2017年1月の第4回ドラフトで計2名の優秀なインフラエンジニアの採用に成功した株式会社gumi。CTO幾田氏曰く、「今回はかなり高い選考基準で指名した」という。
CTO幾田氏が高く評価したエンジニアに共通する点とは?gumiが転職ドラフトで重視していたポイントと、エンジニア目線で見たgumiの魅力について語ってくれた。
株式会社gumi
CTO (Chief Technical Officer)
幾田 雅仁
1997年システム会社に入社。大手パソコン通信サービスやポータルサイトの開発に携わる。その後、大手ポータルサイト運営会社を経て、2007年金融系企業に入社。クレジット決済のプロセッサでシステム開発を担当。2012年gumiにジョイン。共通システム/ライブラリの開発、ソーシャルゲームの開発、社内外技術勉強会の講師などを担当。2016年CTOに就任。
gumiは技術にストイック。レビューしないコードは絶対マージしない。
ーgumiさんというとソーシャルゲーム、というイメージですが、まずは会社の開発体制や雰囲気について教えていただけますか?
幾田: 当社は事業部制を敷いています。複数のスタジオがあるのですが、スタジオごとにガラッと雰囲気が違いますね。開発手法も様々で、ウォーターフォール型を採用しているところもあれば、アジャイル型を採用しているところもある。使っている言語も様々です。
ーそんなgumiさんの開発の特徴をあげるとしたら?
幾田: 全体的に技術に関してこだわりがとても強い会社だと思います。特に、各現場が開発に集中できるよう技術支援を行う中央の部署は、精鋭揃いの技術者集団です。テクニカルコンサルティングやR&D、インフラなどに分かれていて、各タイトルのチームを横断的に渡り歩いてチューニングを行ったり、マイクロサービスをどんどんつくって各チームに提供したりしています。
ーなるほど。技術力を磨きたいエンジニアにとって良い環境ですね。
幾田: だから面接の段階でもかなり厳しくスキルチェックをします。それだけ技術にストイックな会社だからです。
ゲーム開発の現場は、どんどん新しいイベントやキャラクターを追加していかなければならない分、多少ダーディーなコードでも仕方ないという雰囲気はありますが、それでもコードレビューは徹底しています。『レビューしないコードは絶対マージしない』という鋼の意志がある。よく他社さんから技術力が高いと褒めていただくことがあるのですが、ありがたい反面、自分たちとしてはまだまだと自覚してます。それくらい技術の向上には余念がない会社なんです。
gumiのインフラエンジニアとして働く魅力は『インフラのコード化』
ー2017年1月の転職ドラフトで採用されたお二方のプロフィールを簡単に教えていただけますか?
幾田: インフラ/サーバ/クライアントの3ポジションで募集を行っていましたが、結果的に採用に至ったのは、いずれもインフラエンジニアの方でした。ひとりはソーシャルゲームの開発をされていて、インフラもサーバも両方できるというフルスタックに近いエンジニア。もうおひとりは大手メーカーのユーザー系企業でインフラエンジニアをされていた方で、前職ではAWSでコードの自動化をされていたそうです。
ーインフラ部門において目覚ましい成果をあげられたわけですね。その秘訣は何があったのでしょう?
幾田: 今回の場合は、私たちの課題と、転職者のスキルや希望がマッチしたというのが大きいですね。と言うのも、当社のインフラ部門はこれまでエンジニア1名ごとに8~9のタイトルを担当しています。通常、多くのゲーム会社さんがタイトルごとに1名のインフラエンジニアをつけていることを考えると、この体制は極めて異例です。
ーなぜgumiさんはそんなに少人数で安定的な運営ができているのでしょう?
幾田: そもそもボラティリティの高いソーシャルゲームの特性上、開発当初から大量の人員は投入できないという前提があるからです。開発には、スモールスタートで始められて、後々の反響によって柔軟にスケールできるシステムとそれにマッチした人員構成が不可欠です。そこで当社ではまだAWSが日本に広まる前からAWSにシフトしてインフラのフルクラウド化を進めてきました。長い時間をかけて蓄積してきたこの豊富なノウハウが、少数精鋭の組織体制を可能にしてます。さらに現在は、インフラのコード化を積極的に推進しています。
ーなるほど
幾田: 今回、このインフラのコード化を転職者のみなさんに強力にプッシュしましたね。24時間張り付いて手作業でケアをしなければいけない旧式の運用方法はもうやめにしましょう、と。これからは効率を優先し、インフラもコード化する時代。もちろん当社でも一部まだ手作業でやっているところは残っています。この中途半端な状況を一掃して、完全にインフラをコード化する体制を共に築いていきましょうとお話ししたことが、転職者の賛同を得たようです。
ーミッションに対する共感が採用の決め手になった、と。
幾田: このことに関しては指名を送る段階から、包み隠さずお伝えしていました。やっぱり現場にいる方々は、インフラの辛さをよくわかっている。聞くところによると、それだけはっきりインフラのコード化を掲げて口説いてくる会社も他にいらっしゃらなかったみたいで、そこも追い風になったようです。
エンジニアに求めるのは「主体性」と「結果がどうあれ常に振り返りをするか」
ー2017年1月の転職ドラフトでは608名の参加者の中で12名1 だけ指名されたかと思います。どんな指名方針で指名されていましたか?
