
「エンジニア採用がうまくいかない」ーー。
多くの企業が抱えるこの悩みに対し、高い成果を示した5社があります。
2026年2月、エンジニア採用の実践知を共有するイベント「転職ドラフト Business Summit」にて発表された「転職ドラフトスカウトAward2025」。
受賞したのは、組織規模もフェーズも異なる、フリー株式会社、株式会社ビズリーチ、MBKデジタル株式会社、株式会社TRUSTDOCK、株式会社フライルの5社。
彼らの取り組みを紐解くと、共通していたのは「人事に任せきりにしない」という覚悟と、「選考を入社後の活躍を作るマネジメントの第一歩」と捉える極めて合理的な戦略でした。
本記事では、5社の取り組みを「採用体制」と「候補者体験の設計」の2軸で徹底解剖します。
明日からの採用活動を一変させるヒントが、ここには凝縮されています。ぜひ参考にしてください。
| 企業名 | 採用体制のポイント | 候補者体験の設計 |
|---|---|---|
| フリー株式会社 | 100人で回す現場主導のスクラム採用 | 候補者が「したい」ことの解像度を高める |
| 株式会社ビズリーチ | 現場が実行し、人事が戦略を支える | 入社後の活躍から逆算した“マネジメント視点の選考” |
| MBKデジタル株式会社 | 「全社員採用」を支える明確な役割分担 | アトラクト度80%の厳守 |
| 株式会社TRUSTDOCK | カジュアル面談でCTOを登場させ、“ファン”を生み出す | 「創造的対話」で相互理解を深める |
| 株式会社フライル | AIを下書きに、CTOが魂を込める | ビジョン訴求とWillの見極め |
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2025年、転職ドラフトスカウト経由での指名数と採用数でNo.1となったフリー。候補者のピックアップからスカウト文作成、面談対応、年収提示までを現場が担う「スクラム採用」を行っています。広範な部署の多数の現場社員が毎月多くの候補者をスカウトし、優秀な人材をめぐって社内で競争が生まれることもあります。
この採用体制の背景には、創業期の経験があります。エージェントや求人媒体では母集団形成が難しく、結果として「自分たちで会いに行く」という思想が根付き、そこから「一緒に働く仲間は自分たちで見つける」というカルチャーが社内に浸透していきました。
一方、多くのメンバーが採用に関わるほど、統制は難しくなります。そこでフリーでは、人事がハブとなって仕組み化を推進。部署ごとに採用目標数を設定し、KPIを管理しています。開発部門の部長クラス以上の会議では進捗報告とフィードバックを行い、課題があればベストプラクティスの共有や資料・トークスクリプトの見直しなどで支援。さらに媒体ごとの成果も可視化し、成果の高い媒体により多くコミットする運用を標準化しています。
採用プロセスでは、見極めよりもフラットな対話を重視しています。面談では会社概要の説明だけでなく、候補者からの質問を引き出して回答する時間を設け、本人が知りたいことややりたいことの解像度を高めています。その結果、候補者が「自分のキャリアを一緒に検討してくれるパートナー」としてフリーを捉え、内定承諾につながるケースも少なくありません。
採用フローにも工夫があります。フリーでは最終面接以降をクロージングのメインフェーズと考え、直前に人事によるフォロー面談を実施。候補者の意向や不安の「本音」を引き出し、それを最終面接官に共有することで、アトラクト精度を高めています。さらに、オファー後には「アトラクト会」と呼ばれる会食も実施。仕事の場を離れた雰囲気の中で人柄やチームの空気感を伝えています。
ポイント
<採用体制>
「仲間は自分たちで探す」文化のもと、多くの現場社員がスカウトから年収提示まで担う大規模なスクラム採用を実践。人事がハブとなり、KPI管理やナレッジ共有を仕組み化することで、現場主導の圧倒的な採用力を維持している。
<候補者体験>
見極めよりも「対話」を重視し、キャリアの解像度を高めるパートナーとしての伴走を徹底。人事によるフォロー面談やアトラクト会など、緻密なクロージング設計によって入社意向を最大化させている。
2025年、転職ドラフトスカウト経由の採用数が利用企業の中央値の4倍以上となったビズリーチ。指名承諾率は約35%、指名承諾からの採用決定率も約10%と、高い水準を記録しています。
