責務ではありませんでしたが、メンバーの成長と自立を促しマネージャーが不要な状態を作り、自分の代わりを作ることをゴールとしていました。
私がエンジニアリングマネージャーに就く前は、心理的安全性は担保されているものの従業員のコミットメントが低い所謂緩い職場であったため、心理的安全性を担保しつつも緊張感のある職場を作ろうと考えました。それまで自社で働くメリットはマイペースに働けることだと考えていたであろう従業員に対して、「会社や組織から従業員に提供できる価値は、スキルアップによってキャリアの自由度をあげてもらうことであり、スキルアップした従業員を会社に留めておくために企業側は努力をし続けるべきだ。」ということを明言し、成長に焦点を当て、緊張感のある職場にするよう日頃のコミュニケーションを心がけました。とはいえ、ハードなコミュニケーションを取るということではなく、振ったタスクについて、期限や期待するアウトプットのレベルやイメージを具体的に擦り合わせることによって、達成できたのかできていないのかが明確になるようにし、未達であることについてしっかりと言及し改善策を考えさせ実行させました。
上記を実行する上で注意したことは2点あります。1点目はプレッシャーが適切な範囲を超えないようにコントロールすることです。プレッシャーが適切な範囲を超えてしまっていることを迅速に把握するために、メンバー同士にランダムに1on1を実施し、チームメンバーの状態を把握しやすい構造を予め作りました。2点目はプロセスに関与しないようにすることです。タスクを振る際に期待するアウトプットについては具体的に言及しますが、やり方の部分については一切関与しないようにすることで、メンバー自身に創意工夫をしてもらい、成長を促しました。これはアウトプットが全く出てこなくても、自分が介入すればなんとかできるというプレイヤーとしての自分のスキルに対する自信が必要でした。
最も在職期間が長いエンジニアが1名退職してしまいましたが、従業員に自分自身の成長を感じてもらえれば今までより良い環境になったと思ってもらえるはずだと信じ、やり方を変えずに忍耐しました。現在ではほとんどすべての案件でメンバーが自律的に動いており、私が管理できるプロジェクトの上限数も増え、代表を含むボードメンバーの了承も得た上でミドルマネージャーを2人輩出し、後進の育成も進んでいます。