幾田: インフラ/サーバ/クライアントの3ポジションで募集を行っていました。その上で今回はドラフトということで、今私達が本当に欲しいハイレベルのエンジニアのみを指名しました。通常の採用より高い選考基準で指名しましたので、指名されなかった方は気落ちしないでいただければと思います。
ーなるほど。レジュメをご覧になるときに、特に重視した点はありますか?
幾田: 主に二つあります。一つは業務に対するスタンスですね。オーナーシップを持ってプロジェクトに参加できているか、という仕事への主体性をレジュメの内容からチェックしました。もう一つは、結果についての言及ですね。プロジェクトの成否そのものは問いません。成功したにせよ失敗したにせよ、きちんと振り返りを職歴に書けているかの方がよほど重要です。
―それはなぜでしょうか?
幾田: 事業運営していく中で、ずっと同じことをし続けている人は、残念ながら当社には必要ないと思っています。私たちがエンジニアに求めるのは、バランス感覚。エンジニアだからと言って単にエンジニアリングだけしていればいいわけではありませんし、かと言って売上のみを追求し、技術の向上をおろそかにして良いかと言えば、もちろんそうでもない。その両輪をしっかり回せる人でないと、gumiのエンジニアは務まりません。
特にエンジニアは年齢を重ねると、どんどんパフォーマンスが落ちていくもの。絶えずパフォーマンスを上げ続けるには、常に技術を研鑽しなければいけませんし、ビジネスへのコミットも必要。それは、言い換えると『ちゃんと振り返りができる人』だと思います。つまり職歴を常にブラッシュアップできる人かどうかです。
―なるほど、振り返りという言葉にはそのような意味が込められているんですね。
幾田: そうです。定期的に自分の振り返りができている人であれば、世の中の動きに合わせて自分自身をアップデートできる。私も定期的に自分のキャリアを棚卸し、常に最新の職務経歴書を更新しています。
―転職意欲がないのに常に職務経歴書をアップデートしているのはすごいですね!
幾田: いえいえ、エンジニアとしての姿勢を見極める上で、職務経歴書できちんと振り返りが明記できているかどうかは、重要な判断材料だと考えています。
―他に指名する際に重視しているポイントはありますか?
幾田: GitHubやQiita、技術ブログの中身はかなり細かくチェックします2 。よくいらっしゃるのが、何となくリンクを貼ってはいるものの、そこに書かれている内容のレベルが著しく低い方。GitHubで言えば、Forkばっかりで、自分のコミットがない場合は減点です。自分のエディターの環境ファイルしかなくて、あとは全部Forkしていたり。「インフラのコード化をやっています」と職歴に書いている方でも、GitHubを覗いたらよそから引っ張ってきたファイルしか置いてなかったりする。そうすると、印象は良くないですよね。
―そこまで見ているんですね。不用意にGitHubを載せていると逆効果ですね
幾田: その通りです。GitHub等に関しては、私はかなり深くまで掘って見ているので、貼りつける前にちゃんと内容を精査することをお勧めします。
というのも、その人の技術レベルももちろんですが、何より転職への意識が見えるんです。何となく自分の値付けはいくらくらいだろうとお試し感覚で登録している方と、もっとスキルを伸ばせるところに行きたい、それに見合った給料をもらいたいと本気で考えている方では、こうした細かいところではっきり差が出る。そして、その差は入社後の仕事への姿勢にも多分に関連しているだろうなと見ています。
本当に欲しい人だから、CTOが1人1~2時間かけて指名文面を作成3
―ちなみにドラフト参加者のレジュメは、幾田さんが全てご覧になったんですか?
幾田: そうです。正確には私をはじめ、各部門長がチェックし、その上で誰に指名を送りたいか、理由も含めてしっかり話し合いました。ちなみに提示年収も部門長と話し合って決めました。基本的には既存社員のスキルセットと比較して、同等の年収額を提示しています。
―1人1人の文面の作成は幾田さんが自ら行ったと伺いましたが?
幾田: そうですね。私は候補者のレジュメを何度も拝読した上で指名文面を考えるので、指名文面の作成はおひとりにつき1~2時間はかかったと思います。
―1~2時間も!?
幾田: はい。私が欲しい人なんだから、それだけかかるのが当然だと思いますけどね
―ストイックですね。他社でそれだけ時間をかけている企業は無いと思います。指名文章はどのような内容を記載しているんですか?
