ID:69593さん

# Android Automotiveプラットフォーム/アプリケーション開発プロジェクト / 日産自動車 ## プロジェクト概要 自社自動車に搭載するカーナビのOS、アプリケーションを開発するプロジェクト。ハードウェア開発のサプライヤと協働し、最終製品の工場生産開始まで実現する。 開発部門だけでプロパー500人以上、サブコントラクタ1500人以上、予算規模数百億、2017年始動、2023年生産開始。 ## 課題 ### 内製プラットフォーム/アプリケーション開発チーム立ち上げ 入社と同時に、部長承認のもと、次世代カーナビゲーションシステムの内製開発チームの立ち上げメンバーとしてJoin。3年間で1人から15人のチームとなった。そのチームで成果を出すための組織目標定義、戦略策定、業務定義、業務分担、目標達成管理、開発設備調達、開発予算獲得と予実管理、開発関連契約管理、オフショアチーム立ち上げなどを実施。上位層とのコミュニケーションを密に取り、上位事業戦略との整合を実施、ポジションパワーを活用させてもらい実現した。 ### Renaultパートナーシップ 内製プラットフォーム/アプリケーション開発はRenaultの開発部門と連携して進める必要があった。サプライヤ選定、製品開発の責務分担、開発用クラウドインフラ・CIの構築方針、プラットフォーム用OSの選定方針、要件定義の共通・個社開発の仕分け、開発関連契約の管理など。Renault開発部門はスマホ・タブレット開発に特化したグループ企業であったため、開発アセットやナレッジを流用し、シナジーを最大化する戦略を策定。上位層の承認を元に各レイヤーにおける交渉と合意形成を進めた。 ### プラットフォーム用OS選定 チーム立ち上げの段階でプラットフォーム用OSは複数案存在していた。Renaultチームと協働してPoCを企画・推進、各案のベンチマークとアーキテクチャ分析を実施。各社上位層の承認取得のため、明確なデータをもとにOS選定の理由付けを実施した。Renault/Nissanの開発部門間では、開発アセットやナレッジ、メンバーの開発経験などを考慮した方針を事前に合意、協力して上位層、ビジネス部門との合意形成を推進した。 ### PoC/社内デモンストレーション企画・推進 プラットフォーム用OS選定には企画、デザイン、開発、品質保証、ISIT、法務、サプライヤ、開発ツールベンダー、Renault、様々なレイヤーと領域のステークホルダーが存在し、開発承認には長い時間を必要とした。承認を得るまでに様々なPoCとOS選定の理由付けとなりうるデモンストレーションを複数回企画し、実現可能性の証明をし続けた。 ### Googleパートナーシップ・開発関連契約管理 Renault/Nissanの開発部門間でのOS選定がAndroid Automotiveに確定したあと、Googleとの開発責務分担や開発関連契約の締結をする必要があった。Renault開発部門に支援をもらいながら、Nissanとして製品出荷までに締結しなければならない契約を明確化、また、各契約のレビューと関連部門への教育と情報共有を実施。各部門からも契約レビューのための協力を得て、署名を推進した。 ### Android Automotiveプラットフォーム/アプリケーション製品要件定義 Android Automotiveは新規プロジェクト用のOSであったが、既存製品のための要件定義があり、かつ、その要件は次世代カーナビでも引き継ぐ基本方針だった。OS変更に伴う機能制約と、GoogleからもAndroidデバイスとしての要求があったため、既存要件の見直しを実施する必要があった。実現不可能な要件はドロップするための交渉を企画・デザインなど関連するステークホルダーと実施、また、Nissanとして落とせない要件はGoogleへ役員を巻き込んだ機能要望を実施することで実現したものもあった。 ### サブコントラクタ・サプライヤマネジメント プラットフォーム/アプリケーションは内製開発だが、ハードウェアとミドルウェアの開発はサプライヤへ業務委託する。そのためハードとソフトの開発は並行して進める必要があった。また、内製開発ではあるがプロパーのみでは実現できない規模であったため、数百人規模のオフショアチームに開発を委託、成果物の管理を実施。開発責務分担の定義や推進体制の構築、また、徹底した情報の可視化により企業間のカベを破壊して取り組んだ。 ### Android Automotiveプラットフォーム/アプリケーション製品開発 上位レイヤの要件定義に基づき、RFP作成とサプライヤ選定を実施した。自身の担当分野はプロジェクト統括 + Google関連ドメインの開発推進。Google Map、Google Play Store、Google Assistant、Androidユーザー管理、Androidセキュリティ、映像コンテンツ再生、Setup Wizardなど。既存要件、Google要件との整合をもとに、可能な限りGoogleのアセットを活用できる要件を定義、RFPとした。 ## 成果 ### 内製プラットフォーム/アプリケーション開発体制構築 Android Automotive内製開発チームとして、継続的にソフトウェアリリースを実施できる体制を構築した。 ### Android Automotiveプラットフォーム/アプリケーション開発予算承認 Android Automotiveカーナビの開発予算を見積もり、獲得した（数百億規模）。 ### Google製品への機能追加実現 Google Map（EVルート検索、Autonomous Driving可能ルート検索、充電スポット検索、充電情報詳細、高速道路表示、車線ナビ、制限速度表示など）、Google Play Store OEMマーケット機能、Google Assistant OEMアクション機能改善、Android Dialer、Android Calendar、Androidデバイスマネージャ改善など。 ### Renaultとの開発分担/予算分割実現 プラットフォーム開発、アプリケーション開発、CI/CD、個社開発のスコープと責務分担を合意した。 ### Android開発関連契約 Androidデバイス開発契約、Android Early Accessライセンス契約、GAS(Google Mapなど)ライセンス契約、Android Auto契約、Widevine契約、NDA各種、サプライヤアセットのライセンス契約など。 ### Android Automotiveプラットフォーム/アプリケーション製品 マーケットリリース前にプロジェクトを離れることとなったが、すでにプロジェクトは開発後期、わたしの目指した製品のベータ版は試作自動車上にて動作している状態だった。