同社プロダクト組織では、スカウト文面の作成から選考体験の設計までを現場が主導。現場の部長やエンジニアリングマネージャーが採用活動に責任を持ち、アプローチ方法や面談の進め方を選考官にレクチャーするなど、現場がリクルーター業務を主体的に担っています。
一方、人事は採用市場の情報収集やデータ分析を担当。蓄積した採用活動の定量データを分析しつつ、辞退理由や入社者ヒアリングといった自社の生の定性データも重視しながら、採用プロセスを客観的に評価しています。
こうして、採用プロセスを実行する現場と、分析や戦術支援を担う人事という役割分担が確立されています。
採用決定者に入社理由をヒアリングすると、「選考体験の良さ」という声が多く挙がるというビズリーチ。その背景には、採用の目的を「自社に来てほしい」ではなく、「候補者の選択肢の解像度を上げること」に置いている点があります。そしてスカウトやカジュアル面談、選考、オファーといったプロセスを「点」ではなく「線」で捉え、一貫した体験の提供に努めています。
たとえば、カジュアル面談からオファー面談まで、現場の部長が継続的に関与するのも工夫の一つです。また各マネージャーは、部署の技術的な魅力やトレンド感を言語化し、組織戦略とセットで各タッチポイントで伝え続けています。
もう一つ、入社理由として多く挙がるのが「働くイメージが持ちやすい」点です。ビズリーチでは採用の成功を「人材を採用すること」ではなく、「入社後に現場で活躍してもらうこと」と定義。入社前後のギャップをなくすことを重視しています。
そのため、本来オンボーディングで扱う内容も、選考段階で実施。入社後に期待する役割は、等級・年収とセットでオファー面談時に明示し、希望に応じて技術面接のフィードバックも行います。採用プロセスそのものがオンボーディング、そしてマネジメントの始まりだと捉えているのです。
こうしたすり合わせを選考段階で終えているからこそ、候補者は入社後の活躍イメージを持ちやすくなっているといえます。
ポイント
<採用体制>
現場主導でスカウトからオファー面談までを一貫して実施。人事は市場分析や定量・定性データの分析を担い、戦術支援に回る役割分担を確立している。
<候補者体験>
「候補者の選択肢の解像度を上げること」を軸に、一貫した選考体験を提供。入社後の活躍から逆算した“マネジメント視点の選考”によって、入社前後のギャップを最小化し、「自ら活躍するイメージ」を醸成している。
会社設立直後からサービス利用を開始し、わずか約半年で5名の採用に至ったMBKデジタル。最大の特徴は「全社員採用」です。採用では現場と人事の責任が曖昧になりがちですが、同社では役割分担を明確に言語化し、実務レベルで徹底しています。
採用の主役は現場です。スカウトから年収提示までを現場が担い、人事は人材プール構築や採用フロー設計、プロセス効率化など仕組みづくりに専念します。この役割分担は全社員向けの説明会などを通じて繰り返し共有されてきました。
その結果、採用エージェントや求人媒体との打ち合わせにも現場が当然のように参加。人事はその場で候補者に伝えるべき「濃い情報」を整理し、採用活動全体の質を高める役割を担っています。
MBKデジタルでは、アトラクトを「徹底的に候補者に寄り添うこと」と定義しています。内定や承諾をゴールにするのではなく、候補者一人ひとりの意思決定に寄り添うことを重視。その姿勢は候補者からの評価にも表れており、「ここまで時間をかけて寄り添ってくれた企業はない」「転職の不安要素を一つひとつ解消してくれる」といった声が寄せられています。
それを支えるのが「アトラクト度80%」という基準です。面接官の感触をもとに、候補者の意思決定に十分寄り添えているかを定性的に判断し、80%に達していない場合は最終面接に進めません。そのため、選考回数が1回で終わることもあれば、6回以上行うケースもあります。さらに候補者の希望に応え、役職や部署を問わず面接に参加したり、会食(アトラクト食)を行ったりと、徹底してウェルカムな姿勢を示します。
こうしたプロセスを経て迎える最終面接は、いわば「確認の場」です。候補者の意向が高まった段階で、企業としてどのような活躍を期待しているのかを率直に伝えます。さらに候補者をお迎えする部署のマネージャーが記入するオファーレターでは、業務内容だけでなく候補者のお人柄やキャリアパス・思考性についての共感ポイント、一緒に描きたい未来やオファー理由、採用プロセスにご協力いただけたことへの感謝の意を言語化し、残り 20%のアトラクトを埋めていきます。
ポイント
<採用体制>