幾田: 私が評価したポイントや、短期/中期/長期に分けてお願いしたいことを明記します。その上でそれを完遂できるならこの金額を払いますという流れで想定年収を提示しました。
―それだけ熱心にご覧になっているからこそ、指名の返信率も上がったんでしょうね。選考の段階で工夫したことはありますか?
幾田: 選考に入る前に、一度、双方の認識にズレがないかすり合わせを行うためのカジュアルな面談を入れたのは良かったと思います。そこではとにかくこちらからいろんな情報の開示をしましたね。我々がどういう会社で、どこを目指しているのか。転職にあたって考えられるメリット/デメリットは何かというところまで全て率直にお話ししました。
中には面談の結果、方向性が合わず次の選考に進まなかった方もいましたが、入社後のミスマッチを予防できたと思えば意義はあったかなと思います。
―そのような転職者に誠実な姿勢も、良い採用結果が出た理由の一つかもしれませんね。
幾田: それについては今回のドラフトで指名して入社した本人が近くの席にいるので、彼に聞いてみるのが早いと思います。
Y: はじめまして。転職ドラフトを経由して、この5月に入社したYといいます。前職ではソーシャルゲームの開発をしておりました。
―この度は転職おめでとうございます!多くの企業の中からgumiさんに入社を決めた理由は何ですか?
Y: 指名を承諾した理由は、指名内容の文面ですね。全員共通のコピペ的な文章じゃなくて、ちゃんと僕の経歴を読み込んだ上で、指名してくれているのがよくわかりました。中には完全にテンプレートだろうという文面の企業さんもいましたが、正直、あれはかえってマイナスです(笑)自分のどこを評価してくれたのか、どこに期待してくれているのか伝わる指名だと、話を聞いてみようかなという気になりますね。
―幾田さんはYさんへの指名文面に1~2時間かけたそうですよ
Y: え!!そんなに時間かけたんですか!?ラブレターみたいですね(笑)
幾田: (笑)無事思いが伝わったようで良かったです
面接では技術力を厳しくチェック。落ちたと思った人の方が受かる。
―幾田さんが指名した方と会ったときに見ている点は何ですか?
幾田: 最も重視するのは、『基礎力』です。基礎ができているということは、過去にきちんと勉強をしてスキルを上げてこられたという証拠。逆に言えば、どんなに素晴らしい成功体験をお持ちの方でも、基礎が足りてなければ、それは単に行き当たりばったりで成功しただけの可能性もある。
基礎ができていない方は、これから40、50と年齢を重ねていくにつれ、どんどん通用しなくなる。基礎さえできていれば、どんなに技術的なイノベーションが起きてもそれに対応することも可能でしょう。技術革新のめざましい時代だからこそ、基礎が将来の明暗を分けると考えていただければ。
―具体的に、転職者の基礎力はどのように見極めますか?
幾田: 面接で細かいところまで質問するようにしています。たとえばサーバサイドなら、「データベース設計をきっちりされていますか」とか「トランザクションとは何か」とか。もっと細かく「MySQLをしっかりチューニングできますか」とか「こういうテーブル構成に、こういうインデックスを貼るとどうなりますか」とか、とにかく具体的な質問をぶつけて、その答えで基礎力を確認します。特に、ある一定以上のレイヤーの方には厳しくチェックしますね。何でも私が面接を担当した方は、落ちたと思う人が多いみたいで(笑)。
Y: 私も完全に落ちたと思いました
幾田: でもしつこく質問するのは、評価の裏返しです。むしろ楽しく終われたという感想をお持ちの方ほど、結果は残念なことになる方が多いかもしれません(笑)。
―落ちたと思った方ほど受かるんですね(笑) 今後採用したいエンジニアはどのポジションの方ですか?
幾田: インフラに関してはこれで充足したので、今はクライアントとサーバを強化したいですね。どちらも求めているのは、スペシャリストタイプ。あるいはプロジェクトマネジメントができる方です。いずれにせよ門戸を広げるというよりも、本当に優秀な方に絞り込んだ厳選採用になっていくと予測しています。
あと、テクニカルアーティストの方が喉から手がでるほど欲しいです!高く評価して指名しますので、必ず転職ドラフトに出てください(笑)
―何か最後にアピールしたいことがあればお願い致します。
幾田: gumiはweb系からモバイルに移行したという経緯もあり、クライアントサイドは他社に比べて弱いという側面があります。でも逆に言えば、コンソール系の会社のように過去から積み重ねてきたものがない分、文化の醸成や技術選定など開発プロセスをイチから自分でつくり上げることができるのが魅力です。
あと何でもチャレンジできます。たとえば会社によってはクライアント/サーバで縦割りになっている組織も多いと思うのですが、gumiなら本人の意欲次第で両方できる。いわゆるフルスタックエンジニアを目指したいという方にとっても、しっかりその土壌が用意されていますので、是非お待ちしています!
ー本日はお時間をいただきありがとうございました!