意識するのはInstagramやYouTube - えふしん氏はなぜBASEを選んだのか、その裏側に迫る

2017-01-10 16:20

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携帯向けTwitterクライアント・モバツイの開発者として有名な藤川真一(えふしん)氏がBASE株式会社のCTOに就任したのは2014年8月のこと。そのニュースは驚きとともに大きな話題になった。次々と新技術が登場するテクノロジーの世界において、次の舞台にえふしん氏はなぜEC、そしてBASEを選んだのか。就任から2年余り、改めてその問いに、株式会社リブセンス取締役・中島真が切り込む。

BASE株式会社
取締役CTO
藤川 真一 (ふじかわ・しんいち)
FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント・モバツイの開発・運営を個人で開始。その後、想創社設立を経て、2014年8月1日からBASE株式会社のCTOに就任。「えふしん」のハンドルネームでweb界隈において広く親しまれている。

株式会社リブセンス
取締役
中島 真 (なかじま・しん)
コンサルティングファームにて、主に通信・ソフトウェア・メディア産業における戦略策定・実行支援、インターネット関連の研究開発支援に従事。DeNAでEC事業に携わった後、リブセンス入社。リブセンス及び、グループ会社wajaの取締役

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BASEが目指すのは楽天市場ではない

中島: F’s Garageは10年以上拝読しています。本日はえふしんさんにお会いできて光栄です。私も何度か、えぬしんって名乗ろうかと考えたことあるくらいです(笑)

えふしん: 是非是非!ライセンスがあるものでもないので(笑)

えぬしん: ありがとうございます!じゃあ早速本題を(笑)。BASEさんはなぜECをやっているんですか?

えふしん: BASEでは、「多くの人がイメージする、完成したECというビジネスをやっている」という意識ではないんですよ。ホームページのファーストビューにもECの文字は一言もありませんしね。

えぬしん: そうだったんですね。ではBASEさんとしては何を提供していると考えているんですか?

えふしん: 「インターネットを通じた価値と価値の交換をシンプルにすること」だと定義しています。みなさん、ECと聞くと、まず楽天さんやAmazonさんの名前を連想しますよね。確かにどちらも日本でショッピングモールのひとつの完成形を築いた尊敬すべきパイオニアです。ただ、BASEが目指しているのは彼らではありません。

えぬしん: ほう。違いは何ですか?

えふしん: 僕らが目指しているのは既存のカタチのショッピングモールではない。僕達がターゲットとして強く意識しているのは、まだネットショップを持っていない、でもモノを売りたい人です。日本の小売業のEC化率は4.75%(平成27年時点、経済産業省調べ)なんですよ。楽天市場があれだけ成功しているのに、まだ4.75%。

えぬしん: まだまだ相当の伸びしろがある、残りの95%が市場であると。

えふしん: そう。勝っていくためには、既存のECプレイヤーとはまったく別のベクトルに舵を切っていく必要があります。BASEにしてもPAY.JPにしても、やっていることは「モノを売り買いする」という価値の交換をもっとシンプルに行えるようにするための手段の提供なんです。そのために徹底的に使いやすさを追求して、インターネット上ではできていなかった取引を増やしていきたいと思っています。

えぬしん: なるほど、新しく顕在化する顧客とともにだからこそ異なるベクトルが見出せるわけですね。

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意識しているのはInstagramやYouTube

えぬしん: 楽天やAmazonとは違うということは、プロダクトを作るとき意識しているサービスはどんなところですか。

えふしん: InstagramやTwitter、そしてYouTubeですね。

えぬしん: シンプルなツールとしての位置付けということでしょうか?

えふしん: 「モノを作って売りたい」という人の関心って、「モノを作って売る」ことなんですよね。別にSEO対策やインターネットの基礎知識は特に興味がない。でも実際は、インターネットでモノを売るためにはそういった知識は必要になっちゃうじゃないですか。そんな知識を必要とせず、誰でも手軽に「モノを売れる」ようにするためにBASEはあるんです。

えぬしん: あとはコミュニティ感でしょうか?

えふしん: BASEはコミュニケーションサービスとしての側面があります。「モノを売る」こと自体が、ひとつのコミュニケーションですから。例えば、BASEのアプリではフォロー機能があって、売り主が新しく商品を登録すると、フォローしたユーザーにプッシュ通知が飛ぶようになっています。これはツイキャスと似てる機能なんです。ツイキャスはお気に入りのキャス主を通知登録しておけば、そのキャス主が次回配信を開始したときに一斉に通知が飛ぶようになっているんですね。おかげでリスナーは好きなキャス主の配信を見逃さずにすむし、キャス主はスピーディーにリスナーを集めることができます。

えぬしん: ファンを作って、ファンとつながれる売り場なんですね。

えふしん: そう。だから活用方法も人それぞれでいいと思っていて。企業が自社のネットショップとして使う例もあれば、年1回だけ何かモノを売りたいときに利用するという例もあります。流木を売っている方や、自分の描いた絵を売っている小学生のお子さんもいます。

えぬしん: 流木って実はDIYで人気ですよね!

えふしん: そうなんですよ。楽天市場は例えるなら全国から様々な商品をお取り寄せするためのスキームで成功したのかなと思っています、BASEは、それに加えて、もう少しローカルな取引も促進したいと思っています。地方創生に近いイメージで。

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テレビで紹介され、入手できないあのブランドの裏側にもBASE!

えふしん: あ、最近よくテレビで紹介されているSenbei Brothersってご存知ですか?