「全社員採用」を掲げ、各事業部メンバーで採用プロセスを実行、HRは事業部の採用戦略設計の支援や仕組みづくりを担う役割分担を徹底。これを明確に言語化し、全社員に共有している。
<候補者体験>
候補者一人ひとりの意思決定に寄り添うことを重視し、アトラクト度80%に達しない限り最終面接に進まない基準を設けている。
2025年、転職ドラフトスカウト経由で平均値の倍以上のエンジニアを採用し、指名承諾からの採用率も約10%を記録したTRUSTDOCK。同社では選考の早い段階から、現場のハイレイヤー層が登場し、自らアトラクトを担う体制を取っています。
特に特徴的なのが、ポジションに応じてカジュアル面談を主にCTOが担当している点です。候補者が早い段階で経営・事業・技術の中核を担う人物と接することで、“ファン”になりやすくなります。実際、入社者のインタビューでも「カジュアル面談や面接の担当者の印象がとても良かった」という声が多く挙がっています。
一方、人事は選考フローの前面には立たず、現場と候補者の間の調整役に徹します。特に重要なのが最終面接前の対応です。候補者に電話で「TRUSTDOCKへの温度感」や「入社の決め手になるもの」などをヒアリングし、その内容を整理して代表やCTOに共有。最終アトラクトの精度を高めています。
TRUSTDOCKが採用プロセスで重視しているのは、見極めではなく「創造的対話」を通じた関係性の構築です。「創造的対話」は「傾聴と相談」によって成り立つもの。候補者のキャリアや事業観を丁寧に聞き出し、課題や悩みに寄り添う姿勢を大切にしています。
そのための準備も欠かせません。CTOがカジュアル面談を担当する際は、レジュメを事前に読み込む時間を取り、どこを切り口に会話を深めるかをイメージしてから臨みます。
その際、面談の場で面接官が自身を良く見せようとはしないのがポイントです。カルチャーフィットやチームフィットを確かめるため、あくまで等身大で対話することを心がけています。その結果、多くの候補者が「面接という感じではなかった」と振り返るほど、フラットな対話の場が生まれているのです。
このような対話を重視する姿勢は、企業文化として全社に浸透しているものです。日々の業務でも互いの考えをすり合わせることを重視。人事評価でも対話を重視するキャリブレーション制度を導入しており、「考えを聞き出し、寄り添う」コミュニケーションが自然に根付いています。
ポイント
<採用体制>
早い段階から現場のハイレイヤー層がカジュアル面談の担当として登場。ポジションによってはCTOが前面に立つ。人事は裏方として、候補者情報の整理や最終アトラクト支援を担っている。
<候補者体験>
「創造的対話」を軸に、見極めではなく傾聴と相談を重視。丁寧な事前準備と等身大の対話によって、「面接という感じがしなかった」と言われるフラットな体験を実現している。
50人以下の小規模組織ながら、2025年、転職ドラフトスカウト経由の採用数が平均値を上回ったフライル。最大の特徴は、CTO自らが採用に深くコミットする体制にあります。
CTOは毎月約50件のスカウトを安定的に送付。スカウト文のドラフトはAIで生成して効率化を図りつつ、最終的にはCTO自身がすべて確認・修正し、表現のニュアンスや技術的な正確性を担保しています。こうして、量とメッセージ品質を両立させているのです。さらに、ハイレイヤー候補者のカジュアル面談にはCTO自らが対応し、二次面接にも出席。バリューや社風とのフィットまで含めて見極めています。
こうした体制を実現できる背景には、CTO自身が前職で1年間、採用人事を経験していたことがあります。採用の基本や媒体ごとの特性を理解しているからこそ、採用活動全体に深く関与できているのです。
一方、ハイレイヤー以外のカジュアル面談や一次面接など、CTOが同席しない場には現場エンジニアが積極的に参加しています。CTOの面接に同席しながら評価基準や目線をすり合わせているため、選考品質も標準化されています。現場エンジニアは、候補者の関心や不安を拾い上げ、適切な情報を提供する「エージェント役」も担っています。
転職ドラフトでは、「メリット軸」「ヘルプ軸」「ビジョン軸」という3つのアトラクト軸を提唱しています。その中でもフライルが重視しているのが、自社プロダクトの社会的意義や目指す方向性に共感してもらう「ビジョン軸」です。
フライルが展開するのは、AIを中核に据えたプロダクト。候補者にデモンストレーションを見せると、「このプロダクトは良い」という反応が多く、入社理由としても「プロダクトの可能性への共感」がよく挙がります。
