれるかです。エンジニアが主体的に採用活動に参加できるよう、工夫していることはありますか?
佐藤: まずは採用の段階で、人に興味がある人、一緒に会社をつくっていこうという意志のある人しか採用しません。そのための工夫として実践しているのが、会食面接。これを中途採用では導入していて、2次面接の後に行います。会社を離れたフラットな場で、一般的な面接よりも長い時間をかけて深くお互いのことを知る場として実施しています。そこでしっかり腹を割って話して、会社の想いに共感し合えた人だけが次のステップに進めます。入り口の段階でしっかり見極めて採用しているというのは大きいと思います。
マコト: 評価の面でも何か工夫をしていますか?
佐藤: 目標数字を追いかけるのはプロだから当たり前というのが前提ではありますが、ただ数字だけ追って誰も成長していないのは悲しいですよね。だから会社をもっと強くするために採用や育成にどう取り組むかということもミッションに入れて評価は行っています。
大事なのは、ちゃんとその人の人生に責任を持てる人しか採用しないこと
―一方で、大勢の人が面接に関わることによってジャッジポイントがズレたりすることはないですか?
佐藤: 全然ないってことはないですが、かなり合っていると思います。
マコト: そのためにどんな工夫を?
佐藤: うちでは面接と面接の間に申し送りがあるんですよ。それも書面による申し送りではなく、必ず対話で。ひとりの求職者に対し、みんなが思うことをそれぞれ話したり、「次の面接ではこういうことを聞いてほしい」というような確認事項の共有を、毎回5~6人で30分くらいかけて行っています。どれだけ定期的に採用基準を共有しても、気づくと自分の経験則に頼って人を見ていることが多いんですね。だから、対話し合うことは、目線を揃えるためにも重要だと思います。
マコト: 人事をやっていて辛かったことは?
佐藤: やっぱり求職者が不採用になると精神的なダメージはデカいです。人事は初期接触をする立場なので、どうしても思い入れが強くなりますから。そんなときは必ず不採用の理由を確認します。大抵理由を聞くと納得できちゃうんですけどね。
マコト: 逆に楽しかったことは?
佐藤: 楽しいっていう感覚はあまりないですね。ただ、たまにデカいやりがいがあるんです。この間、転職ドラフトさんで採用が決まったときもそのひとつ。求職者の方が「こんな会社に入りたかった」って泣いてくれたんですよ。そういう瞬間に立ち会えるのはやっぱり嬉しいなって思います。
マコト: では、最後に採用として、大事なことってなんですか?
佐藤: 和を乱さないことですね。本来、採用は社内のチーム力強化が目的なのに、逆に人を入れることでチームが乱れてしまっては本末転倒。だから、うちでは一人でもNGを出せばその人は採らないし、逆にみんなが80点を出した人も採用はしていないんですよ。なぜかと言うと、みんな80点ということは、逆に言えば何かあったときに責任をとれる人が誰もいないということだから。もしトラブル起きたときに「誰がこの人を採用するって言ったんだ!」なんて話になったら嫌じゃないですか。だから、必ず育てきれる・責任をとれる・人生に寄り添える人を採用する。これを大事にしています。
マコト: なるほど。ありがとうございました!
佐藤: こちらこそ、ありがとうございました!