えぬしん: 知ってます!めちゃくちゃオシャレなパッケージのおせんべいですよね。もはや人気すぎてなかなか手に入らない。

えふしん: あのSenbei BrothersもBASEを使ってくださっているんですよ。

えぬしん: そうなんですか!

えふしん: Senbei Brothersさんを生み出した笠原製菓さん(東京都江戸川区船堀)は、もともとはOEMメーカーだったんです。経営が厳しく、代替えしたご兄弟ふたりが独自ブランドとしてSenbei Brothersを作ったんですね。そのブランドは近隣では評判だったんですが、まだ通販はやれていなかったそうで。そんな彼らが、BASEでネットショップを開設したんです。その後、Senbei Brothersは多くのメディアで取り上げられる人気ブランドになったのですが、ネットショップを通じて遠方の方にも彼らのお煎餅を提供できるようになりました。今では注文してから商品が届くまで2~3ヶ月待ちという大ヒットですよ。

えぬしん: まさに地方創生ですね!

えふしん: これがBASEのやりたいことなんです。ユーザーが簡単にインターネットを使って「モノを売る」ことができるようになる世界の実現を僕らは目指しているんです。

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シンプルを実現するために、高度なシステムを作る

えぬしん: ちなみに、なぜえふしんさんはBASEにJOINされたんですか?

えふしん: 僕が手がけていたモバツイは、Twitterの理念に共感したサービスだったんです。アカウント名だけで世界中の誰とでもメッセージを交換できるシンプルなアーキテクチャと、明らかに無茶しているタイムラインのシステム構成に惚れたんです。

えぬしん: そうなんですね。

えふしん: シンプルなことを実現するために、余計な障壁を取っ払って高度なシステムを作る部分に共感していたんです。でも、Twitterクライアントは所詮、外部のサービスだったな、というのがモバツイで得た結論でした。モバツイで会社をつくったものの、「Twitterのサードパーティ」では限界があったんです。

えぬしん: 厳しい現実ですね。

えふしん: BASEやPAY.JPには、決済やECをシンプルにしたいという代表の鶴岡の理念があり、僕はそこが気に入っているんです。Twitterがシンプルなアーキテクチャを実現するにあたって、たくさんのことを捨てているのと同じく、BASEでもシンプルさを実現するために、いろんなものを捨てなければならない。それには決断力とビジョンが必要で、明確な判断力を持っている鶴岡に、モバツイではできなかったリベンジを重ねている部分は否めません。

えぬしん: えふしんさんのミッションは?

えふしん: BASEは無料でネットショップが作成できるサービスです。例えば、銀行で口座を開設するのは無料ですよね。その代わり取引量を増やすことで銀行は手数料収入を得ています。フリーミアムという仕組みです。BASEも同様で、BASEにお店をつくってくれるアカウントを増やし、そこで発生する流通総額の一部を売上にしています。このシンプルなビジネスモデルを実現するためには、セキュリティ、スケーラビリティ、シンプルで魅力的な機能をつくり続けるというのがプロダクト開発の仕事です。

えぬしん: なるほど。問いもシンプルなだけに、挑戦的なミッションですね。

えふしん: エンジニアである僕は、たくさんの人に使われるシンプルな機能のプロダクトに憧れるんです。でも残念ながら、複雑なアーキテクチャを考えるのは得意な反面、シンプルな機能を考えるのは苦手です。あらゆる可能性を考えるのがエンジニアの特性ですから。そこから引き算のデザインをするには、エンジニアの特性とは違うビジョンが必要です。その部分を、デザインファーストとしてデザイナーに委ねたり、常に鶴岡にアドバイスをもらうチーム構成を取りながら、僕はCTOとして、鶴岡の理念を技術面から実現しています。

えぬしん: 素敵なお話ですね。

えふしん: ありがとうございます。つい語ってしまいました(笑)。

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日本のFinTechの代表になりたい

えぬしん: BASEはこれからどんな方向に進んでいくんですか?海外展開は?

えふしん: 現状は国内でまだまだやるべきことがたくさんあると思っています。PAY.JPの話をすると、海外のFinTechは日本には入ってこられないだろうなと僕は考えているんです。なぜかというと、日本の金融に関する安全と信頼はダントツだから。海外の感覚は、現金は盗難のリスクがあるから、多少の手数料をとられてもクレジットカードの方が安心だよね、です。でも、日本は、街中にあるむじんくんのような機械を通じて、運転免許証1枚でお金が借りられるくらい、すでにFinTechが成立しているんですよね。これは世界から見れば異様です。

えぬしん: 確かに他の国では考えられないでしょうね。

えふしん: そんな日本でもっとFinTechが発展・浸透していくには、何か起爆剤が必要。それが何かはわかりません。ただ、Apple Payのような世界の進化を伴ったグローバルスタンダードに日本のFinTechも肩を並べていくのではないかなと予測しています。そのときに、我々のやっているPAY.JPも日本を代表する独自の購入、決済手段になっていればいいなというのが僕の考えです。Fintechは一社だけで実現するものではありません。既存の金融機関とも一緒にやっていくことが不可欠です。同じくBASEの視点でもフリーミアムECは、東南アジアの国々には合ってるんじゃないかなという感覚はありますしね。

えぬしん: あ、確かにその感覚はありますね。僕もやりたいくらいです。

えふしん: じゃあ、ぜひうちに(笑)。

えぬしん: 魅力的ですが、私には今、リブセンスとwajaがあるので(笑)。今日は貴重なお話をありがとうございました。

えふしん: こちらこそありがとうございました!

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