ただし、フライルの特徴は、プロダクトの魅力を伝えるだけで終わらない点にあります。それが候補者自身の「Will」と本当に合っているのかを深く見極めているのです。「会社が目指す方向と候補者の思いがずれていれば不幸になる」という考えのもと、面談ではまず本人が何をやりたいのかをじっくり聞き出すことを重視。候補者ごとのモチベーションに寄り添い、オーダーメイドで情報を提供しています。
さらに、「個人の能力を解放する」という発想から、「どんな経験を活かして、入社後にどう活躍してほしいのか」まで具体的に言語化。面接後も懇親会やオファーレターを通じて納得感を高めています。
ポイント
<採用体制>
CTOが採用にフルコミットし、AIを活用しながらも自ら内容を確認・修正することで、月50件の高品質なスカウトを実現。現場エンジニアも“エージェント役”として選考に関わり、候補者の不安を拾い上げている。
<候補者体験>
ビジョン軸のアトラクトを重視し、プロダクトの価値を訴求。同時に、それが候補者のやりたいことと本当に合っているかを丁寧に見極め、納得感のある意思決定につなげている。
5社の取り組みはそれぞれ異なりますが、インタビューを通じていくつかの共通点も見えてきました。特に印象的だったのは、現場の関与の深さ、人事の役割の置き方、そして候補者との向き合い方の3点です。
5社に共通していたのは、採用を人事だけの仕事にしていないことです。スカウト、面談、オファーなど多くの場面で、現場が主体的に関与していました。
もちろん関わり方には違いがあります。現場がスカウトから年収提示まで担う企業もあれば、ハイレイヤー層が面談の初期段階から登場する企業もあります。ただ共通していたのは、「一緒に働く現場が採用の前面に立つ」構造が組織に浸透していることでした。
これにより候補者は、採用担当者を通して会社を知るのではなく、実際に働く現場メンバーの言葉や態度を通じて、入社後の働くイメージを具体的に持ちやすくなります。現場が当事者として関わること自体が、候補者の意思決定を後押しする要素になっていたのです。
現場主導の採用を成功させる鍵は、現場の「熱量」を空回りさせないための後方支援にあります。5社に共通していたのは、現場がスカウトや面談に集中できるよう、情報の整理や仕組み化を担う「ハブ」が機能している点でした。
ある企業では専任の人事チームがデータ分析や進捗管理を徹底し、また別の企業ではCTOやマネージャー層がその役割を兼任しながら、現場メンバーへのレクチャーや候補者情報の解像度向上を担っています。
共通しているのは、「現場に丸投げ」するのではなく、候補者の本音を引き出したり、各ステップの評価を言語化したりして、組織全体で情報を繋いでいること。 この「情報のハブ」があるからこそ、現場主導という難しい運用が高い精度で維持されているのです。
もう一つ印象的だったのは、多くの企業が採用を「見極めの場」ではなく、候補者との対話を通じて相互理解を深める場として捉えていたことです。
彼らが重視していたのは、「入社してもらうこと」そのものではありません。まず候補者本人が何をやりたいのか、どんな環境を求めているのかを明らかにし、そのうえで自社が本当に合うのかを一緒に考える。その姿勢が結果として候補者の信頼を生み、入社意思を固めることにつながっていました。
言い換えれば、選考の場で行われていたのは、企業による一方的な評価ではなく、候補者のキャリアの解像度を上げるための対話です。この丁寧な向き合い方こそが、今回取り上げた5社の採用成果を支える共通項の一つだといえるでしょう。
現場が当事者として関わり、人事が専門性を発揮しながら全体を支え、候補者とは対話を通じて相互理解を深めていく。その積み重ねが、結果として高い採用成果につながっていることが、今回の取材から見えてきました。
改めて、受賞企業の皆さまの取り組みに敬意を表するとともに、今後のさらなるご活躍を心よりお祈り申し上げます。
転職ドラフトスカウトは、こうした企業一社一社の採用への「こだわり」や想いを、候補者に正しく届ける場でありたいと考えています。エンジニア採用に課題を感じている企業の皆さまにとっても、本記事が新しい取り組みのヒントになれば幸いです。
転職ドラフトでは、資料のご提供や採用に関するご相談も受け付けています。ご興味のある方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。