(写真左:久保田竜自さん、写真右:土井英範さん)
第2回転職ドラフトで最多となる18社からの指名を受けた久保田竜自さんが、引く手数多の状況から選んだのは『剣と魔法のログレス』などのヒット作で知られるゲーム開発会社のAimingだった。
これだけの指名が集中した久保田さんは、企業から見てどこが魅力的に映ったのか。逆に久保田さんから見てAimingのどこが琴線に触れたのか。
久保田さんと、久保田さんの採用を担当したAimingの開発リーダー・土井英範さんの話から、候補者・企業双方から見た転職ドラフト攻略法を探った。
株式会社Aiming
開発グループ ソフトウェアエンジニア
久保田 竜自
何度か転職しつつ、Webサービス開発を中心に大小のプロジェクトを経験。前職で携わったサービスでは、サーバサイドのアーキテクチャからWebブラウザ・スマホアプリのUI設計実装、マスコットキャラの一言コメント迄、色々担当。2016年10月にAiming入社。
株式会社Aiming
開発グループ マネージャ/リードソフトウェアエンジニア
土井 英範
2006年4月 コミュニティーエンジン株式会社でオンラインゲームの開発に関わる。その後、転職し、Webサービス開発、オンラインゲームのサーバ開発に関わる。2011年6月 Aiming 入社。複数のタイトルにて、リードエンジニアとしてサーバ・クライアントの開発に従事。
最多18社から指名を受けた久保田さんってどんな人?
Q:久保田さんは、Aimingに入るまではどんな会社で働いていたんですか?
久保田: 結構転職を繰り返していまして、Aimingで5社目になります。硬い証券取引システムの開発から始まり、HPの受託制作、ガラケー時代のソーシャルゲームのサーバサイドと渡り歩き、前職はGMOでECプラットフォームなどの開発に携わっていました。
Q:転職を考えたのはどういった動機から?
久保田: 前職ではフロントからバックエンドまで横断的にやっていたのですが、会社の評価も周囲にいる人たちの関心も、どちらかというとバックエンドの機械学習などの技術に向いていたんです。自分の関心はもう少しフロントエンド寄りにあったので、興味があるところと求められることのズレを感じ始めていました。
とはいえ、がっつり転職しようと思っていたかと聞かれると、半々だったというのが正直なところで。転職ドラフトに登録してみようと思ったのは、自分のエンジニアとしての評価が知りたかった からです。コミュニティであまり積極的に活動してこなかったので、自分の客観的な評価が分からなかったんです。
Q:実際に18社から指名が殺到した時のお気持ちは?
久保田: びっくりしましたね。レジュメには「ゲームに行きたい」と書いたものの、それまで仕事でゲーム開発をしたことがなかったので。希望通りにゲーム開発会社からいくつか指名があったのには驚きました。
情熱を確認しあったファーストコンタクト
Q:土井さんは久保田さんのどこがいいと思って指名したんですか?
土井: 本人はゲーム開発の経験がないと言っていますが、それは仕事でやってこなかっただけで、個人としてゲームを作り、GitHubに公開していたんですよ 。レジュメにはそのURLが貼ってありました。フロントエンドをやりたいと言うだけあって、久保田さんの作ったアプリは見ていて気持ちいい動き、楽しい動きをするんです。
経歴や文章から、久保田さんが置かれた環境に応じて、自分の職域を限定せずに柔軟に仕事ができる人だということが伝わってきました。そしてそれを端から端まで実現できる 技術的な確かさ があることも、コードを読めば明らかだったんです。
Q:職域を限定しないスタンスがAimingと合っていたんですか?
土井: そこはゲーム開発において非常に重要なところです。例えば久保田さんがやりたいというフロントエンドの動きに関しても、デザイナーに言われたものをただ実装するというのではなく、実際にどう動かすか、どう情報を整理するかはエンジニア側のアイデアが求められます。
ゲーム開発はトレンドの変化が激しい世界ですが、久保田さんの仕事へのスタンスと技術力があれば、そこに飛び込んでも活躍できるイメージが十分できました。
Q:逆に久保田さんから見てAimingという会社はどう映ったんですか?
久保田: まず、土井さんから送られてきた メールがすごい長文で、ラブレターみたいな内容でした(笑) 。GitHubのURLを貼ってはいたものの、連絡してくる会社の中には、実際に見ているのか怪しい会社も少なくなかった。でも、土井さんからのメールは「ここが良かった」といった感じでとても具体的でした。
実際に会ってみると、僕が趣味で作ったゲームアプリを自分のスマホにインストールしてくれていました。そのことには本当にびっくりしたし、感激しましたね 。会ったらまず「作ったアプリについて説明してください」という人だって多いのに。
土井: 興味を持って声をかけているんだから、それくらい当然だと思うんですけどね。
エンジニアの評価はエンジニアにしかできない
Q:指名から交渉までをエンジニアがやるからこそのやり取りですね。
土井: はい。Aimingでは、採用は現場のエンジニアが交代で担当します。マネジャー以外にも常時20人くらいが採用に関わるんですが、それは エンジニアの評価はエンジニアにしかできない と考えているからです。候補者リストにあげた人のコードは、久保田さんのものだけでなく、全部見ましたよ。通常の採用の際も、コードを提出してもらうのがルールになっているんです。
Q:マネジャー業務や開発をしながら採用もやるのは大変じゃないですか?
土井: でも、コードを見ないとスキルのミスマッチが起こるので、結果的に手間がかかると考えています。それに、プログラムって書く人によって全然違うじゃないですか。だから書類を見ていても常に発見があるんです。大変ではありますけど、面白いと思える時間でもあるんですよ。
GitHubを公開しているのは、見られることを意識している人ということですよね。そのこと自体がAimingとマッチしているのかなとも思います。コードレビューやペアプロを日常的に行っているように、コードをみんなの持ち物にするのがうちの企業文化です 。
ちなみに自分の場合は、マネジャーとして人を見る以外にも、現場エンジニアと一緒にコードを書くことも続けています。エンジニアって、コードを書けないと基本的に尊敬してもらえないじゃないですか。それに変化の激しい業界だから、技術的に置いていかれる。それが悔しいんです。手を動かさないと気付けないことがたくさんありますからね。
オフラインの会話量が多いAimingの開発文化
Q:実際に入社してからはどんなお仕事を?
久保田: 10月に入社して、今ちょうど3か月くらいなんですが、新規ゲームプロジェクトのエンジニアの一人として、サーバからクライアントまでやらせてもらっています。
Q:入ってみてどんなことを感じました?
久保田: チームにはエンジニアだけで8人いるんですが、「この技術だけしかやらない」という人は一人もいないですね。かっちり決まっていることもあるにはあるんですけど、ある意味境目が緩いというか。みんな自律して動けるプロフェッショナルだなあと感じます 。
それと、Aimingのエンジニアの人はみんなとてもよく喋る。SlackやGitHub上もそうなんですけど、オフラインでの会話量がとても多いですね。
Q:エンジニアには手を動かしてる時にはあまり喋りかけられたくない人もいそうですが。
久保田: 「今ちょっといいですか?」と聞かなくても自然と話せる雰囲気があるんですよね。僕自身はあまり雑談は得意じゃない方なんですが、テキストでのやり取りだけだとどうしても抜け落ちる情報があると思うので、とてもいいなと感じてます。
土井: 会話の活発さは意識してやっていることで、お互いの席を近づけて配置したり、遠くからでも見えるように席に名札を置いたりもします。シンプルですけど、コミュニケーションが円滑に行われるためにはとても効果的ですよ。
久保田: 会議もこれまでいた会社とは違う印象でした。手を挙げて指名されて初めて口を開くといった感じじゃなく、常に途切れることなく活発に意見が交わされています 。
土井: 会議には必ず、エンジニアやデザイナーなど全ての職種の人を入れるようにしています。何かが決まる過程を知らずに結論だけ聞かされると抜け落ちる部分があるので、経緯を共有するのも、意識して行っていることの一つです。
仕事の範囲を超えて学び続けるための「クソゲーコンテスト」
Q:久保田さんは仕事でゲーム開発するのは初めてだったわけですが、不安はなかったんですか?
久保田: もちろんありますよ。今も自分が一番分からないことが多い状況なんで、早く抜け出そうと思って朝早起きして勉強しています。Webサービス開発では誰かが作ったライブラリを共有するのが一般的ですが、ゲーム開発の世界は、ないものは自分で作るという文化が強いように感じます。そのためには基礎的な知識を積み重ねていないといけないので、これまで学んでこなかったことがたくさんあるなあと感じているところです。
土井: ゲーム開発の世界は移り変わりが激しく、昨日まで使えていた技術が使えなくなるといったことはよくある話です。勉強はどこまでいっても十分ということはない。柔軟性やアンテナの高さが必要な世界だと思います 。
Q:学び続けるために会社として取り組んでいることはありますか?
土井: ゲーム開発は長ければ3年続くものもあります。その間はプロジェクトで使わない技術は使う機会がないことになりますが、技術はすぐに陳腐化するので、それでは立ちいかなくなることも多い。そこで、仕事で直接使わない技術も学び続けるために、「クソゲーコンテスト」 というものを1年に1度開いていたりしています。
Q:クソゲー、ですか?
土井: デザイナーや非開発職の人も参加して、1か月かけて自分の考案したゲームを実装するところまでやるんです。全部を一人でやるから、必然的にフロントからバックエンドまで一通りの知識が身につきます。うちの社員はみんなゲーム好きなんで盛り上がりますよ。
久保田: 「クソゲー」と付いているのは参加障壁を下げるためで、社長賞なんかも設けられていて、実際にはハイレベルな争いなります 。僕もすでにアイデアレベルのものはあるので、今年のコンテストには頑張って参加したいですね。
両者から見た転職ドラフトの魅力って?
Q:最後に、久保田さんと土井さんが考える転職ドラフトならではの魅力があれば、ぜひ教えてください!
土井: 基本的に何かやりたいことがある人って、「やりたい」と言っているだけじゃなく、その時点ですでに 何かアウトプットがあるはずだと思うんです 。作りたくてしょうがない、我慢できないという情熱があるわけですからね。
転職ドラフトの候補者の中には、GitHubのURLを貼っている人もそうでない人もいますが、貼っている人からはやはり、そうしたエネルギーが伝わってきます。これは履歴書/職務経歴書や、言語の経験年数を「エンジニアスキル」と言い切る一般的な転職サービスからは分からないものです。 こういった 型にはまらない、転職ドラフトのオープンさやダイレクトさはすごく魅力的ですね 。
久保田: そもそもの自分の動機の一つだった、会社側からの自分への評価が見られるというのも、ドラフトならではだと思います。というのも、土井さんは他のどの会社よりも早く、そして1位で僕を指名してくれたんです。まるでラブレターのようだった長文メールも含めて、そうした態度やコミュニケーションでも熱意を示せるのが面白いですよね。そして個人的には、その上で気軽に会いに行けるというのも良かったです。
土井: 転職ドラフトでは他社の動きも見えるから、今回うちがやったように真っ先に手を挙げることもできれば、他社の出方を見た上で判断するというやり方もある。採用担当の間で話し合って、そういう作戦を考える時間も楽しかったです。次回もまた違う作戦を考えてやってみたいと思います。